ムミア・アブ・ジャマルがペンシルヴァニア州最高裁に、原審(の死刑判決)を取り 消すように、新たな提訴を行う。


<連邦地裁で、ムミアが勝訴>

 アフリカ系アメリカ人の著名なジャーナリストで、無実の死刑囚であるムミア・ア ブ・ジャマルは、1995年6月に、フィラデルフィアの一般訴訟法廷(Common Plea Cou rt)に対して、PCRA(ポスト・コンヴィクション・リリーフ)の訴えをおこし、事実 上の再審請求を提訴しました。この提訴が行われる直前の6月1日に、トム・リッジ 州知事は、ムミアの死刑執行命令書にサインし、執行日を8月17日と指定しました。

ムミアと弁護団は、5月の早い時期から、再審請求をもうすぐ行うことを表明して いました。トム・リッジ知事が、そのことを知っていたのは間違いのないことで、し たがって6月1日に急いで(ムミアが提訴する前に)執行命令を出したのではないか と言うことは、以前から指摘されていました。

 ムミアは、同年の5月末に、LIVE FROM DEATH ROWという本を出版しました。この 本を獄中から出したことに関連して、ペンシルヴァニア州矯正局は、それが「囚人は いかなる職業にも従事してはならず、報酬を受け取ってはならない」という州矯正局 の通達に違反するという名目で、ムミアに懲罰処遇を与え、面会や電話、手紙を制限 して独房に入れ、足かせをはめて肉体的にも痛めつけるなどして、メディアや弁護人 との面会をいちぢるしく困難にしました。この時期におけるこうした刑務所の対応は 、再審請求のための準備に重大な支障を与えました。また、ムミアと弁護団との間の 通信が刑務所当局によって盗まれ、検閲されたばかりか、そのコピーが州知事にまわ されていたのです。

 ムミアは、この件で、効果的な弁護を受ける権利や、弁護人と訴訟当事者との秘密 交通権などの憲法上の権利が侵害された、として連邦地裁に民事訴訟を提訴していま した。(この民事訴訟は、彼が現在収監されているグリーン刑務所に近いピッツバー グで行われた)

 今年12月4日、その裁判の判決が下り、Donetta Ambrose判事(女性)は、刑務所 当局が不正にムミアと弁護人との間の通信を妨害し、検閲し、さらに州知事に回覧さ せていたこと、州知事の法律スタッフで、知事が死刑執行命令に署名する際にアドバ イスする立場にある者が、ムミアと弁護人との間の、再審請求に関する内密の文書( ワイングラス主任弁護士によれば、弁護側の微妙な戦略に関する記述もあった)を読 んでいたことなどを認定し、これは憲法によって擁護されているジャマル氏の基本的 権利の侵害である、と宣告し、一般法(the common law)および憲法修正6条、修正14 条で認められている、公正な裁判を受ける権利、弁護人との秘密交通権の明確な侵害 であるという判決を下しました。

<原審の無効を求めて、PA州最高裁に新たな提訴>

 この12月27日、レナード・ワイングラスを団長とするムミア弁護団は、上記の連邦 地裁の決定を受けて、原審の死刑判決を無効とすることを求める訴訟をペンシルヴァ ニア州最高裁に提訴しました。

 弁護団は、1995年の再審請求の申し立てが、ムミアに対する不当な懲罰による刑務 所当局の妨害によって大幅に遅らされ、ムミアと弁護団の間の通信も、当局によって 盗み見されていることが分かったので、手紙で連絡をとることを避けざるを得なかっ たこともあり、十分な訴訟準備ができず、あまつさえ訴訟準備の書面が知事に回覧さ れたために、知事は通常では考えられない短期間で死刑執行命令に署名をし、提訴前 に執行日が決まってしまい、執行停止の決定も直前まで遅らされたために、再審請求 訴訟が弁護側にとってきわめて不利な状況下でたたかわれたことを指摘して、こうし た条件下での決定は無効であるという主張をしています。

 この件については、かなりの長文で法律専門用語のちりばめられたメールが届いて いて、私の英語力および法律知識では、なかなか手強いものがあり、きちんと訳すに は時間を要するので、とりあえず、ざっと読んだ概要だけを書きました。したがって 不正確な部分や勘違いもあるかもしれませんが、大筋はこういう状態です。連邦地裁 での勝訴は前進であることは間違いないと思います。ここから新しい局面が開かれる ことを望んでいます。

今井恭平


この件に関するムミア支援組織からのレポートの原文を以下に掲載しました。