シリーズ 自由をつくるVol.4 

自衛隊ではなく、9条を世界へ

高田 健著

A5判 180ページ 並製
定価:1,800円+税 
ISBN978-4-8166-0804-9 C0031
2008年10月刊行


この国は9条を持ったのもかかわらず、すでに「派兵国家」である。このまま行けば米英と並ぶ「派兵大国」になる日もそう遠くはない。
いま、日本にとって必要なことは「9条世界会議」が示したように、自衛隊の海外派兵ではなく、日本国憲法九条の実践であり、その世界化であろう。


【著者プロフィール】

高田 健(タカダ ケン)

1944年 福島県生まれ
1965年 早稲田大学文学部中退
1986年 国際経済研究所設立、同代表
1993年 「STOP!改憲・市民ネットワーク」結成
1997年 憲法調査会設置のための国会法改定に反対する運動開始
1999年 「許すな!憲法改悪・市民連絡会」結成 
2000年 「憲法調査会市民監視センター(現・けんぽう市民フォーラム)」設立
2001年 超党派の「5・3憲法集会」を事務局の一員として準備
2002年 イラク反戦運動「WORLD PEACE NOW」の結成を提唱
2004年 「九条の会」結成に際して事務局員
2007年 衆議院憲法調査特別委員会中央公聴会の公述人で論述
2008年 「9条世界会議」を実行委員会事務局員として準備
著書
「改憲・護憲 何が問題か〜徹底検証・憲法調査会」(技術と人間 2002年12月)
「護憲は改憲に勝つ〜憲法改悪国民投票にいかに立ち向かうか」(同 2004年10月)
「9条が、この国を守ってきた。」(梨の木舎 2006年9月)など。

【目次 】

1章 9条の国へようこそ――「9条世界会議」

2章 安倍、福田の政権投げ出しの事情
    復活をはかる改憲派――HANAの会、国家基本問題研究所
    改憲議員同盟
    若手議員の会

3章 憲法おじさん――蓑輪喜作さんのこと

4章 なぜ、いま自衛隊海外派兵恒久法か?
    揺らぐ米国の国際的単独覇権
    アーミテージ・レポート

5章 小沢一郎の九条論
    次期衆院選挙でありうる与野党議席の逆転と小沢一郎
    小沢民主党に私たちはいかに対処すべきか

終章 これから――

【編者あとがきより】

この国の政治は重大な危機に直面している。二〇〇七年の安倍内閣の崩壊で、あとを継いだ福田康夫首相が二〇〇八年九月一日、わずか一年足らずで突然辞任を表明し、安倍晋三元首相と同様に政権を投げ出した。
 湾岸戦争や一九九三、四年の朝鮮半島の核危機に端を発した新しい改憲の動き(九〇年代改憲運動)は、「任期中の明文改憲」を公言していた安倍内閣の破綻でひとまず頓挫した。福田康夫首相はその任期中において明文改憲を公然と掲げることは出来なかった。これは、この間、全国各地でさまざまに努力された九条改憲反対の民衆の運動と、それを背景にした世論の大きな成果である。
 だが「九条明文改憲」の声は小さくなったが、「解釈改憲」の動きはいっそう強まっている。福田内閣の後を継いで成立する新内閣が改憲に対してどのような態度をとるか、まだ不透明ではあるが、いずれにしても新内閣は選挙管理内閣的な性格を帯びざるをえない。麻生太郎幹事長に続いて幾人もの人々が自民党総裁選に手を挙げたが、これらのいずれもがその政策主張で憲法問題に言及していない。麻生太郎候補も連立与党の公明党の意向を配慮し、自らの改憲の主張をあからさまに出来ないでいる。麻生太郎候補、あるいは他の誰かが自民党総裁になるにしても、間もなく行われる総選挙を経て、この国の政治は大きく変動するのは不可避である。おそかれ、早かれ、そのなかで憲法問題の重要性はいっそう増すことになるであろう。
 安倍政権の崩壊以来、「九条明文改憲」の声は小さくなったが、「解釈改憲」の動きは止まらず、「明文改憲」の動きも潜行している。
 この国は九条を持つにもかかわらず、すでに「派兵国家」である。まだその「派兵」は限定付きで小規模ではあるが、軍事予算が世界有数の日本という国家がこのままで行けば米英と並ぶ「派兵大国」になる日もそう遠くはない。PKO法から有事法制、そしてアフガンとイラクへの特別措置法を経て、いま、自公与党政権は米国の要求に沿い、いつでも、どこへでも海外派兵して武力行使ができる「自衛隊海外派兵恒久法」の制定をねらっている。彼らは今年(二〇〇八年)中は無理でも、来年には何とかしたいと思っている。イラクでの自衛隊の活動を違憲と断じた名古屋高裁判決ののちも、イラクで米軍に加担しつづける空自の動きに加え、インド洋北部で多国籍軍に給油をつづける海自、さらに政府関係者からは米国の要求に従い陸自と空自もアフガンに出したいとの声も聞こえる。これに関連して、二〇〇八年一月に福田内閣が憲法五九条の規程を強引に適用してインド洋派兵給油新法を成立させたときに対案として提出された民主党案の中に、ISAF(国際治安部隊)派兵論に通ずる論点があることが危惧される。自衛隊が海外で「殺し、殺される」時が来てはならない。究極の解釈改憲の立法である自衛隊海外派兵恒久法を暴露し、立法化を押しとどめる運動は急務である。
 今回の総選挙を含めて二一世紀初頭のこの国の政治動向を考える上で、福田政権の発足直後、突然降ってわいた「自・民大連立騒動」の分析は欠かすことができない問題である。とりわけ民主党がこの国の今後の政局の上でも、また憲法問題を考える上でも、重要な位置にあることは間違いないだけに、この問題と民主党党首である小沢一郎代表の見解についての分析は避けられない。一部では次期総選挙後の「政界再編」が現実の問題としてささやかれている。民主党問題は憲法運動に取り組むさまざまな人々のなかでも、評価の分かれるやっかいな問題である。しかし、このやっかいな問題に向き合い、乗り越えることなしに、九条改憲を阻止し、九条を生かしていく巨大な流れを作り出すことはできないのではないだろうか。本書であえて踏み込んだ「小沢一郎の九条」論には異論もあろうかと思う。自衛隊海外派兵恒久法の問題と「小沢一郎の九条論」についてぜひ生産的な議論を起こしたいと願っている。
 〇八年五月、千葉県幕張メッセをはじめ全国四カ所で開かれた「9条世界会議」が各界のさまざまな人々の協力で大きな成功を収めた。八月末にはアフガニスタンで現地民衆の支援にたずさわっていたペシャワール会の伊藤和也さんが殺害されるという事件が起きた。ペシャワール会の中村哲医師がいうように、この事件は日本政府のアフガン戦争協力強化の動きと無関係ではない。いま、日本にとって必要なことは「9条世界会議」が示したように、自衛隊の海外派兵ではなく、日本国憲法九条の実践であり、その世界化であろう。
高田 健