セーフコミュニティに暮らしたい

――安心なまちづくりを目指す十和田市民ボランティアのこころみ

山田典子著 セーフコミュニティとわだを実現させる会会員


A5判並製 126頁
定価:本体1,500円+税
978-4-8166-1004-2
2010年3月刊

●市民と行政は、安全安心のまちづくり のためにどう関わったか? 提案から認証までの実践記録。 
●十和田市は、2009年セーフコミュニティとして、WHO(世界保健機)から認証された。
●「セーフコミュニティって聞いたとき、なんにも分からなかったのさ」と、Oさん。国内に全くモデルがなく、一つ一つ議論しながら進めていった。人と人との生きたつながりを活かし、「セーフコミュニティ」という果実が実った
【プロフィール】

山田 典子(ヤマダ ノリコ)

函館生まれ、青森育ち。青森県立保健大学教員。
神奈川県・横浜で看護師、保健師、養護教諭の資格取得。横浜市で臨床と保健所勤務を10数年経験後、横浜市立大学の助手を経て現職。青森県で第1号の性暴力被害者支援専門看護職。

上記内容は本書刊行時のものです。
【目次】

T セーフコミュニティとは何か
U 安全なまちかどうか調べてみよう
V ワーキンググループをつくって活動しよう
W 十和田市の政策・施策・実践!
X セーフコミュニティ活動に取り組んで変わったこと
おわりに
資料・文献
【まえがき】


 はじめに
 事故は避けることができる。
本当にそうでしょうか?大概の場合、事故は予期せぬ事態で突然降りかかり、私たちの生活を脅かします。事故の結果、さまざまな外傷や障害を負うこともあります。外傷には、交通事故の他に、火事、溺死、転倒・転落、暴力や虐待によるもの、薬物・毒物によるもの、自殺などがあげられます。これらにおける身体的外傷や精神的外傷を予防するのが、セーフティプロモーションです。そして、このセーフティプロモーションを基盤にすえ、定められた基準を満たす取り組みを行っているコミュニティのことをセーフコミュニティと呼んでいます。
セーフコミュニティの話を他の市町村ですると、「私たちのまちでも、子ども見守り隊や青色防犯パトカーが走り、たくさんの防犯活動をしていますから、これ以上何をしろというのでしょう?」とか、「高齢者の介護予防として、以前から取り組んでいますよ。何をいまさら。」という声を耳にします。確かに、そのように感じられる方もいらっしゃると思います。現場では、どんどん事業が増えていくのに、働く人は減らされ、以前に比べて働く人の笑顔が少なくなっているように感じます。
 現在、既存の取り組みを上手に活用し、安全安心のまちづくりを進める活動が世界各地域に広がっています。
この取り組みの発端は、1970年代のスウェーデンのある地方都市のチャレンジに源泉があります。
成り立ちについてごく簡単に紹介しておきます。考え方の根本にあるのは、1989年にストックホルム(スウェーデン)で開催された第1回世界事故・外傷予
防学会で採択されたストックホルムマニフェストとよばれる宣言です。ここで、「すべての人々に安全・安心を(Safety for all)」という理念が謳われました。これは、社会経済的格差、思想信条、人種等によらず、すべての人々が一定レベル以上の安全・安心を享受することを、基本的な人権と位置付けたものでした。そして、このマニフェストを実現する具体的な取り組みがセーフコミュニティなのです。
同年、カロリンスカ医科大学公衆保健科学部(ストックホルム)に、一定の基準を満たしたコミュニティをセーフコミュニティとして認証を行う国際機関、WHOコミュニティセーフティプロモーション協働センターが設置されました。以後、ここを拠点として、セーフコミュニティ活動が展開されています。
2010年1月現在、世界160のコミュニティが認証を受けていて、そのうち日本では京都府亀岡市と十和田市が認証を受けています。加えて、厚木市や池田小学校等が、セーフコミュニティおよびセーフスクールに取り組んでおられます。
 セーフティプロモーションの概念については、かなり前に東京大学の衛藤隆先生が日本へご紹介され、2007年には日本セーフティプロモーション学会を設立されました。また、セーフティプロモーションの理念や、その仕組みをまちづくりに活かしたスウェーデンのセーフコミュニティの実際について、青森県上十三保健所長の反町吉秀先生が多数ご紹介されています。さらに、政策的観点からスウェーデン、カナダ、およびアジアの実践について立命館大学政策科学フェロー白石陽子先生が示唆に富む多くの論文を発表されています。
今回ご紹介するセーフコミュニティ十和田市は、セーフティプロモーションの取り組みを従来の事業に加味して、人と人のつながりや地域の絆を固く確かなものにしていかれるよう、まちづくりをしています。行政の保健福祉部門が音頭をとり、住民参加型から住民参画型、そして、住民主導型へ発展しつつあります。 
十和田市の取り組みの特徴は、ヘルスプロモーション*とセーフティプロモーションを車の両輪のように起動させて、日本で2番目にセーフコミュニティ認証に至った点です。
セーフティプロモーションの利点や困難点について、本研究チームが体験したことが、皆さんの実践に少しでもお役に立てることを願っています。
外傷予防は未来への投資です。「すぐできる事故外傷予防」「比較的短期間で効果を示す外傷プログラムの実施」「地域力の発掘」にむけて共に取り組みましょう!
*1986年「すべての人に健康を」実現することを目指し、WHOオタワ憲章で提唱された。人々が自らの健康をさらにうまくコントロールし、改善していけるようになるプロセスのこと。
          
研究チーム代表 青森県立保健大学
セーフコミュニティとわだを実現させる会
山 田 典 子