関西電力の点検姿勢についての経産省への質問
−原子炉容器上ぶた問題について−



2002年10月9日
経済産業大臣 平沼赳夫 様

 昨日(10月8日)私たちは、関西電力と主に原子炉容器上ぶた(管台)問題をめぐって交渉を行いました。その中で、現在貴省の指示に基づいて実施されている点検に関する関西電力の独特な姿勢に重大な疑問が生じてきました。
 特に指摘しておきたいことは、今回の一連の事件を受け、電力会社等に必要とされるのは、まずは不正や虚偽報告が過去にあったかどうかを徹底的に調べることです。しかし、以下に示すように、関西電力が貴省に提出した点検計画書はとてもその条件を満たすものとは考えがたく、これでは東電と同様の不正があったか否かを確認することが出来ないのではないでしょうか。
上ぶた問題については、すでに9月13日付けで貴省に追加質問書を提出していますが、いまだに回答をいただいておりません。その内容と重なる点もありますが、以下に関西電力の姿勢と上ぶた問題について質問します。前の質問・追加質問への回答とともに、早急に文書で回答してくださるよう要請します。


1. 現在供用中のものに点検を限ることについて
現在関西電力は、貴省の指示にしたがって、東京電力の不正事件のような不正などがなかったかどうか点検する作業にとりかかっています。ところが、この作業の適用範囲として「現在供用中の設備に限る」との原則を立てているというのです。これは貴省の点検指示の趣旨に反しているのではないでしょうか。
東京電力の場合は、すでに取り替えたシュラウドの検査不正も問題になっており、けっして現在供用中のものに問題が限られているわけではありません。
とりわけ関西電力は現在電事連の会長として重い責任を負っている立場にあります。そのような関西電力が、過去に取り替えたものは点検範囲からはずすというような姿勢でよいのでしょうか。この関西電力の姿勢について貴省の明確な見解を示してください。

 質問1. 今回貴省が関西電力に指示した点検は、供用中のものに限られているのですか。点検を供用中のものに限るという関西電力の態度は、東京電力の不正に端を発している今回の点検指示の趣旨に反しているのではありませんか。

2. 上ぶた管台の損傷の有無および損傷の定義について
関西電力は過去に取り替えた上ぶた管台の損傷本数をゼロと発表しています。私たちは、ヨ−ロッパやアメリカで損傷が多発しているのに、関西電力でだけ損傷がゼロということに強い疑問を感じています。
そこで、損傷がなかったとは、「ひび割れやその兆候がいっさいなかったということですか」と関西電力に聞いたところ、「問題となるような損傷はない」という回答でした。また、「ひび割れやその兆候がいっさいなかったとは言っていない」とも答えました。
このことは、非常に重要な内容を含んでいます。まずこの発言は、実際には、ひび割れやその兆候があったことを表明したものです。しかし、取り替えた上ぶたの損傷に関しては、関西電力はこれまで国に対しては「損傷本数ゼロ」と報告しています。ひび割れの存在が否定できない状態にあったことを貴省は事前に知っていたのでしょうか。
同時に、関西電力は「問題となる損傷」とは何かという問いには何も答えませんでした。独自の解釈で「問題となるような損傷」と「問題とはならない損傷」を区別しているようです。貴省は、損傷をこのように区別することに関して事前に知っていたのでしょうか。
さらに、この場合の「損傷」は、渦電流探傷装置の精度ともかかわって定義されるはずですが、貴省としてはこの損傷についてどのように認識しているのですか。

 質問1.関西電力の回答は、上ぶた管台に損傷やその兆候が存在していたことを示唆していますが、このことを貴省は知っていましたか。
 質問2.関西電力が「損傷0」と貴省に報告しているその損傷について、貴省はどのように認識していますか。「問題となる損傷」という概念を貴省はどう認識していますか。

3. 高浜3・4号と大飯3・4号の上ぶた検査について
関西電力は高浜3・4号と大飯3・4号については、インコネル600の管台をもった古い上ぶたのままで動かしています。過去に渦電流探傷検査したのは、高浜3号が1993年11月、高浜4号が1994年1月で、大飯3・4号にいたってはこれまで一度も検査したことがありません。今後もいつ検査するか決まっていないという状況です。
アメリカでデービスベッセをはじめ、オコニー3号炉での円周方向のひび割れ等、新たに上ぶた管台の損傷が大きな問題になっています。それなのに、検査さえする気がないというような態度が許されるのでしょうか。

 質問1.アメリカでの新たな問題の発生とそれに対するNRCの指示などを考慮すれば、高浜3・4号と大飯3・4号の上ぶた管台を直ちに詳細に検査しないと安心できないと思いますが、その点貴省はどのように考えていますか。

4. 取り替えた上ぶたの検査について
関西電力は、前に取り替えていま保存されている上ぶたについては、取り出して検査する気はないし、「その必要性は認められていません」と答えています。これは現在供用中のものではないし、費用もかかるし被ばくもするというのです。しかし、渦電流探傷検査の精度は、このような取り出した管台を破壊検査にかけてはじめて本当に分かるはずです。上ぶたは取り替えて終わりというのではなく、検査の対象とすべき上ぶたが現に高浜3・4号や大飯3・4号で使用されているのです。これらの管台は、問題を起こしているインコネル600で造られているのです。その管台が本当に大丈夫かどうか、精度を確認した検査法で確認しないと私たちは安心することができません。四国電力は取り出した上ぶたを検査すると新聞報道されています。

 質問1. 現在供用中の上ぶたの安全性に役立てるために、以前に取り替えていま保管されている上ぶた管台を直ちに破壊検査にかけ、ひび割れや検査精度などに関する知見をくみ出すべきだと思いますが、その点貴省はどのように考えていますか。



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