STARS

スターたちが死刑囚監房にいる元パンサー党員の活動家の命のために戦う

The Daily Yomiuri(Tokyo)
from weekly "The Independent(London)"
Saturday 25 June 1995

 14年近く前にフィラデルフィアの白人警察官を殺害した容疑で、今年の夏に死刑が執行 される予定のかつてのブラックパンサーの活動家、ムミア・アブ・ジャマル氏の命を救う ために、死刑に反対する人々、公民権支持者、ハリウッドの有名人たちは、新たに法的努 力を結集させました。
 ペンシルバニア州最高裁からも連邦最高裁からも控訴を却下された、41歳になるアブ・ ジャマル氏が注射によって死刑を執行されるまで、あと2ケ月となりました。しかし、この 裁判はすでに悪名高いものとなっており、人種関係を悪化させることは明らかです。
 アブ・ジャマル氏は殺人者ではなく無実の活動家であり、過激な考え方のために狙われ 、でっちあげの裁判で濡れ衣をきせられたのだという彼の弁護人の主張を一般に知らせる ために集会や資金集めが行われています。
 彼の弁護士たちは、目撃者から証拠を強要した上、アブ・ジャマル氏を弁護するような人の証言を慎重に無視したとして、警察と州の検察官を非難しており、また、1982年に彼に対して有罪を評決した10人の白人と2人の黒人の陪審員は、その当時人種間の緊張が高かっ た町に住んでおり彼に対して偏見を持っていた、と語っています。
 警察は、この有罪判決は判決を下したすべての法廷で支持されており、弁護側は「藁に すがっているに過ぎない」と主張しています。
 この事件の理非はどうであっても、アブ・ジャマル氏は死刑囚監房にいる3千人のなか で最も有名な人物です。逮捕された当時、彼はラジオのパーソナリティーでありフィラデ ルフィア黒人ジャーナリスト協会の会長でした。また彼が最も活躍していた時期には「声 なき人びとの代弁者」として知られていました。1994年にはナショナル・パブリック・ラジオ は獄中生活についての彼の解説を一週間にわたって放送する予定でしたが、警察や右翼議 員の反対にあってこれを中止しました。
 しかし国中の書店は人種や死刑やビル・クリントン大統領の公民権の記録などについて のエッセイを集めた「死刑囚監房からの生放送(Live from Death Row)」を店頭に並べ ています。彼はまた3万ドルの前金を受け取っており、これによりいっそう彼の裁判が一 般に知られるようになったのです。
 彼の当局との最初の接触は1968年で彼が14歳の時でした。その際、彼は人種差別主義者 のジョージ・ワレス大統領候補の開催した集会に抗議し逮捕されました。1年後にはブラ ックパンサーの共同設立者であるヒューイ・ニュートン氏を支持するデモに参加した際に 、FBIはアブ・ジャマル氏のファイルを作成し、彼の逮捕後も記録しつづけました。後に彼は過 激なMOVEグループと密接に活動するようになりました。
 彼は控訴の手続きを使い果たしてしまったにもかかわらず、昨年の11月までは彼の命は 危険ではありませんでした。しかし、ペンシルバニア州知事がリベラルな民主党のロバー ト・キャセイ氏から、<法と秩序>(Law and Order)共和党のトム・リッジ氏に引き継がれたことによって、 事態は一変しました。7ケ月後にはリッジ氏は8月17日のアブ・ジャマル氏の件を含む、12 件以上の死刑執行許可証にサインしました。6週間前にペンシルバニア州では32年ぶりに 死刑が執行されました。1976年に合衆国で死刑が復活してから北東州では初めての死刑執 行です。
 その日が近づくにしたがって感情は高ぶっています。彼の支持者にとってはアブ・ジャ マル氏は殉教者なのです。しかし、ウーピー・ゴールドバーグさんやMashに出演していた マイク・ファレル氏を含む有名人に対して、ペンシルバニア州の地方検事事務所は公開 書簡で回答しました。ここでは、彼らの行動を「警察官や犠牲者の家族、そして多くの法 律を遵守する市民を侮辱するもの」で、「この卑劣で悪賢い殺人者を誤った情報に基づい て支持する」不快な行動だと非難しています。警察ではこれらのスターたちをボイコット するように全米の同僚に呼びかけました。