press conference

3弁護士がムミア・アブ・ジャマルの死刑執行停止を求めて記者会見



 8月1日、午後2時から、東京高裁の司法記者クラブで、以下の3弁護士が記者会見を行いました。
  小川原優之弁護士
  新谷桂弁護士
  堀井準弁護士
 この3弁護士を含む6名の弁護士が、本年7月、アメリカの死刑制度の視察のために同国を訪れ、フィラデルフィアで行われているムミア・アブ・ジャマルの再審および死刑執行延期に関する公聴会を傍聴し、ムミアの主任弁護士であるワイングラス氏とも会見して来ました。
 いずれの弁護士も、ムミアが冤罪である強い印象と、原裁判および現在進行中の再審に関する公聴会の公正さへの大きな疑念を感じたことを述べました。
 ことに奇異なのは、再審を行うかどうかの裁定をする現在の公聴会を担当している判事が、一審でムミアに死刑判決を下した当のアルバート・セイボであることです。

 公聴会は7月12、14、27日に開かれました。ムミアの支援者が500名くらい傍聴に来たほか、死刑執行推進派も、警察友愛会などの組織的な動員で、数百人を集めていたそうです。
 支援者には白人もいるが、アフリカン・アメリカンが多く、警察友愛会などは、ほぼすべて白人であり、あきらかな人種対立の様相を示しています。
 記者会見の中では、ムミアと弁護団が5月の早い時期から、死刑執行停止を求める法的な措置(Post Conviction Relief)を6月5日にとることを表明していたにもかかわらず、リッジ知事がその先手を打って6月1日に執行許可書に署名したこと。また、5月26日段階では、州知事が死刑執行を決済するための前提としての州政府事務官の事前調査が日程にものぼっていなかったという情報があり、リッジ知事が、きわめて異例の早さで急遽、死刑執行を決定したのではないかという疑念が明らかにされました。
 これは、上訴を提起中の死刑囚にたいする執行許可の署名はされないという州当局の長年の方針(リッジ知事も、この方針は踏襲することを明らかにしていた)に反してまで、執行を急いでいることを意味し、きわめて異常な事態と映ります。

 また、ムミアが再審を請求する事由の一つの柱として、原裁判で、有効な弁護活動が行われなかったことをあげており、この理由による再審の決定は、昨年8月から今年5月までの間だけでも、すでに13件認められている(全米で)ことが明らかにされました。
 ちなみに7月27日の公聴会では、一審の被告側弁護士のジャクスン氏が証言台に立ち、自分が十分な費用を支給されなかったこと、検察側がムミアに有利な重要証人との接触をさせなかったこと、自分は民事しか担当したことがなく、殺人事件では経験が乏しく、何度も辞任を願い出たこと、必要な証人を召喚しなかったことなどを認めています。また、他の複数の弁護士が、自分の弁護活動が不十分なものであった事を誓約証書で認めており、これだけでも十分に再審事由を満たしており、当然刑の執行は停止されるべきであるというムミア弁護団の見解を伝えるとともに、セイボ判事が、いたずらに公聴会を引き延ばし、執行延期の決定を遅らせようとしているという印象を受けたことも報告されました。
 このほかにも、重要な指摘がされました。今回のレポートはとりあえず、以上です。

今井 恭平