ソープ閉鎖による雇用と経済危機を案じる地元新聞に
「閉鎖は、何百人の職の損失を意味するとは限らない、他に仕事はある」
とソープ所有者(NDA)が返答


 ソープ再処理工場の事故後に報道された、「NDAはソープの永久閉鎖を望んでいる」という発言が波紋を呼んでいる(NDA:原子力廃止措置機関、ソープの所有者)。地元の新聞「ホワイトヘブン」は5月19日に、「ソープ:NDAは政治のために人々の生活をもてあそんでいるのだろうか?」という記事を掲載した。その中で、ソープには120億ポンドの再処理注文があり、ソープが閉鎖されれば地元カンブリアの雇用と経済が危機に瀕する。NDAは地元への影響をどう考えているのかと不満をあらわにした。これに対して、地元で反対運動を行っているCOREは、ホワイトヘブン紙に書かれている120億ポンドの注文という数字は過去のものであり、現在ソープにはたいした注文はないはず、経理内容を公開すべきだと反論した。
その後、5月26日のホワイトヘブン紙に、NDA会長が書簡を送った。「ソープ再処理工場が動かなかったとしても、他の施設の廃炉作業などがあり、地元の雇用に心配はない」との内容である。ホワイトヘブン紙は同日、この書簡を紹介して「ソープ再処理工場の労働者たちにとって新たな希望」と題する記事を掲載した。また、この中では、ソープの現在の注文は、当初の120億ポンドの半分だと報じている。
 ソープが閉鎖されれば地元の雇用や経済に大打撃だと主張していたホワイトヘブン紙に対し、NDA会長は「ソープの閉鎖はあり得ない」とは言わず、「ソープが永久閉鎖になっても、地元の雇用は安心」と述べている。意味深な言葉だ。

 今回は、この問題に関する4つの翻訳を紹介する。
■「ソープ:NDAは政治のために人々の生活をもてあそんでいるのだろうか?」 5/19 ホワイトヘブン紙
■「ソープの価値−『ヒステリーにではなく正直に』とCOREが要求」 5/20 CORE
■「ソープの閉鎖は、何百人の職の損失を意味するとは限らない」―NDA 5/26NDA会長がホワイトヘブン紙に宛てた書簡
■「ソープ再処理工場の労働者たちにとって新たな希望」 5/26 ホワイトヘブン紙

美浜の会 2005年5月31日




ソープ:NDAは政治のために人々の生活をもてあそんでいるのだろうか?
THORP: IS THE NDA PLAYING POLITICS WITH LIVELIHOODS ?

2005年5月19日
ホワイトヘブン紙

http://www.whitehaven-news.co.uk/news/viewarticle.asp?id=218103


火の無いところに煙は立たぬという。それがセラフィールドのソープ再処理工場の場合には、心配する理由がある。

数週間前、再処理工場のいわば最高峰であるこの工場が事実上閉鎖した際、我々は、セラフィールドにおける雇用とセラフィールドが将来生き残る可能性のみならず、西カンブリアの経済が非常に危機に瀕すると主張した。

ソープ再処理工場は操業を中止したままであり、数ヶ月間は閉鎖される可能性が高い。あるいは、ことによれば、永久に閉鎖されるかもしれない−ソープの新しい所有者(NDA)がむしろソープが閉鎖されたままであることを黙認するだろうというあらゆる推測を少しでも信じるべきだとするならば。

我々はまた、(再処理工場)前処理施設内の密閉されたセルから大量の放射性溶液を回収するという難題をBNFLは遂行することができると提案した。この会社は原子力産業の最良の人材を自由に使え、成功裏にその仕事をする自信に満ちているように思われる。この難題は、おそらく、私たちが説明を受けてきた以上に技術的に困難で、かつ費用がかかるかもしれない。

そう遠くない過去には、このようなことが起きたならば、大きな混乱もなく、いつも事態を正すことができ、規制当局NII(原子力施設検査局)の承認を受けて、BNFLが事故を起こした施設を再開することは比較的容易なことであった。

現在では全く異なる状況にある。BNFLはソープあるいはセラフィールドの所有者ではなく、所有者はNDA−原子力廃止措置機関である。しかも、この前の日曜日、オブザーバー紙上に、新しい経営者はソープが再開することを結局望んでいないとの推測が流れた。真実か?

NDA上層部の匿名の情報筋がそう言ったとして引用された。これにどのくらい信憑性があるかは不明である。真実だとすれば(これらの、いわゆるメディアのたぐいによるリークは、しばしば政治的に世論に影響を与える手段である)、私たちが指摘したように、心配する理由がある、それも多くのものがある。

ソープ再処理工場はおよそ800人ほどを雇用しているほか、この工場は全体としてそのサイトで約2000人に、そしてこの地域の企業や下請け業者に関して、おそらくさらに多くの人びとに職を提供している。

ソープ再処理工場は120億ポンドの注文台帳をもっており、これはこの工場を今後5年間稼動させるに充分である。更に、それよりかなり多くの燃料を受け入れ再処理する能力ももっている。

しかし、肝心要の問題はコストだ。

例えばもし、溶液の回収コストが数百万ポンドに達するとすれば、NDAあるいは政府が(ソープ再処理工場を)再開させるだけの価値があるのだろうか。彼らは回収コストとソープ再処理工場の今後の推定収益を秤にかけて、回収コストは採算があわないと判断するのだろうか。けれども、BNFLの顧客達が彼らの燃料を再処理のためにはるばるセラフィールドへ送りつけるために前金で支払ったすべての金はどうなるのか。そして、さらに、政府間で署名された違約条項はどうなるのか。それは払い戻さなければならない金をぞっとするほどの額に積み上げる。

NDAはこれらすべてにかなり気の抜けた反応を示してきた。NDAは気楽に言う、NDAは正規の地位になくソープが再開するか否かの最終的決定権は政府にあると。全くその通りだが、NDAはいわゆる資産の所有者である。NDAは何故、BNFLに対し、今回の漏えいの修復に最善を尽くすよう公式に要求しなかったのか。何故ソープ再処理工場が再開されるのは喜ばしいことだと表明しないのか。

NDAは単に自らの力を誇示しているのか、それとも、誰かが政治のために人々の生活をもてあそんでいるのだろうか?新しい原発計画を進めるための、より快適なクッションの役として、再処理(いわゆる核燃料サイクルの汚れた終着点)に終わりを告げることを政府は望んでいるのか。

多くの疑問はあるが答はない。私たちはこの場合について、(さまざまな憶測が)火の無い煙であることを願う。おそらく、元BNFLとNirex(原子力産業放射性廃棄物管理会社)社員であった我々の新しい下院議員ジャミー・リードは、今必要とされている政治的圧力を加えるだろう。



ソープの価値―「ヒステリーにではなく正直に」とCOREが要求
THORP Value −'Honesty not Hysteria'Call by CORE.

CORE(環境の放射能汚染に反対するカンブリア人の会)
2005年5月20日

http://www.corecumbria.co.uk/newsapp/pressreleases/pressmain.asp?StrNewsID=214


地元の団体CORE(環境の放射能汚染に反対するカンブリア人の会)は、英国原子力グループ(BNG)に、今後2、3年間のソープ再処理工場からの収入を公表するよう要求した。この要求は、工場に永久閉鎖を迫った最近の事故後に、BNGとセラフィールド労働組合が地元マスコミに出した「ソープ工場は120億ポンドの注文台帳がある」という主張*に続くものである。

COREのマーティン・フォワードは次のように述べた。

「BNGは、工場の硝酸溶液についてと同じくらい、ソープ工場の財務状況についてぎこちない態度であることは明らかである。120億ポンドとは、ソープ工場の運転開始のために奮闘していた、1993年頃にBNFLがふれ回っていた時代錯誤の数字であり、その当時の工場の注文台帳をもとにして出した数字と同じ数字である。今日では、12年が経過しており、注文台帳(ほとんどが海外顧客から)の大半は完了し、大方支払いも済んでいるので、その工場が稼ぐものとしては以前と比べて微々たる金額が残っているだけである。」

BNFLは、ソープ工場の当初の注文台帳を補強するために新規の海外契約を獲得することに失敗した。むしろ、工場の運転開始後まもなく、ドイツの電力会社が2つの契約をキャンセルし契約を失った、これは約3.3億ポンドに相当する金額以上の価値があった。ソープ工場の注文台帳に残っている注文の大半を占めるブリティッシュ・エナジー社のAGR燃料の契約については、ブリティッシュ・エナジー社を破産から救済するために政府が合意した救済政策に従って、契約金の値下げで合意したと聞かされている。

マーティン・フォーワードは今日、次のように付け加えた。

「ソープ工場の新たな所有者としてNDAは、BNGと労働組合が120億ポンドという数字をソープ工場の現在の注文台帳にある数字として不正に利用していることにすぐに気づくだろう。ソープ工場を支えるために税金が使われているのだから、我々には工場の実際の財政上の窮状を知る権利がある」。

* Whitehaven News 19/5/05, Whitehaven News Editorial 19/5/05, Carlisle Evening News & Star 19/5/05, Carlisle Evening News & Star 17/5/05



「ソープの閉鎖は、何百人の職の損失を意味するとは限らない」―NDA
'CLOSING THORP NEEDN'T MEAN THE LOSS OF HUNDREDS OF JOBS' - NDA

2005年5月26日
http://www.whitehaven-news.co.uk/letters/viewarticle.asp?id=238120


拝啓−NDAは、ソープの将来についての新聞の推測に続いて起こった地元の懸念を完全に理解しており、人々の無用の疑念を、理想的に取り去りたいと思っている。

しかしながら、私たちが政府に行動計画を提示することが可能になるよりも前に、十分な熟慮が必要である非常に複雑な一連の諸問題がある。もちろん政府が最終決定権をもつだろう。

安全性は最も重要な優先事項であり、どんな行動計画も、政府との合意に達する以前に、原子力施設検査局の承認を得なければならない。

ソープ再処理工場のような施設の閉鎖は、必ずしも何百人もの職がなくなることを意味しない。我々は、セラフィールドで請け負っている膨大な量の廃炉作業を抱えており、我々の主要な目的のひとつは、もちろん適切な訓練及び技能開発に支えられてのことであるが、西カンブリア地域の利用可能な労働人口をこの需要を満たすために利用することである

ソープ再処理工場に関する検討を終えた際、我々はもちろん、公開でかつ平明な手段で利害関係者に検討結果を伝えるであろうことを述べて、最後に私は貴紙の読者の不安を取り除きたいと考えている。

アントニー・クリーバー卿
原子力廃止措置機関 会長



ソープ再処理工場の労働者たちにとって新たな希望
NEW HOPE FOR THORP WORKERS

2005年5月26日
ホワイトヘブン紙
アラン・アーヴィング

http://www.whitehaven-news.co.uk/business/viewarticle.asp?id=238321


ソープ再処理工場の労働者たちの職は心配ないかもしれない−重要なセラフィールドの再処理工場が閉鎖されたままでなければならないとしても。

セラフィールドの新しい所有者である原子力廃止措置機関(NDA)の会長、アンソニー・クリーバー卿は、ホワイトヘブン・ニュースへの書簡の中で、雇用影響に関する下記の懸念に対して保証を与えている。

ソープ再処理工場を数週間閉鎖させている放射性溶液の深刻な漏えいの後、もし政府がソープ再処理工場の運転再開を認めないならば、ソープ再処理工場の運転に関係のあるセラフィールドの2000人分の職と、地元地域の商店や企業でさらに多くの職が影響を受ける。

しかし、(ソープ閉鎖という)推測について初めて語ったアンソニー卿は、「ソープ再処理工場のような施設の閉鎖は、必ずしも何百人もの職がなくなることを意味しない。我々は、セラフィールドで請け負っている膨大な量の廃炉作業を抱えており、我々の主要な目的のひとつは、もちろん適切な訓練及び技能開発に支えられてのことであるが、西カンブリア地域の利用可能な労働人口をこの需要を満たすために利用することである」と述べた。

一方、BNFLは、セルの床にこぼれた放射性溶液の回収を進めている。ソープ再処理工場が履行すべき120億ポンドの注文台帳の半分をいまだに保持しているにもかかわらず、この放射性溶液はソープ再処理工場の将来に疑問を投げかけた。

セラフィールドのスポークスマン、アリ・マッキビンは、「我々は溶液の回収を開始し、その作業は申し分なく進行している。我々は除去すべき83立方メートルのうち12立方メートルを取り除いており、今週末頃次のバッチを除去しはじめるその前に、この回収溶液はサンプリングされ、分析されるであろう」と述べた。