深山あき歌 U、V

07年9月刊行

【最新刊】
深山あき歌集U
風韻にまぎれず 〈哀号〉の叫び

深山あき著 鈴木裕子編


四六判 188ページ 上製
定価:2,000円+税 ISBN978-4-8166-0704-2 C0092



戦場で「獣」と化した日本軍将兵の性奴隷とされ、心身の尊厳を踏みにじられた「慰安婦」の人々の深い〈慟哭と恨〉」(あとがき)に心をよせてうたう。

07年9月刊行

【最新刊】
深山あき歌集V 
風の音楽 はばたけ九条の心
深山あき著 鈴木裕子編


四六判 192ページ 上製
定価:2,000円+税 ISBN978-4-8166-0705-9 C0092

「軍備で国を守るなど、考えが固陋に過ぎないのではないでしょうか。兵器が巨大化し、地球が滅びるまで人類は戦争を続けるのでしょうか。」(あとがきより)九条への思いをうたう。
【著者あとがき】より

1987年に歌集『風は炎えつつ』を上梓しましてから、二十年が経ちました。ただいまは年齢も八十歳を超え、心身の衰え、一日何もできないまま日が過ぎてゆきます。苦労して歌を纏めても残生はわずか、死後はどうせ塵芥と捨てられてしまうものと、書き散らした歌の整理もできずに居りました。
 ところが思いもかけず女性史研究家・鈴木裕子先生から「歌集にしませんか」とお勧めをうけ、前著『風は炎えつつ』に続き、二集、三集と一時に上梓することになりました。

   海ゆかば水(み)漬(づ)く屍(かばね) 山ゆかば草むす屍(かばね)
   大(おお)君(きみ)の辺(へ)にこそ死なめ かえりみはせじ

【プロフィール】

深山あき(ミヤマアキ)

1924年神戸市生まれ。
著書「歌集 風は炎えつつ」(私家版 1987年)

鈴木裕子(スズキユウコ)

1949年東京生まれ。女性史研究家。主な著書に「フェミニズムと戦争」(マルジュ社,1986年)「従軍慰安婦・内鮮結婚」(未来社,1992年)「フェミニズムと朝鮮」(明石書店,1994年)「戦争責任とジェンダー」(未来社,1997年)「フェミニズムと・天皇制・歴史認識」(インパクト出版会,2006年)「ジェンダーの視点からみる日韓近現代史」(編集責任 梨の木舎,2005年)など。

【編者あとがき】より

 ようやく深山あきさんの歌集『風韻にまぎれず』『風の音楽』が上梓されるにいたりました。旧著『歌集風は炎えつつ』とあわせて「風」三部作が揃ったことになります。 
 深山さんは「私は、皿洗いの家人」「私の短歌は啖呵をきる」と冗談めかしてよく言われます。しかし、わたくしには深山さんの短歌とくに「社会詠」は、過去の体験に検証に検証を重ねて、警世のメッセージを強く発してやまぬものに感じられます。
 その社会詠の特徴は、戦争と平和にこだわり、日本国憲法の基本原理である、平和・人権・民主主義を根底にして政治・社会批判を詠んでいるところに真骨頂があると思います。
 深山さんが「ああ『慰安婦』」と詠うとき、踏み躙られた人間の尊厳、強いられ続ける苦難苦痛の生活を負わされた女性たちの姿がわたくしたちの胸に深く刻みつけられます。が、そのかなたに何らの責めを負うことなく逝った天皇の人間としての不誠実、無責任の姿が字間に強く投影されているとわたくしには思われます。
 歌人の直感は、わたくしなど歴史研究者の万言を費やしても表現しきれぬ「時代」の病巣や本質を鋭く抉ります。この二冊の歌集を手に取られる読者の方々も同様の印象を持たれるにちがいないでしょう。「社会詠」にとどまらず「日常詠」「生活詠」にしても、予見性に目を瞠らずにはおられません。
 こう記すと、肩をいからせた「闘士」ふうの女性の印象を読者に与えそうですが、実際の深山さんは、諧謔、ユーモアに富み、いくぶんの韜晦を含んだ、含羞で、チャーミング、人あたりの柔らかな方です。いくさなき地球、飢餓・貧困・苦痛に苦しむ人びとがこの世から一人もいなくなることを心から願う「平和」のひとです。
 
 わたくしは、縁あって、数年前から深山さんの未刊行の歌稿を読む機会を得ました。昨年三月、是非一冊に纏めたいとの思いを深め、それを深山さんにお伝えしたところ、短歌にはまったく素養のないわたくしに寛容にも編集の任をまかせられました。わたくしは、今ごろになって自らの無謀さを痛感させられていますが、深山さんの半世紀以上にわたる歌業に傷がつかぬことを今は祈りつつ、現在と未来を担う若い方々に一冊でも多く、本歌集が手に取られ、読まれることを心から願っています。 

 なお個人的なことですが、奇しくも深山さんが敬愛してやまない尹貞玉先生のご著書『平和を希求して』(白澤社、二〇〇三年刊行)の編集に続き、この度の深山さんの歌集の編集に携われたことがわたくしには僥倖に思われてなりません。「慰安婦」被害者に身を重ね、「慰安婦」問題解決運動に注がれてきた尹貞玉先生と、深山さんが被害者の女性たちに寄せる重く深い痛み、尹貞玉先生との運命的な出会い、それらについて感慨を覚えずにはいられません。
 

 本歌集は、短歌誌に投稿された約三千首の歌及び未投稿の歌(それらの歌のなかには「朝日歌壇」や『神戸新聞』文芸欄に掲載されたものもあります)から取捨選択し、原則として投稿順に並べ、小テーマをつけました(例外的に主題で纏めたものもあります)。著者である深山さんから折々にアドバイス・ご示教を頂戴したのはいうまでもありません。
 日本と世界が戦争と破壊への道を歩み、滅びへの途に向かっているいま、本歌集が多くの方に読まれることを切に願ってやまない次第です。
鈴木裕子
   2007年7月4日 盧溝橋事件勃発70年を前に。

【書評】