ウラン残土撤去要求訴訟原告側弁護団の声明



2000(平成12)年12月1日      
声   明   文
弁護団      
1 本件訴訟の目的
  本日の原告榎本益美さんのウラン残土の撤去・土地明渡等の訴訟は、人の生命・身体・健康及び環境に有害なウラン残土という放射性廃棄物を、他人の土地に、違法に廃棄し続けている核燃料サイクル開発機構に対し、榎本益美さんが、土地所有者として。かつ、ウラン鉱石の採掘・選鉱に携わった労働者としての立場において、法治国家である筈のこの日本において、自主撤去という自力救済による権利の実現ではなく、司法を通じて、権利の実現を図り、放射性廃棄物の法的な処理責任、さらに、原子力利用の「負の遺産」を住民に押しつける国の政策のあり方を問うものである。
2 本件訴訟の内容
  本件訴訟の内容は、次のとおりである。
(1) 原告の所有する土地の所有権に基づいて
@ ウラン鉱石残土を収納した552袋のフレコンバッグの撤去と原告の所有する土地の明渡
@ 上記を含む方面地区のウラン残土約3000m3の撤去
(2) 原告は、土地の所有者であり、かつ方面地区の住民である。原告は、ウラン残土の撤去運動を継続してきたが、動燃によって撤去の約束が反故にされたり、早期撤去の要求を無視されたりした。この間、動燃は、生命・身体・環境に有害なウラン残土を違法に放置し続け、原告は、土地を使用できないばかりか、方面地区住民として、ウラン残土の影響による健康への不安などの精神的な苦痛に曝されてきた。
  これら一切の事情を考慮しての金100万円の損害賠償請求
(3) 本件訴訟を提起・遂行するについての弁護士費用として、金60万円
3 自治会訴訟と本件訴訟の共通点と相違点
  先に提訴された、方面地区のいわゆる自治会の訴訟と本件訴訟は、違法に放置されているウラン残土の撤去を求めるという点では共通しているが、次の点において異なるものである。
(1) 自治会訴訟は、1990年8月31日に締結された協定に基づき、権利能力なき社団である自治会が、原告となって、その履行を求めるものであるが(契約上の履行請求権)、本件訴訟は、その協定が背景にはあるが、法的には、個人が、土地所有権に基づいて、危険物による妨害排除を求めるものである(物件的請求権)。
(2) 自治会訴訟は、ウラン残土の放射性廃棄物としての危険性については、全く触れていないが、本件訴訟においては、その点についても触れ、かつ、榎本さんの土地のウラン鉱石残土撤去の緊急性についても触れている。
(3) 自治会訴訟は、慰謝料や弁護士費用を請求していないが、本件訴訟においては、それを請求するものである。
4 責任の所在
私達は、鳥取県や東郷町が支援している自治会訴訟と共通の願いを有しているものであるが、今日の如き事態に至るまでの過程において、関係行政機関の責任を追及する場面も、出てくる可能性もある。
  しかし、基本的に責任があるのは、放射性廃棄物を作り出した原子燃料公社、それから安全管理義務等を継承した動燃、さらに、その撤去義務を継承しながら、今日に至るまで撤去しようとしない核燃料サイクル機構である。
5 おわりに
  私達は、一日も早く、危険な放射性廃棄物が、本件土地・方面地区から撤去され、原告及び方面地区の住民が、安心して生活できる良好な環境を取り戻すべく、市民・科学者・支援の人々と共に本件訴訟を遂行するものである。
                                          以  上



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