東海村臨界被ばく事故裁判 1月20日第4回控訴審傍聴報告
特別抗告を無視した審理打ち切りと強引な結審
「裁判所の判断がどうであれ真実はこちらにある。最後まで闘いたい」(原告)

 1月20日午後3時30分、東海村臨界被ばく事故裁判の第4回控訴審が東京高裁822号法廷で開かれた。今回も多くの支援者が詰めかけ、約50の傍聴席は埋めつくされた。

 前回の第3回控訴審(08年10月2日)において、原告側は裁判官の忌避を申し立てた。新証人の採用を裁判所が拒否し、結審の判断を下そうとしたためである。東京高裁は一貫してJCOの側に立ち、早期に審理を打ち切るため、強行な訴訟指揮を行ってきた。忌避は、これに歯止めをかけるための最後の手段だった。しかしその後、高裁は忌避を却下。原告側は対抗手段として最高裁に特別抗告をおこなった。特別抗告に対する最高裁の判断は未だ出されていない。最高裁の決定が出ていない以上、これを無視した訴訟の進行は許されるべきではない。ところが11月に入って高裁は、忌避却下は確定しており、特別抗告に手続きを止める力はないと通告。強引に今回の第4回法廷の期日を押し付けてきた。

 今回の法廷は、原告側と被告JCO側の準備書面の採用の確認から始まった。まず、原告側の伊東弁護士が、「JCOの反論にはまったく正当性がない」と口火を切った。JCO側は、原告大泉昭一さんの被ばく被害に関する原告側準備書面に対する反論として、11月末に準備書面(4)を出してきた。その中でJCOは、しきい値の定義および健康状態にない皮膚に対する放射線影響の考え方について、原告側の主張を意図的にねじ曲げた上で、的外れな非難を行っている。これに対して、第一審で原告側証人として証言台に立った皮膚科の専門医である佐藤医師は、JCO側への再反論の意見書を出した。伊東弁護士は反論をまとめ準備書面(10)として提出し、「JCO側の反論は歪曲に基づくものだ」と強く主張した。

 また、原告側は大泉恵子さんの受けたPTSD被害を明らかにする上で、新たな証人採用がどうしても必要であるとして準備書面(11)を提出した。この準備書面は証人採用を認めない高裁の姿勢を厳しく批判する内容となっている。海渡弁護士は、「恵子さんに関するJCO側の主張は真実でない」と主張。さらに「特別抗告に対する最高裁の判断が下されていない中、結審するべきではない」と裁判所に強く迫った。

 しかし、裁判所は原告側弁護士の発言を完全に無視。大橋寛明裁判長は「口頭弁論を終結する。判決の期日は追って連絡」とだけ言い渡して退廷した。裁判所は、証拠調べも何もまともにやっていない。公正な審理はまったく行われていない。このような一方的な審理の打ち切り、結審など到底受け入れられるものではない。

 法廷終了後に報告会がもたれ、弁護士から新しい準備書面の内容、今回の期日決定に至った経過と今後の見通しについて説明があった。通常、結審時に判決の期日は決められる。それが「追って連絡」と期日を決めなかったのは、最高裁の判断がまだ出ておらず、さすがにそれを無期することはできなかったのではないかということであった。弁護士からは、これで終わったわけではない。判決までまだ時間がある。新しい証拠を探すなど努力を続けようと話された。
 昭一さんは、「本当に悔しい。しかし、裁判所の判断がどうであれ真実はこちらにある。これまで裁判でやってきたことを残していきたい。みなさんの力があったからここまでやってこれた。最後までできる限りやりたい」と力強く語った。恵子さんは、改めて支援者に対する感謝の言葉を述べた。
 「支援する会」からは、最後まで、公正な審理を運動の力で求めていきたいとの決意が表明された。参加者から、「ハガキ行動で裁判官に私たちの思いをもう一度ぶつけたい」との意見が出された。判決に向け、「支援する会」として再度ハガキ行動に取り組むことを確認し合った。既に申請している新しい証人の採用などを求めていこう。裁判はまだ終わっていない。最後まで支援していこう。(H)

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東京高等裁判所第2民事部

(09/01/21UP)