安田好弘弁護士の逮捕は不当であり、
組対法先取りの政治弾圧である。

盗聴法成立阻止ネットワーカー連絡会(JCA反盗聴法プロジェクト)
1998年12月16日


 さる12月6日、警視庁捜査二課は、安田好弘弁護士を「強制執行妨害」容疑で逮捕しました。新聞報道などで伝えられる事件内容が事実だと仮定しても、これは民事における債権取り立てのありふれた事件に過ぎません。通常、警察は民事不介入の原則から、この種の事件をとりあげることにはきわめて消極的です。にもかかわらず、あえて刑事事件化し、まして証拠隠滅や逃亡のおそれのない安田弁護士を逮捕したことは、きわめて異常であり、そこに露骨な政治的意図を見て取ることができます。

 安田弁護士は、死刑廃止運動の中心的人物としてよく知られ、麻原氏の弁護でも刑事訴訟法の原則に忠実な法廷活動を行ってきました。検察は、これを「弁護団が裁判を引き延ばしている」と中傷し、自らの思惑通りに事が運ばないいらだちを隠していませんでした。そして、麻原氏の公判100回目を期して、マスコミがこの検察のいらだちを代弁するかのような麻原弁護団バッシングを行った翌日に安田弁護士を逮捕するというタイミングは、あまりに露骨と言わざるをえません。安田弁護士は、警察・検察に都合の悪い人物であるからフレームアップの対象とされたとしか判断できません。
 事件の詳細については裁判で明らかにされるとは言え、上述のようにそもそも逮捕自体が刑訴法に違反する違法なものである以上、安田弁護士は、即時に釈放されなければなりません。警察・検察のみならず、逮捕を認めさらに勾留延長をも認めた裁判所も指弾されなければなりません。また、警察発表のみに頼り、安田弁護士の名誉を傷つけるマスコミ報道も、同様に指弾されなければなりません。

 組織的犯罪対策法に反対する全国弁護士ネット事務局が12月11日に発表した「安田好弘弁護士に対する逮捕に抗議し、12・16即時釈放を求める緊急集会に参加を」と題する声明は、以下のように指摘しています。

「組織的犯罪対策法はいわゆるマネーロンダリング対策として犯罪収益収受の罪を広範な犯罪に拡大しています。私たちは、この犯罪収益収受罪が弁護活動を著しく困難にする可能性があると警告してきました。今回の逮捕は強制執行妨害罪の共犯とされていますが、この組織犯罪対策防止法が成立すれば、共犯者としてではなく、依頼者が一定の犯罪に基づいて取得した金を違法に取得された金であるという「未必的な認識」がありながら受領すると、それだけで犯罪収益収受罪となります。法務省はこの規定を弁護士に適用する可能性を否定していません。
 このような法律が制定されれば、私選弁護は極めて困難なものとなることでしょう。
 今回の逮捕には、組織的犯罪対策法の制定を待たずに、これを先取り的に実施し、法成立後に布石を打っておく意図も感じられます」

 ここに指摘されている通り、この逮捕は安田弁護士個人への攻撃ではありえず、犯罪を犯した人を弁護する、という刑事弁護自体を犯罪への荷担として処罰するという、驚くべき警察・検察ファシズムの前触れと言うべきものです。ここから、上述のようなマネーロンダリング規制を含む組対法そのものの狙いが逆に鮮明に浮かび上がってきます。

 私達、盗聴法に反対するネットワーカーは、組対法、とりわけ盗聴法が人々の自由なコミュニケーションを萎縮させ、国家権力への批判を押さえ込み、情報を操作し、人々を分断するものであると考え、この法律の制定に反対してきました。
 今回の安田弁護士への逮捕・フレームアップは、情報の一方的な操作に反対し、自由な政治活動、自由な市民活動こそ民主主義の基礎として守り抜かなければならないと考える私達の立場からも、けっして許すことのできないものです。
 私達は、違法・不当な逮捕に抗議し、安田弁護士の即時釈放を要求します。


 警察発表を鵜呑みにしたマスコミ報道が氾濫するなかで、インターネット上には、自分たちの頭で考え、事態をより冷静に、かつ客観的に観測し、逮捕の不当性とマスコミのフレームアップに抗議する論調がたくさん存在します。これは、インターネットが、人々が自前で考え、それを表明するオルタナティブなメディアとして機能している側面をよく示している事例だと思います。
 私達は、ネットワーカーの一人としてこのことを誇りに思います。以下、インターネット(WEBSITE)上の安田弁護士不当逮捕抗議関連のアドレスをご紹介しておきます。