内部告発
使用済核燃料輸送容器の定期検査遅延問題に関する

運輸省・科技庁交渉の報告


 内部告発のあった使用済核燃料輸送容器の検査遅延問題について、初めに運輸省、次に科技庁との交渉を、12月13日午後1:00〜3:50にわたって、参議院議員会館で行った。どちらの交渉も、内部告発で当会に寄せられた「運輸省メモ」、「注意文書案」、「科学技術庁メモ」などを相手に示し、その内容を一つひとつ確認するようなやり方で進めていった。
 この交渉の当面の実践的目的は、運輸省に対しては柏崎刈羽3号へのMOX燃料輸送の中止、科技庁に対しては12月18日に差し迫っている六ヶ所への使用済核燃料輸送の中止を求めることであった。
 運輸省からは海上技術安全局検査測度課から伊藤課長、吉海審査官、藤田係官が出席した。この課は告発文書に登場するまさにその課である。肝心の上園氏は海外出張とかで顔を見せなかった。科技庁からは、「科技庁メモ」に登場する原子力安全局の核燃料規制課から東審査官が出席し、肝心の田村室長は何かの用事とかで出席しなかった。他に原子力安全課から真先課長補佐が出席し、こちらが主に応答したが、この人は7月にこの分野に来たため今年1月13日の「科技庁メモ」の内容を知るはずもなく応答がちぐはぐになる場面があった。
市民側からは美浜の会の他に原子力資料情報室、グリーンピース、グリーン・アクション、ふくろうの会など合計15名が出席。新潟県刈羽村と福島県からも参加があった。福島瑞穂議員秘書の竹村氏と北川れん子議員秘書の文殊氏が同席された。

運 輸 省 交 渉
◆26基以外に検査がなかったかは未確認。廃止容器もまた使用できる
 検査の遅延が起こった容器の数が26基以外にもあるかどうかは未確認とのこと。廃止届けがだされたから調べなかった。廃止届けは運輸省が指導して出させた。廃止届けという最も厳しい措置をとらせたのだと運輸省は強調。それなら、廃止届けが出された容器は今後いっさい使わせないのか。ところが、廃止届けが出された容器は、安全性さえ確認されればまた使用することを認めるとのこと。これで厳しい措置とはどういうことかと皆で追及。廃止届けが問題を隠すための隠れ蓑であったことがこれではっきりした。
◆電力の管理責任、運輸省の監督責任は基本的に認める
 運輸省の局長通達は日本の電力事業者に出されており、定期検査に関する管理義務が日本の電力にあることは、いろいろと留保条件に言及しつつも、基本的に認めた。その電力に対する監督責任が運輸省にあることも基本的に認めた。
◆事前に「注意文書案」を電力に流したのは準備のため?!
 今年1月13日と1月21日に、この問題で電力側と会合をもったのは事実。電力の人が書いた「運輸省メモ」の内容も事実であり、それが当時の運輸省のポジションであることは実に素直に認めた。電力に宛ててだされた「事業者に対する注意文書案」も事実であると認めた。
 このような注意文書案を事前に流すのは慣例なのかに対して、冒頭では「今回の件は反省しています」と述べたものの、後ではそのような内容を事前に知らせて準備をさせる必要があるとむしろ強調した。3名に対して局長から注意がなされたのは、局長名の文書を局長が知らない間に外(電力)に出したからだとのこと(本当か、トカゲのしっぽ切りかも?)。
◆電力の管理に欠陥はあったが、報告書はない
 それでは、その「注意案」の中で電力に対して要求している内容はどうなったのか。そこでは、「今回の自主検査の遅延は、輸送容器の自主検査に関する貴社の管理体制が適切でなかったことにより発生したものであり」との認識に立って、この件の報告をするよう求めている。つまり電力に管理体制の欠陥があったと認めているではないか。その報告はその後どうなったのか。この問に、はじめは「随時来ております」と何度も答えていたが、最後にそれではその報告書を公表してもらいたいと言ったとたんに、「そのような文書はありません」で一同あきれはてた。結局言葉ではあいまいに電力の責任を認めながら、それを厳しく問いただす姿勢は全く何もないことが明らかになった。これでは、輸送容器一般の安全性は保証されない。
◆1月には廃止届けを出させて公表のつもり、後では廃止届けを理由に公表はなし?!
 1月時点ではこの件を公表するスタンスでいたのに、なぜ公表をやめたのか。これに対しては、使用廃止届けという最も厳しい措置をとったために安全上の問題は何もないからだと回答。ところが、「運輸省メモ」には、廃止届けを出させた後もプレス発表とあるではないか。この追及に対しては何も答えることはできなかった。
◆電力の管理体制自体に問題があったのだからMOX輸送は中止せよ
 電力の管理体制に欠陥があることが明らかになったのであり、それは体制の問題である以上すべての容器の管理に係わる問題である。だから、その欠陥について電力から報告書を出させて問題点と改善点を明らかにするまでは、柏崎刈羽へのMOX燃料輸送を中止すべきであると我々は主張した。柏崎刈羽からの参加者は最後に力強く、このあきれはてた癒着体質を鋭く批判した。
◆「私たちは原子力推進の立場ではない」のにとぼやく
 時間切れで、次の科技庁が来て待っているためお引き取り願おうとしたが、運輸省の3名は何か後ろ髪を引かれる思いがあるらしく、「私達は別に原子力推進の立場でも何でもありませんで」などとぼやきながら、なかなか立ち去ろうとしなかった。

科 技 庁 交 渉
 科技庁管轄で検査の遅延が確認されているのは、コジェマにある中部電力の1基だけである。このことが交渉でのやりとりを複雑にした。
◆検査遅延の届けは1基だけ、後は未確認
 科技庁管轄で遅延があった容器は1基だけか。科技庁、1基だけだ。他にないことを確認したのか、運輸省は26基以外にないことは確認していないと言っているが。「そうですか」と不思議そうな顔。確認できていないことが確認できた。
◆事故による遅延だから通達違反でない。しかし施設が使えない状況だったかは調べていない
 遅延が起こったのは科技庁の局長通達違反と捉えているか。いや、この1基の遅延は、それが置かれていたコジェマ社の施設での人身事故のために起こったやむを得ないことのためで、わざとやったことではないから通達違反ではないとのこと。その施設は9月24日の事故の後閉鎖されて11月11日に再開しており、この容器の検査期限は11月30日で実際の検査は12月9日になされている。つまり施設の再開から期限まで約20日間がある。にもかかわらず、この遅延がやむを得ないものであったとどうして断定できるのか、それを調査したのか。そこまではやっていないとのこと。1基だけとの確認もされていない。なのに、「通達違反ではない」と断定する科技庁の甘い姿勢は許せないと我々は強調した。
◆安全性を守る安全局の立場に胸を張り、追及されると「私の管轄は1基だけ」
 内部告発資料の「科学技術庁メモ」について、これは科技庁の考えを表していると見てよいか。「そのとおりです」と最初は答えた。このメモには冒頭に電力からと思われる2つの報告資料の名前が出ている。ひとつはこの問題の包括的な報告であり、他の1つは中部電力からのもので、科技庁管轄のものである。科技庁が示したポジションの中に、BNFL社の品質管理、対応の仕方を批判している箇所が複数ある。例えば「BNFLはパートナーとして問題がある」等。
 これら事実に即して判断すると、この問題に対する科技庁のポジションには2つあって、
@安全局として、この問題全般を捉えて検討するという立場
A中部電力の1基という直接管轄にある問題を扱う立場
ということになるが、そういう理解でよいか。科技庁の真先氏は、そのとおりということで、安全性一般に責任をもっている立場をずいぶんと強調した。
 ところが電力の通達違反、管理責任を問題にすると、たちまち上記Aの「1基だけ」でこれはやむを得ないものと逃げ込む。さらに、輸送容器に関しては許認可の法体系上科技庁に主要な責任があるではないかと鋭く追及されると、それは認めながらも「だけど1基だけ」にまた逃げ込むのであった。
◆科技庁は何もしなかった
通達違反ではないのに14基について廃止届けが出されていると指摘すると、それは電力会社が自主的に出したものだとのこと。自主的に出したので、科技庁としては注意も出していないし、報告も求めなかったと平然。結局この問題で科技庁はいっさい何もしなかった。
◆最後の逃げ込みは「私は7月にこの部署に来たばかりでわからない」
 科技庁メモでは、1月13日時点ではこの問題を公表する姿勢でいたのに、どうして公開しないように転換したのか。これに対して真先氏、そのメモでは通常の慣例的な資料公表のことを言っているだけだ。いや、この件で公表すると書かれている。真先氏、そのメモは電力の人が書いたものに過ぎないから信頼できない(と初めに確認したことを平気で覆す)。原子力にいろいろ問題があることを認めているのだから、このような問題が起こった場合、積極的に公開する姿勢をとるべきではないのか。私は7月にこの部署に来たばかりなので、そのメモに書かれていることについてはよく分からない。このように真先氏は、はなはだしく無責任で支離滅裂であった。
◆検査日の改ざんの可能性も把握していない
 問題としては、検査の遅延だけでない可能性があると、検査日について検査施設の日付と日本の電力が把握している日付にギャップがあると日付をあげて問いただすと、科技庁はそのことを一切把握していなかった。このギャップは検査日の改ざんを示唆している可能性がある。
◆定期検査の日付を聞くと「輸送前検査日は答えられない」−−非公開の染みついた体質
 今度、福島第Uと東海第Uから六ヶ所に使用済核燃料を運ぶ輸送容器について、定期検査の日付等は確認しているのか。この問に対し科技庁の東氏は、使用前検査の日付を聞かれたと勘違いして、それをいうと何時運搬するかが分かるから答えられないと答えた。この答え自身問題だが、定期検査の日付や場所についてはまったくどうなっているかさえ答えられなかった。これは後で回答を出すことになった。
◆六ヶ所への輸送は中止すべき
 最後に我々は、このような管理上の問題が明らかになった以上、検査の遅延が問題になった容器だけに限らず、輸送容器全般の管理がどうなっているか、その安全性に我々は不安をもつ。今回の問題が明らかにされるまで、六ヶ所への輸送は中止すべきだと主張した。これに対して真先氏はじっとこちらを見たまま聞いていたが、結局何も反論しなかった。



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