プルトニウムがガンを引き起こす危険性は考えられてきたものよりも高いだろう
Plutonium cancer risk may be higher than thought


ニューサイエンティスト 2004年7月14日 ロブ・エドワード


http://www.newscientist.com/news/news.jsp?id=ns99996152



プルトニウムは従来考えられていたよりも何倍も危険であるようだ。国際的な安全限度における計算において受け入れられているものよりも、体内に摂取した内部被曝によるガンの危険性は10倍高くなるだろう。

この危険性は英国政府のために放射線専門家たちによって書かれた報告書において強調されおり、この報告書がニューサイエンティスト誌にリークされてきた。プルトニウムが放出する低レベル放射線は、ヒトの細胞に対して、従来考えられていたよりも大きな損傷を与える可能性があると、専門家たちは異口同音に語っている。彼らの見解は放射線被曝の指針に関する再考を促すことになるだろう。

過去60年間にわたって、数トンのプルトニウムが核実験と原子力プラントによって環境中に放出されてきた。

プルトニウムの有害性についての懸念は、日増しに強くなっている。それは低レベル放射線がもたらす潜在的な作用効果が発見されたためである。放射線が傷つけずに生き残ったと考えられる細胞の子孫が、遅れた損傷を被りかねないこと、すなわち「ゲノム不安定性」と呼ばれる現象を、欧州と北米の研究者たちは立証してきた。(ニューサイエンティスト紙面版2001年1月20日)

バイスタンダー効果

「バイスタンダー効果」として知られているものであるが、放射線照射をうけた細胞に隣接する細胞もまた損傷を受ける。さらに、ひとつの世代から次の世代に受け渡されるミニサテライトとよばれるDNAの小さな部分において突然変異の数が増大することが明らかになった。これらの効果が、ガンや他の疾患の引き金になり得るということが懸念されるのである。

ここ2、3ヶ月内に公表される予定の報告書は内部放射体による放射線リスク調査委員会(Committee Examining Radiation Risks from Internal Emitters: CERRIE)によって作成された。同委員会は、英国政府の放射線防護局、原子力産業、大学、そして環境団体からの12人の専門家が含まれる。

同委員会の全てのメンバーが、体内に摂取されたプルトニウムや同様の放射性核種がもたらすリスクについての不確実さの限度(the margin of uncertainty over the risks)は「少なくともひと桁は大きくなる」ということについては合意している。

「低レベル内部放射線に関する判定や政策決定をなす際に、このことは留意されるべきである」とダッドリー・グッドヘッドCERRIE議長は述べている。彼は、オックスフォードシャー州のハーウェルにある英国医療研究会議の放射線とゲノム安定性部門(UK Medical Research Council's Radiation and Genome Stability Unit)の前指導者だった。