ジェンダーの視点からみる
日韓近現代史
日韓「女性」共同歴史教材編纂委員会
日本側◇鈴木裕子・大越愛子・井桁碧・志水紀代子・中原道子
韓国側◇尹貞玉・鄭鎮星・朴貞愛・康宣美・申栄淑・金恵慶・
李恵淑・金秀映・安真 
A5判 356頁 
定価2800円+税
ISBN 4-8166-0503-7

日韓の研究者と市民運動家が、はじめてともにつくるジェンダーの視点による近現代史
日韓同時刊行!本書の編纂委員会は、2001年の秋以来、日本と韓国で交互に公開シンポジウムと会議をひらき、議論を重ねてきました。編集は、「国家」をこえ、ジェンダー・マイノリティーの視点に立つものです。これまでの日本と韓国のかかわりを見直し、市民の新たな歴史をつくっていくことをめざします。歴史を自己の問題としてとらえた女性たちの意欲的な試みです。

目次
1 日本帝国主義の拡張と「韓国併合」
2 3・1運動と社会運動の展開
3 日本帝国主義期民衆生活の変化 
4 戦時動員と日本軍「慰安婦」
5 敗戦と朝鮮半島分断、朝鮮戦争
6 ウーマン・リヴと社会運動
7 女性運動と女性国際戦犯法廷
「本書は日韓の女性たちが初めて、ともにつくった近現代史書です。日本と韓国は海を挟んでむきあい、長い交流の歴史があります。しかし、近代の日韓の関係は日本の植民地支配にはじまり、韓国の人びとを戦争にまきこみ、癒しがたい傷を残しました。この本がめざしたのは、ジェンダーの視点から過去をみなおし、歴史体験を共有することです。
そしてどのようにして戦争のない未来をつくっていくか、若い世代とともに考えたいのです。」
カバー裏書きより

●写真を多く載せ(180点余)ビジュアルなものに しました。
●コラムをつけて内容の充実をはかりました。
●多くの参考文献を紹介し、年表を添付しました。
◎高校、大学などで討論の材料として使ってください

最近の書評から
               「ふえみん」 11月25日(金曜日)号 

 アジア共通の歴史教材を作ろうという取り組みが進む。本書は、そこで明確に意識されていなかったジェンダーの視点から、日韓近現代史の編纂に取り組んだもの。そして、日韓と在日朝鮮人女性研究者の共同作業による「歴史書」が誕生した。このこと自体が歴史のぺージを一歩進めた大事件なのである。
 天皇制の確立、植民地支配の始まり、太平洋戦争、そして戦後へ。その聞、両国の女性たちがどんな状況におかれ、どう闘ったのか。それを同時並行で見ると、歴史は今までと違う色になる。
 国策に追随する女性運動の傍らに、命を賭けて国を守る闘いに立つ女性がいる。日本ではリブ、韓国では民主化運動と場面は違っても、焦点は家父長制に近づいてい<。そして「慰安婦」問題。加害国と被害国という立場の違いから目をそむけないことが、歴史を共有し、未来を共に創造するための出発点となることを、私たちは学び取った。「違いを認め、共に闘う」のは、いつも弱い側にいる女性の特権なのだ。編纂にあたった鈴木裕子さん、鄭鎮星さんらに感謝したい。今年のナンバー1、お薦めです。(矢)

          「女性ニューズ」(全国婦人新聞 2005年11月30日)

 今年は日本、斡国、中国3国共通の歴史教材が初めて発行され話題となったが、今度は日本と韓国の女性女による日韓歴史教材、『ジェンダーの視点からみる 日韓近現代史』が日本と韓国で同時出版された(日本では、梨の木舎発売 2800円)
 日韓の女性が初めてともにつくった近現代の歴史書。4年がかりでつくられた。
日本と韓国は、隣の国で長い交流の歴史があるが、近代の関係は、日本の植民地支配の歴史。アジア太平洋戦争では強制徴用や「慰安婦」など癒しがたい傷を与えている。しかし、日本では、いま韓流ブームなどいわれているが、韓国の歴史などほとんど知らず、歴史上の人物なども、一人も知らないのが実情ではないだろうか。まず、事実を知ることから始まるという思いがする。
 また、女性のことは通常の歴史書から除外されていた。この本は、ジェンダーの視点でつづられているため、日本のことでも、全く知らないことがいっばい書いてある。維新後、日本が近代化し同時に植民地主義をとることからこの本は始まるが、北海道開拓で、開拓に来た人々が逃げ出すのをふせぐため、まず「遊廓」をつくった。わずか14年で38箇所になったとある。こんな事実を日本人の何人が知っているだろう。この本をつくろうというきっかけは、2001年、「歴史歪曲教科書」の間題がおこり、アジアで共闘がおこなわれたとき。日韓の女性たちのなかで、教科書全体に女性の視点が欠落しているということが痛感された。日本軍「慰安婦」問題で15年にわたる日韓女性の連帯の運動があり、そうした連帯の上で「日韓女性共同歴史教材編纂委員会」がつくられた。
 韓国の編集責任者鄭鎮星さんはソウル大学社会学科教授、ソウル大女性研究所所長で韓国では有名な歴史家、文字通り第一人者。実際に執筆しているのは若手も入った研究者たち7人で、ひとり1章ずつ執筆している。
 日本側の責任者は鈴木裕子さん(女性史研究者)。執筆は、さまざまな事情のため、50人以上があたったので、多少細切れの感がある。年に2回以上、6回も合同会議をひらき、認識の差や問題点を討論、4年がかりで完成にこぎつけた。鈴木裕子さんは「日本側は執筆者が多く、本文で言い尽くせないところもあるのをコラムで補っていくなどしてまとめた。翻訳も大変な作業で、韓国側の執筆者は大体日本語が読めるが、日本側はほとんどダメなのに、翻訳体制がなかなか整わず苦労した。まだまだ不十分な出来と思うが、日韓の女性が初めてともにつくった本。最初のステップ。まず事実を知り、歴史体験を認識し、戦争のない未来を築くために読んでほしい」と語っている。



        「朝鮮新報」2005年12月5日掲載

「女性の眼」が捉えた歴史 
 
1993年のウィーン国連人権会議では、「女性の権利は人権である」ということが世界的に認知され、2年後の95年の北京女性会議では、世界中から集まった政府・民間あわせて4万人を超える女性たちが「21世紀に向けて女たちのエンパワメントを」と、熱く燃えた。エンパワメントとは、「力をつける」という意昧だ。
 女たちが「力をつけた」結果生まれたのが、本書である。その力はいったいどんな力なのか。2000年に国際女性戦犯法廷を主唱し、実現させたジャーナリストの故松井やよりさんの言葉を借りれぱ「それは、支配したり、侵賂したり、征服したり、搾取したり、管理する力、権力ではもちろんない。それは、自分自身で考え判断する力、女性であることに自信と誇りを持つ力、自分の人生を選び取る力、差別され虐げられた人々と痛みを分かち合う力、生命や自然をいとおしむ力、圧制や破壊と闘い社会変革のために行動する力、新しい文化と価値を創造する力」だというのだ。
 まさに、そんな力に満ちあふれる女性たちがふえ、その力をあわせるときに、途方もなく巨大なグローバルな力に抗して、歴史を前進させることができる。
 本書はジェンダーの視点からみる日本と朝鮮半島における近現代史であり、日本と南の女性たちが初めてともにつくった歴史書だ。「乙巳5条約」から100年、日本の侵略戦争が終わって60年という節目に、「長い間疎外されてきた『女性の眼』から歴史を捉えてみようと試み」(伊貞玉・梨花女子大学教授)、生まれた画期的な共同歴史教材でもある。
 内容は、1章 日本帝国主義の拡張と「韓国併合」、2章 3・1独立運動と社会運動の展開、3章 日本帝国主義期民衆生活の変化、4章 戦時動員と日本軍「慰安婦」、5章 日本敗戦と朝鮮半島分断・朝鮮戦争、6章 ウーマン・リフと杜会運動、7章 女性運動と「女性国際戦犯法廷」と多岐にわたる。また、「日帝強占期の戸主制度の移植」などの項目を設け、天皇制と家制度、民法と戸籍法、家制度と女性などの関係性について細かく説明しながら、日帝がいかに朝鮮女性を奴隷的に支配しようとしたかを記述していて、読み応えがある。
 本書はこの10数年にわたって、日本軍性奴隷制問題で人権回復のために、手を携えてきた南と日本の女性・市民が共同し、研究者らの参加を得て、発刊に至った。南側の編集責任者は日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会委員でもある鄭鎮星・ソウル大学杜会学科教授、日本側責任者は女性史研究者の鈴木裕子さん。本書誕生に関わった多くの人々の労を多としたい。(朴日粉記者)