有事法制に反対する声明

 現在、国会では有事法制関連三法案が上程されました。この法案によると、日本への軍事攻撃が予測されると総理大臣が判断しただけでも、自衛隊や米軍の軍事行動最優先のために、市民は地域や職場ぐるみで種々の協力を強制され、従わない場合は懲役などを含む罰則が科されることになります。

 政府は、新ガイドライン関連法制定以来、米軍と協力して戦争をする体制を着々と整えてきましたが、昨秋にはテロ対策の名目の下に初の自衛隊海外派兵を行い、ついに歴代内閣が躊躇してきた有事法制に着手しました。総理大臣の靖国神社参拝、学校等での君が代・日の丸強制とも合わせ、軍事・精神両面で、戦争への道を再び辿っていることは明らかです。すでに法整備も無いままに、自衛隊協力を求められて、民間人が危険地帯であるインド洋に派遣されようとしています。いま、私たちは、否応なしに戦争協力を強制されるか、それを食い止められるか、最後の分かれ道に立っています。

 いま、唯一の超大国となった米国は、テロ撲滅を理由に、正義を掲げて、朝鮮民主主義人民共和国など、自国にとって好ましくない国を一挙に攻撃しようとしています。朝鮮半島分断の責任を負う日本が、米国に協力して朝鮮民主主義人民共和国を敵国視することは、南北平和統一を妨げ、ふたたび朝鮮半島の人々を苦しみに追いやり、東北アジアの平和を遠ざけることになります。

 日本のキリスト教会とキリスト教団体は、かつてのキリスト教界が戦争に加担したことを心から悔い、神と近隣諸国の人々にその罪を懺悔し、その歴史を教訓として受け止め、ふたたび同じ罪を犯さないと決意して歩んできました。この法案を通すことは、罪責告白を否定することです。

 神は、一人ひとりの人間をかけがえのない存在として愛し、そのためにご自身の御子の命を与えられました。神の求め給う正義は、貧しい人や弱者が大事にされることです。強者が弱者を思いのままに殺戮することは、この神の愛を否定し、「殺すな」という命令に背くことです。私たちは、これ以上、戦争により人が殺されることを見過ごしに出来ませんし、私たち自身が戦争に協力することも出来ません。

 私たちは、政府が戦争放棄の立場を貫き、国際社会で紛争解決など和解と平和の実現に努めるよう願っています。私たちは戦争の被害者になることも加害者になることも拒否します。後戻りの出来ない分かれ道に立ち、平和の主が歴史を支配し給うことを信じ、有事法制に明確に「否」を表明し、法制化撤廃に向けて行動していきたいと思います。

                                       2002年5月7日
                                       日本キリスト教協議会

 議 長  鈴木伶子
                                        総幹事  大津健一

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