大飯3号機の原子炉容器上蓋管台で貫通亀裂

「今後約20年間ひび割れは起きない」(関電の2002年予測)

わずか2年で貫通亀裂!
■関電の「傷の進展予測」はまったくデタラメ
■関電は大飯3号機の全ての管台をECTで詳細に調査せよ!
■大飯3号と同じインコネル600製の管台で、 10年間もECT検査をしていない
  高浜3・4号機、大飯4号機の運転を即刻停止して検査せよ!


 本日(5月6日)、関西電力は定検中の大飯3号機の原子炉容器上蓋管台から一次冷却水が漏洩していたことを発表した。関電の発表によると、上蓋管台70箇所の目視検査の準備過程で、制御棒駆動装置取付管台1本(No.47)の付け根付近に冷却水に含まれているホウ酸が付着していたことを確認したという。さらに、温度計取付管台(NO.67)の側面に付着物が確認された。関電の説明図では、この付着物は温度計管台の上部にある温度計シールハウジングから垂れ下がっているように見える。
 これらの漏れは、原子炉圧力容器本体からの漏れであり、冷却水喪失事故につながるような重大な意味をもっている。また、もし制御棒駆動装置を包むハウジングから漏れが起こると制御棒が飛び出して原子炉暴走事故につながるような重大な意味をもっている。そのため、このような部位の検査や対策には念には念をいれて万全の対策をとるべきである。ところが関電は、私たちが強い懸念をこれまで表明してきたにもかかわらず、自分の予測だけを頼りに高をくくって検査さえしてこなかったのである。
 関電はこれまでの私たちとの交渉で、大飯3・4号機、高浜3・4号機では、上蓋の温度低減化工事を行っており、管台の応力腐食割れは「今後20万時間(約20年間)は発生しない」としてきた。事実、関電のホームページにも「今後20万時間以上の運転後に発生する可能性がある」と書いている(http://www.kepco.co.jp/knic/meeting/genshiryoku/genshiro2_2.htm)。今回の大飯3号機の上蓋管台の応力腐食割れは、上記の「傷の進展予測」を関電が発表してから、わずか2年で起きた。関電の「傷の進展予測」が全くデタラメであることを事実でもって示している。
 今回の2本は目視検査の準備の過程で見つかったものである。少なくとも1本(No.47)はホウ酸の付着が確認されたことから、貫通亀裂が発生したことになる。まずは、このNo.47について、傷の大きさ等の具体的数値を確認し公表すべきである。すべての管台について、渦電流探傷検査(ECT)を行い、傷の有無・大きさ等を確認すべきである。また、No.67については、温度計シールハウジングからの漏れかどうかを念入りに確認すべきである。もしそうなら、他の同様の箇所だけでなく、制御棒ハウジングについても綿密に検査する必要がある。
 大飯3・4号機は、運転開始以来上蓋管台の応力腐食割れ検査を一度も行っていなかった(大飯3号1991年12月運転開始、大飯4号は1993年運転開始)。これまで何度も上蓋管台の検査を行うよう要求してきたが、今回初めて検査し、亀裂が確認された。
 高浜3号機では93年11月に、高浜4号機では94年1月に、上蓋管台のECT検査を行った。それから約10年が経過するが、その間ECT検査は行っていない。今回の大飯3号機は運転開始から約12年で貫通亀裂が生じた。高浜3・4号も運転を停止して即刻検査すべきである。とりわけ高浜3・4号機は関電がプルサーマルを計画している原発である。関電の「傷の進展予測」が全くあてにならないこと、同じく上蓋を取り替えていない大飯3号機で亀裂が生じたことからして、詳細な検査を行わなければならない。
 原子炉容器上蓋管台の亀裂が進めば、大量の一次冷却水が漏洩し、冷却材喪失の大事故へとつながる。2002年2月、米国のデービス・ベッセ原発では、上蓋管台から漏れたホウ酸による腐食で、圧力容器の上蓋に大きな穴があく大事故が起きた。NRCは「LOCA(一次冷却水喪失事故)寸前の事故だった」と認めている。1990年代以降、上蓋管台の亀裂が多発している。フランスでは検査した原発の7割で、米国では4割でひび割れが発見されている。ひび割れが起きている管台は、ほとんどがインコネル600製である。大飯3・4号機も高浜3・4号機の管台の材質もインコネル600である。

関電は、大飯3号機の上蓋管台の貫通亀裂の詳細な情報を明らかにせよ!
大飯3号機の全ての管台をECTで詳細に検査せよ!
漏洩を放置したままで運転再開するな!
高浜3・4号機、大飯4号機の運転を停止して検査せよ!

2004.5.6
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 
大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581