JCO臨界事故──本米崎小学校で
「測定車は小学校にいなかった」(核燃料サイクル機構)時間に
防護マスクを付けて測定していた

政府の線量評価は欺まんだらけ


    
茨城県那珂町の本米崎小学校の入り口
                 写真:産経新聞社

 6年前の9月30日、JCO臨界事故。裁判では、国の線量評価が争点の一つになっている。事故後から政府の事故調査委員会などが発表した放射線測定値には、大きな疑問があった。測定値が変われば当然被曝線量も変わってくる。核燃サイクル機構(旧動燃)は、定点観測としてJCOから約700メートルの位置にある本米崎小学校でガンマ線の測定を行っていた。ところが、15時30分〜16時55分の間、まったく測定値がないというのだ。私達はその時間帯に撮影された、しかも防護マスクまでつけている写真を最近入手した。これは、当時公表された測定データ・測定体制、そしてそれらを元に政府が出した極めて低い線量評価の欺瞞性を改めて問うものである。
 写真には、核燃サイクル機構のマークの入ったヘルメットをつけ、測定車内で防護マスクをつけた3人が写っている。事故当時、本米崎小学校の子ども達は、防護マスクをつけて測定している人物を見て恐怖心を抱いた。

■ 「小学校を出た後」の時間に、防護マスクをつけた測定者がいた
 この2枚の写真は、本米崎小学校の入り口(体育館横と推測できる)で撮影されたもので、時刻は、写真1が15時34分、写真2が16時10分。実はこの時間、政府も核燃サイクル機構も小学校では測定していなかったと言っていた。核燃サイクル機構は「学校関係者に車を移動してくれと言われ学校から出た」と言っていたが、「被害者の会」の調査では、校長も教頭も「そんなことは言っていない」と話している
 事故後に行った交渉や質問書への回答などで、「測定車Aは16時3分には小学校を出た」「16時3分からB車が測定を始める16時55まで、測定車は学校にいなかった」と答えている。しかし写真は、測定車がいないはずの16時10分に写されている。

■ 子ども達が集団下校した16時30分前後の高い測定値を隠しているのではないか
 ガンマ線の測定は、A車ではわずか6回のみだ(B車ではほぼ10分おきに測定されている)。最後の測定が15時30分。15時34分に写された写真1には、ペンをもつ人物も写っているが測定はしていなかったのだろうか。彼らは車内で防護マスクをつけているが。
 写真1は、測定車の後ろから写されたものだが、車内には核種分析のための試料収集器やプリンターが写っている。プリンターの後ろにケーブルが繋がれているのが見える。しかし核燃サイクルは「プリンターの電源を入れていなかった」と述べていた。これが本当だとすれば極めてずさんな測定である。彼らが「もんじゅ」の運転再開や、そして六ヶ所再処理工場の技術支援を行っていることを考えるとぞっとする。
 政府の調査報告書等では一切隠されていたが、当時小学校のPTAで配布された資料では、16時30分の測定値が存在し、非常に高い値を示していた。また、16時30分頃に茨城県の測定した小学校付近のガンマ線のデータは、10倍にも達していた。中性子線はさらにその数倍となる。そして子ども達は、4時半頃に集団下校している。測定が6回のみとはとうてい信じられない。

■ 測定車は、体育館で遮蔽された線量を測定していたのか
 写真1では、測定車のフロントガラスに建物の窓が写っている。2000年に私達が行った現地調査の資料と見比べると、この測定車が体育館横にいたことが分かる(核燃サイクル機構が回答してきた測定位置も体育館横になっている)。測定車は、体育館で遮蔽された線量を測定していた可能性が高い。高台に建つ本米崎小学校では、子ども達の居た教室は、ガラス越しにJCO建物の方角を向いており、ほとんど遮蔽物はない。測定車は体育館のかげで、遮蔽によって低くなった線量を測っていたことになる。それでも防護マスクを付けていた。

■ 国の線量評価は欺瞞的
 このように、2枚の写真は、政府や核燃サイクル機構がこれまで述べていた本米崎小学校での測定に大きな疑義を与えるものだ。それは同時に、国の被曝線量評価が欺瞞的なものであるということの新たな傍証でもある。彼らがウソを重ねるほどその虚構はいつかはぎ取られていく。国の被曝線量評価を改めて問い直していこう。

■ 裁判闘争を支援していこう
 事故から6年、提訴から3年。JCO裁判は11月16日の次回法廷から、いよいよ証人調べが始まる。原告2名の健康被害と事故の因果関係を証言する4名の医師が証人採用された。JCO側は、国の線量評価が「中立的なもの」であるとして、線量評価や中性子線の危険性などを主張する証人は採用しないよう強弁している。健康管理検討委員会の委員(主査代理)であった佐々木正夫氏は研究論文で中性子線の危険性が従来考えられていたよりも数倍高いことを指摘している。しかしJCOは、わざわざ「佐々木見解」は受け入れられないと名指しで準備書面で批判し、中性子線被曝の危険が裁判で争われることをなんとかさけようとしている。裁判闘争を支援していこう。

2005.9.30