BNFLは、クリプトンに関する勧告を無視
放射性ガスはいまだに大気中に放出されている


ガーディアン 2001年1月22日 月曜日 ポール・ブラウン環境特派員



 BNFLは、ガンをひきおこすクリプトン85を、放出禁止を命じられた後も、20年以上にわたって、放出し続けている。また、BNFLが、日本の企業に同じこと(クリプトン85の放出)をするように説得していたことが明らかになった。
 核分裂による副産物(生成物)、クリプトン85は、カンブリアのソープ工場で使用済み燃料が再処理されると、煙突を通って放出されている。英国放射線防護委員会によれば、BNFLは、年に25万テラ・ベクレルの放射能を放出しており、これは、年に2人の不治の皮膚ガン患者と100人の他のガン患者を生み出すのに十分な量であるという。
 当初は、1977年のソープ工場建設の最初の調査で、ジャスティス・バーカー氏によって、BNFLはクリプトンを回収するよう命じられた。新しい施設が建てられた1994年に、BNFLは、クリプトンを回収するには、5000万ポンド(約87億円)の費用がかかるので受け入れられないとイギリス政府を納得させた。
 BNFLは、まったく窮地を抜け出せず、実行可能なクリプトンの回収方法を見つけることと、毎年、進捗状況を報告するよう命じられた。それ以来、毎年10月に、BNFLは、技術がないと報告をし、他の人々の調査を再検討するための猶予を環境省に求めている。
 BNFLはまた、日本に建設中の工場[六ヶ所村再処理工場]に、競争相手がクリプトン85の回収装置を設置しないよう促すことに成功したことも明らかにしている。
 BNFLの広報シニア・アドバイザーであるルパート・ウィルコックス・ベーカー氏からの1996年のメモを、ガーディアンは入手した。なぜなら、BNFLが今年、「薄めて、分散させる」という方針の継続を環境省に認めてもらうために、正式に申請をだしたからである。この方針は、高い煙突から北イングランドに希ガスを放出することを許すということである。
 1996年3月22日付、ソープ工場の経営部長であるマシュー・シモンズ氏宛のウィルコックス・ベーカー氏のメモにはこう書かれている。「我々が日本原子力燃料株式会社に、クリプトン85について、売ったり、提供できるものは、商業上の決断である。しかし、我々がしなければならないことは、日本原燃がクリプトン85除去装置を設置しないように説得することである。なぜなら、日本原燃が除去装置を設置すれば、我々自身の立場を危うくすることになるからである。
 彼はまた、日本は「クリプトン85を回収することは、環境に放出すより受け入れられないという、安全性や環境に関する情報」を取り入れなければならないと書いている。
 まだ完成していない日本の工場は、BNFLの助言の結果、ソープ工場と同じくらいの量のクリプトンを大気中に放出することになるだろう。日本企業は、BNFLがイギリス政府に最初に出した理由と同じ理由をガーディアンに対して使った。「商業技術として適切ではない」と。
 BNFLは、リークされたメモについてコメントしないが、クリプトンを回収するよりも放出するほうがいいというBNFLの立場は変わらないと述べた。「クリプトンは食物連鎖に入りこまない不活性ガスである。個々人への被曝線量は、非常に小さい」とスポークスマンは述べた。クリプトンを回収すれば、問題が出てくる。なぜなら、クリプトンは気化しやすいし、圧力をかけ続けなければならないため、労働者と工場にとって危険だからだ。だから大気中に薄めて分散する方がよいということである。
 「環境の放射能汚染に反対するカンブリア人の会」(CORE)のマーティン・フォワード氏は、「BNFLは、この問題の解決策を講じるのに20年も与えられていた。適切な資金と人材をつぎ込んだうえで、解決策を講じられなかったとはとうてい思えない。メモからは、クリプトン除去装置が存在するにも関わらず、日本企業に除去装置を設置しないように説得しようとしていることがわかる。BNFLは、クリプトンの影響から地球環境を守るつもりはなさそうである」と述べた。
 環境省のスポークスマンは、BNFLのクリプトン85を含む放射能は、環境省の規制により監督されていると述べた。



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