早くも「維持基準」の先取り方針を示す
関電の「原子炉容器上蓋の保全対策」



2002.11.15
 関電は11月15日、「原子炉施設にかかる自主点検作業の適切性確保に関する総点検実施報告書」(中間報告書)を公表した。しかし、肝心の原子炉上ぶた管台の問題は今回の調査対象からはずされたため、その中間報告には含まれていない。今回は同日に、「原子炉容器上蓋の保全対策」と題して番外の形で公表された。この中で最も注目すべきは、「検査の判定基準」と称して、「維持基準」の先取りのような方針を示していることである。
 この報告内容の基本的な問題点は以下の通りである。

1.「損傷ゼロ」の損傷の定義を示していない
 上ぶた管台の渦電流探傷検査(ECT)の結果、「損傷は認められませんでした」として、表の損傷本数欄にゼロを書き込んでいる。しかし、10月8日の我々との上ぶた管台についての交渉では、「問題となる損傷はなかった」を繰り返していた。その損傷の定義は今回何も規定されていない。
 また、管台はすべてが検査された訳ではない。さらに「検査数は、ECT装置の開発状況」によっても異なると訳の分からないことを言っている。

2.渦電流探傷検査の試験には限界がある
 傷があるかどうかの判定には渦電流探傷検査の精度が関係してくるが、その試験は、実機管台のように周りを原子炉容器ふたの金属材料で囲まれた条件ではなく、単独の管について、しかも軸方向の傷だけについて実施されている。これでは、実機条件や円周方向傷のある場合の検査精度は分からない。
 このような検査が信頼できるものかどうかを確認するためには、取り出した上ぶた管台を破壊検査にかけて調べる必要がある。平成9年の定検のときに高浜2号機から一つだけ管台を取り出しており、その結果「内表面にわずかな肌荒れ(深さ0.25mm)」があったと記述している。これは損傷ではないらしい。それにしてもたった一つしか調査しないのでは確たることは言えないのではないだろうか。

3.検査もせずに、今後20年以上ひび割れは起きないと勝手に予測
 古い上ぶたのままの高浜3号と4号はそれぞれ1993年と1994年に検査しただけでそれ以後は行っていない。大飯3号と4号はこれまで一度も検査していない。上ぶたの温度を下げたから大丈夫だと言うのである。しかし、これら4機とも、温度面でも運転時間面でもフランスで損傷を起こした炉の条件をすでに超えている。
 関電は、「高浜3/4号機、大飯3/4号機については、SCCは、今後20万時間以上の運転後に発生する可能性があると予測」しているが、これでは今後20年以上ひび割れは起こらないと予測していることになる。それでも、「最近の米国での議論も踏まえ、次年度以降、計画的に検査を行っていく予定です」と述べているが、いつから始めるのかはっきりしない。

4.検査もせずに「異常なし」とは損傷隠しそのもの
 上記のように、十分な調査や検査すら行わず、「異常なし」と判断することはできないはずである。さらに、上ぶた問題を今回の調査対象から事実上はずしてしまったことそのものが、大きな問題である。まさに損傷隠しと言わざるを得ない。

5.「維持基準」の先取りは許せない
 今回の報告は「解説」の「B.判定基準」において、次のように記述している。
「今後、検査で傷が確認された場合には、検査の判定基準として、次の様な考え方ができると考えています。
@ 次サイクル終了時でも、漏えいを発生させない傷の大きさ以下である。
A 次サイクル終了時でも、破壊力学による強度評価上、問題を生じない傷の大きさ以下である。(米国で運用されている維持基準の考え方)
B 次サイクル終了時でも、解析により求めた応力が、許容応力より小さくなるような傷の大きさ以下である。(国の技術基準(通産省告示第501号の考え方))
当社は、今後AまたはBをベースとして検討したいと考えています。」

 ここで、@〜Bが「検査の判定基準」であるという意味がはっきりしないが、これらの内容を見ると、傷の判定基準であるように見える。ある定検で傷が確認された場合に、それからの運転期間が終了するまでに漏えいを超えるような破壊的な事態が起こらない限り、その傷を損傷と認める必要はないとの姿勢を打ち出しているように思える。これは「維持基準」を予定した考え方ではないだろうか。
 Aの考えに従えば、漏えいがあっても運転は継続することになる。これでは、大穴の空いた米国のデービスベッセの上ぶたと同様の、実に恐ろしい事態が関電の原発でも起こり得ることは避けられない。Bの考えに従った場合でも、シュラウドですでに示されているように、実際の傷が解析の予測をはるかに超えて進展することは十分にあり得るのである。
 関電は、実施されてもいない「維持基準」を先取りする考えをここで表明している。この上ぶたの例は「維持基準」の恐ろしさを実によく示している。このような「維持基準」の先取りは断じて許すべきではない。

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