「うちの理事さん」

     木文化研究所 水野一夫

2000年7月号掲載

 

◆木文化研究所の仕事

 森林を活かすことで今、社会が直面している環境問題や過疎の問題、高齢化社会の問題などの多くの問題が解決できるとの考えから、私たちの本業である“木を使う”事業を、山村の振興と結びつけるよう努力しています。

 木を使う事業の大部分は木造住宅や木造の屋外公園施設などの設計や監理(時には規模によっては施工も)で、できる限り地域の木材を使うよう指定しています(写真@)。

 住宅については建設の方式で建て主がいろいろな職人を選べる直営式を目指し、建て主の助言者となったり、工事に参加できる方式を採っています。このことで自主的な維持・管理をやれる住まい手となってもらったり、特に木材を含む自然素材の特質を理解してもらうようにします。

 また、公共施設に於いても木造施設の維持、管理の方法を設計と同時に提案することにしており、あらかじめ計画的にそのことを織り込むよう務めています。

 次には材料販売の事業です(写真A)。設計の事業から得た具体的な木材利用者側の要望を実例にして、木材を提供してくれる産地へ商品作りに関わる情報を提供したり、商品化へ向けたアドバイスをしたりしながら、地域材で加工した商品開発に関わり、それらの紹介や販売をしています。具体的には三河のスギの赤身を活かしたフェンスやデッキ部材、南部アカマツの床材などを設計事務所仲間に紹介しています。さらに、木材の耐候性を高め、施設の維持管理に欠かせない保護塗料の販売、スギやヒノキの仕上げに合う自然塗料の販売もしています。自ら設計で事例にあたった結果を普及しているわけです。

 そうした実践を裏付けてくれるのは実は地域で大切に育まれた木材で、それらを排出する森林の存在です。この森林が今所有者から見放されようとしています。あまりにも手がかかり、その割に見返りが期待できないからです。一方で身近に触れられる里の雑木林などが見直され、それらの保全に関る人たちが増えていますが、これらの動きに応えるのが里山林保全管理者養成講座です(写真B)。森林の保全を市民の手で行う。技術の向上や、活動グループの運営などについて研鑚を積む講座です。わずかな力ですが、自治体の要請に応えています。余裕を作って自主講座も取り組みたいと考えています。今までスギやヒノキを育んできた森を孤立させないためにもこころある人たちが代わって守っていけるための講座を。

 木を生かす暮らしはなにも住宅作りだけではありません。私たちが取り組んでいるもうひとつの事業が木材PRの事業です(写真C)。木造住宅のセミナーや森林シンポジュウム、木工教室とか緑化イベントなども手がけています。木材や森林が時節の要望に応えなければならない事、今日の社会情勢に応えられることを判りやすくアピールしていくことが役割だと考えています。山村に暮らす人も都市の人も同じように森林や木材の魅力をまだまだ知りません。可能性を探し、伝える努力が必要です。

 あわせて私たちが昨今力を注いでいるのが森林環境教育です(写真D)。森林に対する人々の眼差しが変化するとともに、森林経営の視点も変化を求められてきました。未来の森林での営みを創り出してくれる新しい視点を養った人材を産み出すために、今まで林業を支えてくれた人たちの情熱とともに新たなアプローチで森林の魅力を探っていきます。学校での知識が森林の中で試され、自然の一員として環境問題を捉える。自然と人の関係。人の営みの偉大さと自然のもろさ、たくましさなどに触れるプログラムで応じています。特にこどもを対象に、森林管理の作業を織り込んでいます。

 

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