東海村臨界被ばく事故裁判 7月3日 東京高裁で第1回控訴審始まる
原告側―1審判決の確定的影響と確率的影響の機械的2分論を強く批判



 7月3日10時30分の定刻より少し早く、東京高等裁判所にて東海村臨界被ばく事故裁判の第1回控訴審が行われた。約50の傍聴席はほぼ原告(控訴人)の支援者で満席になった。
 原告から準備書面1〜3を提出、被告(被控訴人)からは、JCOが答弁書と準備書面1を、住友金属鉱山が答弁書を提出した。その後、双方の弁護士から約10分ずつ意見陳述が行われた。
 原告側の伊東弁護士は、原判決(水戸地裁の判決)が被ばくの確定的影響と確率的影響を機械的に2分している点を強く批判した。原判決は原告である大泉昭一さんの皮膚への影響が確定的影響、しかもしきい値以下であるので因果関係なしとしてしまっている。しかし確定的影響のしきい線量とされる値より遙かに少量の被ばくで、確定的影響に分類される脱毛、下痢、口内炎等が現実に多数発症しており、それが多数の原爆症認定裁判でも放射線被ばくによるものと認定されている。原判決はその流れに逆行するものであると批判した。また、大泉恵子さんのPTSDについて、1審でJCOが出した飛鳥井意見書に対して、主治医である今村医師が批判する意見書を準備中であるとした。
 対して被告側は、住友金属鉱山の富田弁護士が、JCOと住友金属鉱山の両代理人として意見陳述を行った。まず原審の判決は「十分。いや十二分に証拠調べを行った上で原告の主張を退けたものだ」といやらしさたっぷりに述べた。その上で確定的影響と確率的影響の2分論はICRPをはじめ国際的にも認められており、それと異なる見解を持つECRRは反原発の考えを持った人たちの組織である等々、権威を振りかざす論を展開した。
 その後、原告側海渡弁護士より、もう少し主張の準備を行いたいと意見が出された。裁判長は「大きなところで証拠調べをする必要はないと思っているので原告の方はよく考えて出してください」と発言したが、拒否することはなく、次回に原告が主張することになった。次回期日は9月16日午後3時30分から、準備書面の提出は8月8日までと決まった。
 裁判に先立ち、支援者によるビラまきが高裁前で行われ、原告の大泉昭一さんたちがマイクで支援を呼びかけた。裁判後、海渡、伊東両弁護士による解説が行われた。1回目で結審になることが多い東京高裁だが次回につなげていくことができた、しかし裁判所からは非常に高いハードルが設けられた、次回が山場になるので今日以上の傍聴者で埋め尽くして裁判長に結審させないことが重要だと説明された。早期審理打ち切りに対して、十分な審理を要求していこう。水戸地裁の不当判決を覆すため、支援していこう。 (J)

(08/07/06UP)