総理大臣  小泉純一郎 様

外務大臣  川口 順子 様

防衛庁長官 石破 茂  様

                        

イラクからの自衛隊即時撤退を求める


イラクで日本人民間人3人を誘拐した、「サラヤ・ムジャヒディン」と名乗る武装勢力は、3日間のうちに自衛隊をイラクから撤退させなければこの人々を殺すと言明しています。小泉首相は、自衛隊撤退を拒否する姿勢を早々と打ち出し、悲痛な思いで面会を求める被害者家族との面会さえ拒絶したということです。武装グループの行為は断じて許されない非人道的な行為であることは論を待ちません。しかし私たちは、小泉首相が米国の意思への配慮を優先させ、日本国に庇護義務のある民間人とその家族をないがしろにされることに対して、非常な痛みをもって抗議せずにいられません。なぜ、不安と苦しみのどん底にある家族の声を直接聞こうとされないのですか。

3人の方々は、個人レベルで、NGOレベルで、人道的なボランティアとして支援活動を行い、イラクの人々の信頼を培ってきた人たちであり、イラクの人々の現実を伝えてきたフリージャーナリストです。本来攻撃されるはずのないこの方々の安全を脅かしたのは、「人道支援」の名のもと、米国に追従する形で断行された自衛隊派遣にほかなりません。人道支援のためのNGO活動が、自衛隊派遣によって、危険なものとされてしまったと、私たちは実感しています。今は面子よりも人命を守ることを最優先にすべきです。彼らを救う責任は政府にあります。

米国の助言に従って、強行外交に走ることは、日本のとるべき道ではありません。日本は本来、平和的な手段による国交、国際協調の旗手となる大事な役割を持っているはずです。 万が一、米国と共同で、イラクにおいて武力による人質救出作戦を行い、その結果、イラクの人々を殺傷してしまった場合、事態はさらに泥沼化するでしょう。たとえ米国が、人命を第一に考える米国民の世論によって撤退を余儀なくされたとしても、日本は自衛隊を撤退させる機を失い、多くの犠牲者を出すに至る危険もあるのではないかとの危惧さえ覚えます。

イラクの人々が求めているのは、米軍による強行支配ではなかったはずです。彼らは今、暴力の連鎖の中で、苦しみ続け、疲れきっています。日本には、米国や国連の肩代わりをして、米国が破壊してしまったイラクの状況を、軍事的社会的に復興させることはできません。信頼と経済の回復こそが、国家の復興の土台となるのではないでしょうか。そのためにもっともよい国際協力の方法が、自衛隊派遣のほかにあるはずです。

私たちキリスト者は、人々の罪のために犠牲となったイエス・キリストの受難と復活を覚える大切な時期を迎えています。もっとも小さな、力の弱い人々を救うために、暴力を排し、十字架につけられたキリストの受難が私たちに伝えているメッセージは、どんな命をも軽んじてはならない、ひとりの命の重みを大事にするということです。国家の方針のために人を犠牲にしてはなりません。 

時間がありません。まず自衛隊を撤退させてください。高遠菜穂子さん、今井紀明さん、郡山総一郎さんの命を、日本政府の勇断によって、救ってください。  

2004年4月10日      

                       日本キリスト教協議会(NCC)

                         平和・核問題委員会委員長 小笠原公子

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