ニュース第55号 00年4月号より

出会いをつなげ 

        東京都五日市青年の家

 北見靖直

 

◆早くも「木と人のネットワーク」を担当して5年。

 早いもので五日市青年の家で3泊4日の下草刈りキャンプ「緑のボランティア・ワークキャンプ」や1泊2日で間伐、炭焼き、枝打ちをシリーズで行う「木と人のネットワーク」を担当して5年がたちました。この間、檜原村の田中惣次さんをはじめ多くの西多摩で森林づくりに関わる方々にお世話になってきました。やはり青年の家職員として地域で仕事を展開していくにはいろいろな意味で5年以上は必要だとつくづくと思っています。

 私はいわゆる体験林業を経済課や森林組合といういわば林業プロパーとしてではなく、社会教育という枠組のなかでプログラムを実施してきました。社会教育とは一言でいえば「学びを通して地域と暮らしを発展」させることです。もっと青年の家流に、森田健作ぽっく言えば「出会いをつなげる」ことと言えることができると思います。

 それでは、私はこの5年間、何をめざしてきたのでしょうか?

 ◆「出会いの質」をどう作るのか?

 私が担当となった1年目。ひとつの命題を赴任したばかりの係長がつきつけました。「西多摩には市民グループも沢山でき、それをネットワ−クする森づくりフォ−ラムもできたのだから、青年の家の“木と人”は役割を終えたのでは?」という一言でした。しかし、私の考えは全く逆のものでした。「だからこそ公共施設として多くの関心ある市民をつなげることで市民グループやそのネットワークを活性化させることこそ役割がある」と思っていたし、このことをめざして事業を取り組んできました。そういう意味ではいいアンチテーゼを投げてくれたと思います。 「参加者をどう森林と市民グループに繋げるのか」が現在の「木と人のネットワーク」の重要なポイントになるなら、そのためには参加者がもう一度、ここに来たいと思う、「出会い」をプログラムすることが私の課題でした。単なる「出会い」でなく「出会いの質」を高める工夫を繰り返してきました。

 ひとつには、東京の森林や林業の現状をどうすればうまく伝えることができるのか。座学よりはまずは森林へ行き、そこで林業家の声を聞くことがいいと思っています。その方が臨場感もあるし、話し手も生き生きとしています。

 そして、さらに参加者の関心に沿った講演や東京の森林をどう守っていくのかをいろいろな視点から考えることできるシンポジウムを地域で活動する市民グループの方々にも参加してもらって行ってきました。

 そのうえで、充実した林業体験を準備してきました。最近、さまざまな市民グループのニュースで参加者の氏名を見ることが多くなってきました。事業の成果なのかそれとも参加者の方々の熱意なのか定かではありませんが、「出会いをつなげる」ことが少しでもできたのではないかと思っています。

 ◆「ひとづくり」−佐々木くんとその仲間たち

 夏の青少年を対象にしたボランティア講座「緑のボランティア・ワークキャンプ」でも多くの青年たちと出会ってきました。今春に卒業した東京農業大学林学科の4年生で春から緑資源公団で働き始める佐々木くんとその仲間たちとは素晴らしい出会いでした。1年生の夏に出会い、青年の家の事業に興味を持ってくれました。それから青年の家のボランティアとして「木と人のネットワーク」の準備を前の日から泊り込んで手伝ってくれ、「ワークキャンプ」ではリーダーとしてグループのまとめ役をしてくれました。

 そんな中で事業を作る側としていろいろな事を学んでくれたのではと思っています。酒もよく飲みましたし、よく語り合いました。とくに講座でいい話がでた時は次の日は早いというのに2時3時まで、みんなで車座になって感想を語り合いました。そんな時、講師の一人奥山達雄さんがいい味を出してくれるのです。

 そんな青年の家との出会いを出発点に彼らは「遊学のの道プロジェクト」という市民グループを立ち上げました。そして仲間のひとり山口さんは春から京都の森林組合です。彼女が「青年の家と出会わなかったら森林組合に就職してなかった」と言います。正確にいえば「青年の家を通じて、西多摩の森林、林業家、市民と出会った」ことで彼女は森林組合で働くことを決意したと思うのです。

 ここ西多摩には人生を変える程の生きた教育力があります。それは森林であり「ひと」です。そこに青年たちが出会い成長していく。そんな場をつくり、共に歩くことが恐れ多いのですが「ひとづくり」につながると思うし、青年の家職員として大切なことと思っています。

 ◆「木と人のネットワーク」の最終回を生かす!

 しかし、この五日市青年の家も平成13年1月で終わりです。木と人のネットワークも最終回となります。

 西多摩の市民グループを作りだし、つなげてきた五日市青年の家でのフャイナルは、市民グループや林業家、行政など、さまざまな人達が集い、いままで歩いてきた道を懐かしむと同時に、明日からどのように歩いていくのか、しっかりと刻むそんな集まりにしたいと考えています。倒木更新のように、ここからまた目に眩しいぐらいの新緑が芽生えることを感じてから「さよならの涙」を流したいと考えています。

 

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