【翻訳資料】

原子力施設に対する地震の恐れ

デイビッド・ハースト(パリ)  ザ・ガーディアン 2000年7月19日(水)



 フランスの原子力安全検査局は、国の南部にある重要な核再処理施設の閉鎖を要求した。この施設は地震地帯に建てられており、地震学者達はもうまもなくこの地帯が活動期に入るという可能性を恐れている。
 かつては揺るぎない地位を誇ったフランスの原子力産業において、王冠の宝石の一つであったローヌ河口のカダラッシェにあるその施設は、ドイツ原子力産業のMOX燃料を作っているために重い負担になってきた。ベルリンでは原子力産業の段階的廃止を打ち出しているのである。

 安全検査員と施設運転者との実りのない5年間の交渉の後、地震学的公式調査の詳細が、パリの監視グループにリークされてきた。

 その調査結果は、1993年12月以来の施設の周辺地域における活動性の「著しい成長」を明らかにしている。その地域で最後に巨大地震が起こったのは1913年だが、調査者らはその断層ラインが百年に一度大きな地震を引き起こす可能性を指摘する。

 地図で見ると、複数の断層ラインが、ローヌ川支流のデュランス川河岸にある施設の3つの側面に沿って走っている。施設の運転者であるコジェマ社は地震学者たちの発見に反論せず、そのプルトニウム処理施設をコンクリートの隔壁で覆うと申し出た。しかし検査者たちはそれは困難に満ちていると言っている。

 この安全問題に対応するどころか、コジェマ社はMOX燃料の生産量を年間40トンにまで増加させた。これはイギリスのセラフィールド施設の規模の5倍である。

 安全検査局長のアンドレ-クロード・ラコステはコジェマに対し、その施設を「2000年の後、早期に」閉鎖しなければならないと告げた。彼は、その閉鎖の日程は「確定的で交渉の余地のない」ものであると言い、彼の検査局が直面した遅延と不明瞭さに対して不満を漏らした。彼はコジェマ社宛の手紙の中で、「その立場は受け入れがたいと私は考えている」と告げた。

 コジェマ社はMOX製造をマルクールにある南部の別の施設に移すと脅しをかけたが、その施設自体が環境論議の中心にある。

 その脅しは安全検査局を激怒させた。検査局上層部の一人が、コジェマからの手紙をフランス政府内の緑の党の指導的大臣(the leading Green minister)であるドミニク・ボワネ環境大臣に送る前に、「恐喝」というコメントをそこに走り書きしたほどだった。

 ますます簡素化した対応の写真複写も、パリ拠点の原子力監視グループ・世界エネルギー情報サービスの事務所に届いた。

 世界エネルギー情報サービスのディレクターであるマイケル・シュナイダーは、「原子力産業側が公的な安全(規制)局の要求に対して明確な回答を出さないままに、5年間が過ぎたという事実は、フランス政府が規制に踏み込み、これを統制しなければならないことを意味している」と述べた。

 世界エネルギー情報サービスは、今は廃止されたフランスのスーパーフェニックス高速増殖炉計画のために1962年に建設されたカダラッシェ施設が、これまで適切に許認可されてこなかったとし、そのせいでどの大臣にこの施設を閉鎖する権限があるのかも不明確だと主張している。しかし情報サービスは、民間炉の使用済み燃料棒内で生成したプルトニウムを利用する方法の一つである、MOX燃料のヨーロッパ的製造にとって、その記述が壁に当たっていると確信している。

 カダラッシェは、北部フランスのラ・アーグにある主要再処理施設で使用済み燃料棒から分離されたプルトニウムを取り入れてMOX燃料に転換し、これはドイツの原発の2/3に提供されている。



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