天 の 火


高倉 やえ著


  四六判 195ページ 上製
  定価:1,400円+税 
  ISBN 978-4-8166-1107-0 C0096
  2011年10月

●同時通訳者が見た原発産業の内側

六本木の高層ビルで、高塔久子は東日本大震災に遭遇する。
そして原発事故。米、英、仏、日の政府間交渉や企業提携交渉に立ち会ってきた久子は問う――何が原子力産業を肥大させたのか?
【著者プロフィール】


高倉 やえ(たかくら やえ)


 著者は1937年生まれ、東京女子大学英米文学部卒。結婚後、2人の子供を育て、44歳から3年間、通訳学校、ISSに学んで会議通訳(同時通訳)になる。湾岸戦争時はNHKの専属同時通訳を務める。 さまざまな政府間交渉、企業提携交渉などの現場に関わる。アイエスエスインスティチュート講師。
 2004年より朝日カルチャーセンターの小説教室で根本昌男氏の指導を受ける。
 『天の火』は、東日本大震災に伴う福島原発の事故を、長年関わった原子力産業に重ねて、一人の日本人女性としての感概を世界の中に見詰めた作品。
【 ストーリー 】

 英国の核燃料製造会社に務める久子は、六本木の高層ビルで東日本大震災を経験する。英国大使館では福島の原発の影響について会議が開かれ、出席した久子は偶然、以前の同僚ジョージと会い、ともに働いた日本の原子力産業内部の様子を思い返す。技術過信の思い上がり、原発に対する国民の認識の甘さがあったことを苦い思いで認識する。また原子の火を取り出したロスアラモスの研究所を思い出し、人類の傲慢さに思い至り、日本の進むべき道を考えるが、ジョージとは原子の火に対する認識に差があることも感じる。
 久子とジョ−ジがともに働いたころの社長、ウイルは、核燃料製造過程で起こった不肖事件で退職していたが、福島原発事故を調べるEU調査団の一員として来日する。
久子はウイルと会い、その冷徹な現実主義を見て、かつてウイルに感じていたなつかしさが失われるのを感じる。
 久子にはアメリカに去って帰らない娘がいる。また夫の母は広島の原爆を経験しているが加齢で記憶力が弱り、福島の被害に対して共感する力もなくしているのに久子は深い哀しみを覚える。遅い桜の開花が近づいたとき、突然、娘が帰ってくる知らせが来る。
【目次】

天の火 目次
揺れ/津波 娘たち 疑い ははの記憶 相手国 天の火 さくら