シリーズ・平和をつくる4 
オバマのアメリカはどこへ行く


蓮見 博昭著


定価:本体1800円+税
ISBN 978-4-8166-0707-7
A5判 172頁

2009年6月30日
前著『9・11以後のアメリカ政治と宗教』(2004年刊)に続き、アメリカの政治の動向を探る。
2009年1月、初のアフリカ系、バラク・オバマ新大統領が登場した。オバマはさまざまな難問に果敢に取り組み、ブッシュ前政権8年の負の遺産をできるだけ早く払拭しようとしている。
本書は、アメリカの主な分野の近況とそれについてのオバマ大統領ないし新政権の考え方や施策を紹介する。
オバマ大統領のもと、アメリカはどこへ向かおうとしているのか・・・。

【著者紹介】

現在、恵泉女学園大学名誉教授。1933年、東京生まれ。
東京外国語大学(欧米第一課程)卒業後、時事通信社入社、ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドン特派員、解説委員、出版局長などをつとめる。
1989年以来、恵泉女学園大学・英米文化学科教授(アメリカ政治担当)、2001年より同大学の大学院教授を兼任。04年3月、同大学を退職後、現職。
◆主な著書
『アメリカ政治経済ハンドブック』(1986年、共編著、時事通信社)『日米情報摩擦』(1988年、共著、大修館書店)『戦後アメリカ外交の軌跡』(1997年、共著、勁草書房)『英米文化学のこころみ』(2000年、共著、彩流社)
『宗教に揺れるアメリカ――民主政治の背後にあるもの』(2002年、日本評論社)『G・W・ブッシュ政権とアメリカの保守勢力』(2003年、共著、日本国債問題研究所)
『9・11以後のアメリカ政治と宗教』(2004年、梨の木舎)
『宗教に揺れる国際関係――米国キリスト教の功と罪』(2008年、日本評論社)
◆主な訳書
マーチン・ルーサー・キング著『汝の敵を愛せよ』(1965年、新教出版社)ジョージ・&・ジョーン・メローン共著『剣が峰のアメリカ経済』(1979年、監共訳、時事通信社)エコノミスツ・アドバイザリー・グループ編『シティー2000――ロンドン国際金融センターの将来性』(1985年、共訳、時事通信社)ヘドリック・スミス著『パワー・ゲーム――変貌するアメリカ政治』(上・下二巻、1990年、監共訳、時事通信社)

【まえがき】から
はじめに
 アメリカ合衆国では、100年に一度とも言われる深刻な経済危機の唯中で、初のアフリカ系(黒人)大統領が登場し(2009年1月)、大車輪の活動をしてきた。バラク・オバマ新大統領は、選挙戦中、経験不足を批判されたが、就任後も、それが表れていることは否めない。また、急速に悪化する経済状態に直面して、スピードを重視する必要から、その施策が拙速になりがちなことも否定できない。
 それにしても、オバマがさまざまな難問に果敢に取り組んできたことだけは間違いないし、ブッシュ前政権八年間の負の遺産をできるだけ早く払拭しようとしていることもよく分かる。前政権との違いを際立たせるため、意識的に前政権の目玉的政策をヤリ玉に挙げてきた面も感じられる。
 ただ、オバマ政権がこれまでに実施してきたこと、これからやっていこうとしている政策は、効果が上がるにしても、相当時間がかかることは指摘するまでもない。1980年代にレーガン政権が断行した経済政策(「レーガノミクス」)は、90年代のクリントン政権時代になって本格的な成果を発揮したという説もあるくらいである。問題なのは、国民や反対勢力、マスコミがどこまで辛抱強く待ってくれるか、であろう。
 本書は、アメリカの主な分野の近況とそれについてのオバマ大統領ないし新政権の考え方や施策をできるだけ分かりやすく紹介し、アメリカがどこへ向かおうとしているのかを検討しようとするものである。本書の前半では、対外関係、国内政治、経済、社会の各分野を取り上げ、後半では、アメリカの宗教と宗教に基づく政治や社会事情をいくつかの側面から考えていく。その上で最後の章では、オバマ政権下の新しいアメリカの行方を展望する。
 アメリカの動向を考察する場合、アメリカ衰退をめぐる議論と、アメリカ帝国化に関する論争を抜きにしては、正鵠を得たものにはならないだろう。アメリカ衰退論は、1975年に終結したヴェトナム戦争がアメリカに手痛い敗北と経済的大打撃を与えたことから台頭してきた。しかし、東西冷戦の終結でソ連が崩壊した結果、アメリカに対抗する超大国が姿を消し、アメリカが唯一の超大国になって、衰退論も鳴りを潜めた。
 これに対し、帝国論は、第二次大戦後も共産圏諸国や西側諸国左派勢力の間で、アメリカを帝国と批判する形で行われていた。ただ、アメリカ国民は、自国が帝国であることは認めたがらず、アメリカ帝国論に反論してきた。しかし、レーガン、ブッシュ(二世)両政権に大きな影響を与えたネオコン(新保守主義者)グループはむしろ積極的に、アメリカは帝国にならなければならないと主張し,反共産主義政策や単独行動主義外交など、帝国主義的路線を推進しようとしてきた。
 2001年の9・11テロ事件後は、その帝国主義路線に拍車がかかって、内外に大きな波紋を広げた。ブッシュ(二世)政権の退陣とともに、ネオコンの影響も急速に薄れつつあるが、オバマ大統領は、本来の意味でのネオコンの一員だという説もあり、その考え方は根強く残っていく可能性もある。
【目次 】

はじめに3
1章 アメリカは衰退し始めたのか 11
欠けている帝国の資質  衰退論とオバマ大統領  ヴェトナム戦争で相対的衰退へ
国力を消耗する大戦争  帝国の手の広げ過ぎ  進むも地獄、退くも地獄
テロリズムの終結も  トルーマンに匹敵する枠組み
福音派の国連軽視とオバマ支持  宗教間対話を進める

2章 民主主義政治の根本的見直しが必要 29
あいまいな憲法の規定  レモン・テストが参考に  世論は政教分離で二分
政教調和主義の問題性  いかがわしい民主主義  理性と信仰のバランス
政治不信が大きな波紋  草の根の活動が盛んに  政治システムの制度疲労
葬られた男女平等修正案  利益集団政治は改革されるか

3章 「カジノ資本主義」の行き過ぎ是正を 51
未曽有の危機に  ストレンジの警告  金融工学でノーベル賞
経済界の不正も横行  ウェーバーが異口同音の意見
グラス・スティーガル法撤廃  オバマの景気対策  予算教書で基本方針
社会主義をめぐる論議

4章 社会への影響力失い始めた宗教 71
宗教的なアメリカ国民  根強いワスプ支配体制  宗教界で起きた大変動
社会問題に十分応えていない  聖職者の不祥事続発  妻帯を認めるべきか
社会全般の腐敗の根因  変革に宗教結びつける  銃社会の定着と治安
世帯収入の格差続く  政治的正しさ運動

5章 「キリスト教国」アメリカにおける戦争と平和 93
アメリカは暴力の文化  戦争をしたがる大統領  平和を妨げるキリスト教
キリスト教原理主義の影響  聖書無謬説を信奉  救いと審判が目的
救済的暴力と善悪二元論  非教派的福音派  コンスタンティヌス体制を止めよ
聖書無謬説は怠慢

6章 歪んだ形のキリスト教をめぐる動き 111
終末に関する小説が大人気  福音派の大幅増加にも寄与  第三次大戦不可避論も
論議呼ぶ知的設計運動  原理主義は世界を亡ぼす  キリスト教保守派に逆風
波紋呼ぶ路線対立  指導者層の高齢化が問題  08年に独自候補選べず
若・中年層でオバマ支持増加

7章 ネオコンとは何だったのか 129
ハリントンらが最初  マクガヴァンらに対立  トロツキーの孤児たち
民主党の改革をも促進  オバマとネオコンの関係  やはりユダヤ系が多い
セオコン・グループも  宗教的な共通の理念  ネオコン指導者らの不祥事
道徳的優位性を主張できるか

8章 新しいアメリカはどこへ行く 147
完全には楽観的でない  資本主義経済のリセット  社会契約改定の好機
大きい政府への抵抗弱まる  アメリカの評判低下  ケーガンの警告
一九世紀の状況の再来  2025年の世界動向  中国は第二位の経済大国に