運転再開さらに遠のく 英国・ソープ再処理工場
修理方法が決まらず─昨年4月の配管破断・大量の高放射性溶液漏えい事故


[紹介]
 ソープ再処理工場の運転再開が極めて困難になっている。運転会社である英国原子力グループ(BNG)は、当初は昨年12月に再開できると考えていたが、昨秋には再開時期を2006年3月に延ばすとしていた。さらに、2006年末もしくは2007年初めまで再開できそうにない実態をCOREが紹介している。
 ソープでは昨年4月に配管が破断し、大量の高濃度の放射性溶液が漏えいする大事故が起きた。放射性溶液は回収されたが、破断した配管等の修理方法がいまだに決まらないことが最大の原因である。BNGは、規制当局である原子力施設検査局(NII)に修理方法をいまだ申請できずにいる。いったん事故が起きれば修理さえできないという再処理工場の事故の深刻さを示している。アクティブ試験に突き進む六ヶ所再処理工場もこのままでは同じ轍を踏むとしか思えない。ソープを教訓とすれば、六ヶ所再処理工場は運転すべきではない。


[翻訳資料]
ソープ再処理工場は再開のさらなる延期に直面している
THORP facing further delay to re-start.

コア・プレスリリース 2006年1月30日
(CORE:環境の放射能汚染に反対するカンブリア人の会)
http://www.corecumbria.co.uk/newsapp/pressreleases/pressmain.asp?StrNewsID=221


18,000リットルの高レベル放射性硝酸溶液の漏えいを伴った大事故の後、昨年4月に閉鎖されたセラフィールドのソープ再処理工場は、最も早くても今年末までは再開しそうにはなさそうだ。原子力廃止措置機関(NDA)に代わってソープを運転している英国原子力グループ(BNG)は、昨年5月から多くの修理方法の選択肢について評価を進めているにもかかわらず、BNGは原子力施設検査局(NII)の許可を得るために、好ましいとする選択肢をいまだNIIに正式に提出していない。

BNGはNDAに修理計画を提出する前にNIIの許可を受けなければならない。工場の所有者としてNDAは、再開計画を検討する次の機会が3月の理事会まではないことを確認している。たとえ理事会で是認が与られたとしても、BNGが今のところ好ましいと考えている修理方法の選択肢は遂行するのに何ヶ月もかかり、あらゆる局面で間断なくNII検査官の厳密な調査を受けなければならなくなる。それゆえ、修理は最も早くても秋より前に完了しそうにないし、今年末までもしくは2007年初めの再開もありそうにない。

ソープの事故に関するNIIの正式な調査−それによれば、BNGが多くの訴追に直面すると考えられる―は既に終了しているが、健康安全局(HSE)によるさらなる調査をまだ受けなければならない。調査結果の発表はかなり長い期間予定されていない。政府レベルでは、ソープの将来はすでにNDAと閣僚達の間の議論のテーマになっている。

コアのスポークスマンであるマーティン・フォワードは今日、次のように述べた。「ソープの修理方法の選択肢はBNGにとって自ら招いた悩みの種だ。目の前に技術上、規制上、費用面での多くのハードルを抱えているため、工場は再開にはほど遠い。閉鎖が長引けば長引くほど、NDAの帳簿と英国の債務はますます増えることになり−そして運転再開擁護論はますます弱いものになる。我々は、英国の納税者の利益は、ソープの息の根を止めることによって最も満たされると信じている。」

当初の再処理スケジュールから既に3年遅れており、今では4、5年遅れになろうとしている。昨年4月に閉鎖を強いられた時点で、ソープはベースロード(最初の10年間の操業)契約分のうちいまだ約1250トンの再処理すべき燃料を持っていた。約700トンが欧州の顧客からの軽水炉燃料で、約500トンがブリティッシュ・エナジー社(BE)のAGR燃料である。さらに多くの燃料について、ほとんどがBEからのものだが、すでに次期(ベースロード後)の契約がなされている。

ソープの修理方法の選択肢には、供給清澄セル内に位置する2つの計量タンクの1つにつながっている破断配管を修理する様々な方法、もしくは配管と影響を受けたタンクの両方を迂回させるという方法がある。多くのことが、2つの計量タンクを支えていた鉄製枠に硝酸溶液がかかったことによる損傷の程度と、セル内に残っている配管の頑丈さの信頼性のレベルによって決まる。BNGが今までに好ましいとした選択肢は、破断配管とタンクを迂回するものだったが、この修理方法をNIIに正式に提出するのが遅れていることは、全面的な再検討もしくは大幅な変更が必要になったことを示唆している。NDAが昨年、ワシントン・グループに依頼した、すべての修理方法の選択肢についての技術的評価は、BNGが好ましいとする修理方法には危険性があり、もし解決されなければ、「結果としてソープの運転再開は著しく遅れることになる」と結論付けた。