文部科学省からの回答について


 JCO事故に関する回答が文部科学省から返ってきました(2月6日受取)。
 今回の回答の全体的な特徴は、これまでの「調査中」「整理中」から、「自分達は知らない、他に聞いてくれ」と無責任極まりない姿勢に転じたことにあります。文部科学省が管轄する核燃サイクルと原研に関する部分以外については、「JCOに直接聞いてくれ」「安全委員会に聞いてくれ」というものです。
 その端的なものが、夕方4時30頃のγ線のピークに関する回答です。ピークの原因については、安全委員会の事故調資料を引用し、「放出放射能のせい」としながら、その根拠については、「安全委員会に聞いてくれ」というものです。こんな無責任な話があるでしょうか。
 省庁再編を渡りに舟と、国は一層の責任逃れを決め込もうとしています。

◆中性子線の値が低いのは「遮へいのため」とついに認める
 核燃サイクルが10月1日の夜中1:58から、事務棟2階で測定した中性子線のデータは低い値を示しています。同じ核燃サイクルが9月30日の23:15に測定した値の約半分です。回答では、高い方のデータは「窓越しに転換棟の方向を指しながら測定した最大値」で、事故評価に使われた低い値は「事務室内の机上に設置して測定したため、壁の遮へい効果等」で差が出たとしています。
 この低い値は国のフィッティング式によくあっています。フイッティング式が、実際に放出された放射線量を反映せず、遮へいの効いた過小なものであることを、今回の回答は認めたことになります。
 国が行った周辺住民の被曝量算定では、このフイッティング式を基にして、さらに家屋の中に居た場合等々で値切られています。住民の個人線量は2重3重に値切られていることになります。線量評価をやり直すべきです。

◆本米小学校の写真は、「協力会社の職員が上司の指示をメモしているもの」?!
 夕方4時10分に写された本米崎小学校でのモニタリング車の写真に関して、手の込んだ「新説」が出てきました。@写っている車は「モニタリング車3」A「要員交代のために小学校に行ったときのもの」「測定をしているところではない」「協力会社の職員が作業リーダーからの指示をメモしている」と答えてきました。私たちはこれまで一貫して本米崎小学校での測定体勢のことを問題にしてきました。今まで、こんな話は聞いたことがありません。写っているのは、測定をほとんど行わず「人や荷物の運搬をしていた」モニタリング車3だというのです。
 あくまで、4時3分〜4時54分までは測定していないというのです。それでは、なぜわざわざ要員交代が必要だったのか、どのような指示を行ったのか等々を具体的な根拠をもって説明すべきです。

◆手書きの「測定場所の資料」は残っているが、測定データは処分した?!
 回答の資料として、本米崎小学校での測定場所を手書きしたものが添えられていました。これは、事故当日の16時3分に「衛生通信ファックス」なるもので、モニタリング車からサイクル機構東海に送られたものだといいます。
 この手書きの「衛星通信ファックス」は残っていても、重要な測定データ(モニタリング車B車による本米崎小学校での測定データ)の生データは、「資料整理の時処分した」というのです。
 重要な生データは処分したが、手書きの地図は大事に保管していたというのです。とうてい信じられません。本当であったとすれば、重大な証拠隠滅であり、彼らに原子力を扱う資格なんてありません。

◆生データは紛失し、国に提出したのは「誤記データ」
 B車のデータとして国に提出されたものには、あるべき時刻のデータが載っていません。この原因は「とりまとめの際に、何からの原因で時刻の誤記が生じたもの」だそうです。生データがない以上、それが「誤記」だったのか、わざとデータを隠したのか、これでは説明になりません。

◆風は14時〜17時の間ずっと西向き、なのに16時半前後のガンマー線ピークは風のため?
 那珂研のMP1、MP2のガンマ線データは4時半頃に最大のピークを示しています。この原因については、「最終報告書」を引用して「放出された希ガスが風向きによりモニタ付近まで達したことによるもの」と回答しています。しかし、回答に添付されている気象データによれば、昼の2時〜夕方5時前まで、風はずっと東から西に吹いています。そうなると、「なぜ4時半前後にだけピークが現れたのか」の説明にはなりません。4時半前後だけ風が西から東に吹いていたというのなら別ですが、風はずっとその方向に吹いていたのです。納得のいく説明を行うべきです。

◆エリアモニタは固定観測局のモニタリングポストに比べて近距離
 このエリアモニタのグラフの形は、バースト部・プラトー部の算定の基礎、また放出放射線の算定の基礎にもなっています。エリアモニタは3台ありました。事故評価では粉末貯蔵施設のモニタ値が採用されています。その理由は「事故現場から近距離あるから」とされていました。しかし、実際には他のモニターの方が近距離にあったのです。これに関する回答は、「近距離にあり」は「固定観測局等のモニタリングポストに比べて近距離だという意味」だと言うのです。なんという言い逃れでしょうか。当たり前ではありませんか。エリアモニタは室内にあり、固定観測局は数キロ離れたところにあります。なぜ他のエリアモニタの値を使わなかったのか、全てのエリアモニタのグラフを公開して説明すべきです。

◆またまた高いデータが出てきた
 15:30 ゴルフ練習場北側道路上 12μSv/h
 15:41 ゴルフ練習場入口    19μSv/h
 これはガンマー線の値は、フイッティング式の3〜4倍も高いものです。場所はJCOから約500メートル北西です。目撃証言を基に、時間と場所を指定してデータを問い合わせて初めて出して来るのです。出てくるデータは高い値ばかりです。やはり重要な事実を隠しているとしか考えられません。



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