セラフィールドの放射能漏れで3億ポンド(約600億円)の損失
Sellafield radioactive leak to cost £300m

生き残りに不可欠な工場の閉鎖で、揺らぐ英国原子力産業

ポール・ブラウン 環境担当記者
2005年6月13日(月)
ガーディアン

http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,3604,1504985,00.html


カンブリアのセラフィールド再処理工場で大量の放射性溶液が漏えいしたため、工場は数ヶ月を超えて閉鎖され続けることになり、英国のクリーンナップ計画は今年の収益だけで少なくとも3億ポンドを失うことになる。これらが昨日明らかになった。

機能不全に陥った、18億ポンドをかけて建設された原子力産業の"旗艦"は、5年間で25億ポンドを稼いで、これまでの核廃棄物のクリーンナップのために資金を供給すると見積もられていたが、閉鎖中はいっさい貢献することがない。

そうこうしている間に、ソープ再処理工場を安全にするためには、さらに数百万ポンドを要し、おそらくそれはクリーンナップ予算から引き出されることになる。

その後の修理には、たとえそれがどうにか実行可能だと判明したとしても、なおさら多くの費用がかかる。そのため、新しい所有者NDA(原子力廃止措置機関)−4月1日にセラフィールドの資産を引き継ぐために政府によって設立された機関−は、ソープを再開すべきかどうかを検討せざるを得なくなった。NDAは、工場の将来を既に再検討していることを認めてきた。

ガーディアン紙が、照射燃料から取り出された22トンのウランやプルトニウムが溶けている83立方メートルの硝酸溶液がソープ工場の内部作業空間に破損配管から流出したことを初めて伝えたこの5月以来、工場の補修にどのくらい時間がかかるのかについての見積もりは、かなり長くなってきている。

非常に危険な溶液は、現在、少量に分けて工場から貯蔵タンクにポンプでくみ出されつつある。会社の説明では、この作業が完了するにはもう2週間かかり、それから損傷した配管を修理する方法をひねりださなければならない。その区域は非常に放射能が強く、人が入れば死ぬほど汚染されているので、修理はロボットを用いてのみ可能である。

4月1日からNDAに代わって工場を管理するために、国営のBNFLがつくった英国原子力グループ(BNG)は、漏えいは早くも昨年8月に始まっていたが、運転員はそのことに4月18日まで気付かなかったことを認めた。18日には、既にオリンピック競泳プールを半分満たすのに充分な溶液が失われていた。

会社は計器の欠陥を非難したが、工場の労働者が、何か異常な事態に陥っていることに気付く機会を何度も逃したことをも事実として認めた。

政府の安全監視役である原子力施設検査局(NII)は独自の調査をまだ完了していないが、この調査に基づき起訴がなされる可能性がある。労働者へのあらゆる危険を防止するためにも、そして同じような問題が再び起きないことを確実にするためにも、NIIは安全側に立って修理計画を許可しなければならない。

BNGの常務取締役であるバリー・スネルソンは先週、ソープの漏えいは「つまずきであって転倒ではない」と見なしていると語った、そして、失業を恐れている労働者たちに、工場の再開を確信していると安心させた。

「ソープが再開することを私は確信しているが、決定は私たちではなく、NDAと政府にかかっている」

「所有者としてではなくむしろ操業者としての私たちの役割は、ソープを復旧させ安全に再稼動させる能力があることを示し、経済上の利益が何であるかを明らかにすることである」と述べた。

これはNDAが4月1日に新しい所有者になって以来の著しい変化である。セラフィールドはなお実質的には政府所有であり、そこで何が行われるかは最終的には大臣たちによって決定されるとしても、NDAにまず正当性を示すことなくしては、BNGは金を使うことができない。

以前は、BNFLは(独自に)金を使ったし、最も献身的な核の監視者でさえ、会計の検査から金がどこへ行ったかを解きほどくことはできなかった。

CORE(環境の放射能汚染に反対するカンブリア人の会)のマーティン・フォワードは、NDAの最高責任者であるイアン・ロックスブローに手紙を書き、ソープを直ちに閉鎖することを要求し、閉鎖のさらなる遅れは納税者への負担を増加させ、クリーンナップ計画を遅らせるだけであると指摘した。

NDAは精力的にソープの将来を再検討しているとロックスブロー氏は返答した。

フォワード氏は次のように述べる:「ソープが行うことはウランとプルトニウムをますます多く生産することだけである。再処理されていない燃料の大部分を保有するブリティッシュ・エナジー社は、この物質を使用する可能性がないことを言明している。ここには論理がない。常識では、ソープは今閉鎖されるべきである。」


訳注:この記事は、ソープ再処理工場の事故により、原子力廃止措置機関(NDA)が進めるクリーンナップ計画に3億ポンド(約600億円)の不足が生じると報じている。4月中旬に明らかになった事故から既に2ヶ月間、ソープは運転を停止している。今後数ヶ月間の停止が見込まれているという。少なくとも5〜6ヶ月の運転停止は必至の状況である。もちろん、その後どうなるのかも全く不明である。
 NDAは当初、今年度分として、ソープの収入から5.6億ポンドをクリーンナップの費用に当てることを予定していた。ソープが5〜6ヶ月間停止するとして、5.6億ポンドの約半分にあたる3億ポンドが見込めなくなるということのようだ。
 また、この記事の中で強調されているように、ソープがNDAに移管されたことによって、元の所有者BNFL(現在はBNFLの子会社であるBNGがソープを運転)は、勝手に金を使えなくなっている。NDAの許可なしには、修理等も進めることはできない。