[紹介]
 米国大統領選挙と同時に各地で様々な住民投票が行われた。その一つ、シカゴ地域では、「原発の段階的廃止とグリーン・エネルギーの推進」を求める住民投票で、投票者の3分の2以上が賛成票を投じ圧倒的な勝利となった。オバマ氏の地元シカゴ地域の住民は、新政権の原子力政策に強力なメッセージを送った。「原子力ルネッサンス」という神話は、市民の運動と金融危機のもとで、崩壊のスピードを早めるにちがいない。日本のマスコミではほとんど報道されていないため、紹介する。


[翻訳]
シカゴ地域の住民投票で勝利−原子力は「ノー いらない」
A Chicago-Area Electoral Victory Says 'No We Won't' to Nuke Power

2008年11月6日(木)
ハーヴェイ・ワッサーマン Harvey Wasserman
http://www.commondreams.org/view/2008/11/06-6

全世界のメディアがバラク・オバマの勝利で埋め尽くされているとき、彼のお膝元での原子力推進の敗北は、新政権にソーラートピアなメッセージを送った。

シカゴ地域のオークパーク、バーウィンとリバーサイドの地区の投票者は、「イリノイ州の選挙で選ばれた住民の代表は、州内の原子力発電を段階的に廃止して、原子力を風力、太陽光のような再生可能エネルギー源に置き換えるために必要な措置を講じる」ことを要求する住民投票で、3分の2以上が賛成票を投じた。

現在、上記3地区はその電力の75%を原子力に依存しており、コモンウエルス・エディソン−米国最大の原発所有者であるエクセロンの子会社−によって電力を供給されている。稼動中の11基の原発があるイリノイ州は、原発を最も多く所有する州である。

しかし、31,586人(68.3%)の投票者が住民投票で賛成した。反対したのは14,676人(31.7%)である。

原子力エネルギーは新政権が直面する最も重要な問題の一つであろう。オバマはエクセロンから選挙運動の寄付を受けたとして環境保護者たちから批判された。彼と副大統領に選ばれたジョゼフ・バイデンとは選挙戦で原子力への支持を表明した。

しかし、原子力は「安全」であるべきとオバマが強調することによって、さらに、ネバダ州で彼の流した広告がユッカマウンテン放射性廃棄物処分場に反対していることによって、彼らの姿勢は原発推進一辺倒ではなくなった。ネバダ州の住民の約80%は、その見積り額が今や約1000億ドルに達しているこの処分場プロジェクトに反対している。

対照的に、ジョン・マケインは約45基の新原発の早期建設を熱烈に擁護した。彼は、原子力空母での彼自身の海軍兵役について得意げに言及した。

しかし、このような「原子力ルネッサンス」の資金をいかに調達するかという問題は、今やすべての美辞麗句に暗い影を投げかけ、その技術の将来を規定しようとしている。

巧妙で費用のかかる広報活動を含めた強力なロビー活動は、現在、原発の新規立地を後押ししている。電気料金支払者に依存して原発資金を新たに調達することが、フロリダ州、ジョージア州と南北のカロライナ州において、おそらくは他の州でも、州公益事業委員会で目下強引に推し進められつつある。それによって何百億ドルもの負債が生ずる可能性がある。

しかし、風力、太陽光、潮力、地熱や他のグリーン・エネルギーのようなソーラートピアなエネルギー源と競合できない技術にウォール街は拒否の合図を送っている。

このように新原発建設の将来は、連邦と州の高額な補助金にかかっている。2007年秋には、原子力産業は新原発を建設するために、税金でまかなわれる資金で500億ドルを調達する一括債務保証を連邦議会のエネルギー法案に押し込んだ。

原発プロジェクトはいつも約50%は失敗するが、そのような一括債務保証は巨額の負債を納税者に押し付けたであろう。ウェブサイトNukeFree.org と音楽家たちボニー・レイット、ジャクソン・ブラウンおよびグラハム・ナッシュによって一部はリードされた全国的な草の根キャンペーンの力で、一括債務保証は葬られた。大きな全国的環境保護団体は一つとしてその債務保証を支持しなかった。

今秋、さらに大規模な連邦債務計画−事実上無制限の資金を提供する−が米国連邦議会に上程されようとしていた。それは、マケインが提案した45基を建設するために、納税者による新たな保証によって5000億ドルを調達できたであろう。

しかし、ウォール街が崩壊したとき、連邦銀行の救済措置のため、さらに大規模な財務負債を引き受けるという考えを主張できなくなった。

バラク・オバマが1月に就任するとき、グリーン・エネルギーを推進する人々は再び次のように主張するであろう;テロと人為ミス、放射性廃棄物と環境破壊の問題と共に、原子力発電はあまりにも費用がかかりすぎてソーラートピア的なグリーン・エネルギーと競合できないと。

新しい原発を建設しようとする試みは、時間切れになろうとしている。10年かそれ以上と見積もられている建設期間の後でなければ、新しい原発はエネルギーを供給し始めることはできない。競合するグリーン・エネルギー源−その相対的な経費は下がり続けている−が設置されてから多くの年月が過ぎた後である。

それ故、この小さいが力強いシカゴ地域でのソーラートピアな将来に賛同する投票は、非常に鮮明なメッセージを送っている。強力な新原発のロビー活動は新たな政権の初日から精一杯進められるであろう。

しかし、今日の財政的かつ政治的雰囲気の中で、原子力エネルギーは競合できない。グリーン・エネルギーの地球が産業界とウォール街の両方で売れる唯一のものであろう。

Harvey Wasserman's SOLARTOPIA! OUR GREEN-POWERED EARTH is at http://www.harveywasserman.com/ [1] and at http://www.solartopia.org/ [2]. He edits the NukeFree.org [3] website.

翻訳:ふくろうの会/美浜の会 翻訳協力:グリーン・アクション

(08/11/13UP)