高浜原発審査・川内原発火山問題政府交渉報告(2015年1月13日)


1月13日に高浜原発審査及び川内原発の火山問題について政府交渉が行われました。参加されたみなさんおつかれさまでした。参議院議員会館101で、約2時間の交渉でした。

全体的に、これで審査しているといえるのか、という内容でした。再稼働を許してはなりません。

汚染水対策では、基準の要求を満たしていないこと、MOXの判断基準がないこと、水素燃焼では恣意的な条件設定が行われていること、火山モニタリングでは実質的な審査を避けていることなどいくつか重要な問題が明らかになりました。地元に還元し、各地の運動に役立てていきましょう。

また、間もなく締め切り(今週金曜16日)のパブリックコメントにもしっかり書いて追及していきましょう。

原子力規制を監視する市民の会:阪上 武

**************************************

交渉には、関西から小山さん、アイリーンさん、島田さん、福井から原子力発電に反対する福井県民会議の宮下さん、佐賀から永野さん他、市民側約70名ほどが参加し、元原子力安全委員会事務局参与の滝谷さん、福島みずほ議員も参加されました。

規制庁側は、熊谷氏(福島第一原発対応)、中桐氏、上原氏(PWR担当)、渡辺氏(地震・津波・火山担当)が対応しました。


◆汚染水対策

高浜原発で汚染水対策が実施されておらず、これが格納容器が破損した場合に放射能の拡散を防止する設備の設置を要求する新規制基準55条の本文の要求を満たしていない問題について質しました。

・規制庁側は、新規性基準55条が、放射能の拡散という場合に、気体の放射能だけに限っていないことは認めました。ところが高浜原発の審査では、気体の放射能が出た場合に、放水砲で撃ち落とし、その水が海洋に出るのをシルトフェンスで防ぐという対策しか検討していません。

・福島で問題になっている液体の放射能(汚染水)の放出を防止する対策については、中長期的な課題として、審査書案267頁では下記のように書かれています。

「b. 重大事故等発生時に・・放射性物質を含んだ汚染水が発生した際の汚染水の処理活動等を円滑に実施するため、平時から必要な対応を検討できる体制を構築する方針であること。を確認した」。

汚染水対策として具体的に何を確認したのか質しましたが、「臨機応変に対応」という言葉を繰り返し、結局「方針をつくる」ということを確認しただけで、具体的方針は確認していないことが明らかになりました。これは、「技術的能力に係る審査基準」にも反しています。
(※審査基準は下記参照)

・市民側からは、事故が起きてからでは間に合わないとし、汚染水対策は、福井県原子力安全専門委員会でも問題になっていることも合わせて指摘しました。

※「重大事故の技術的能力に係る審査基準」(2頁)
1.重大事故等対策における要求事項
1.0 共通事項
(4)手順書の整備、訓練の実施及び体制の整備
 発電用原子炉設置者において、重大事故等に的確かつ柔軟に対処できるよう、あらかじめ手順書を整備し、訓練を行うとともに人員を確保する等の必要な体制の適切な整備が行われているか、又は整備される方針が適切に示されていること。


◆プルサーマル運転(MOX燃料の使用)について

高浜原発の審査書案には、MOX燃料についての記載がほとんどありません。しかし、規制庁は、高浜原発の再稼働では、MOX燃料を使うことが前提となっていると説明しています。

・規制庁は、審査の過程で、実質的にMOX燃料の使用を前提とした審査を行っていることを強調しました。しかし審査書案を見てもそれが不明であることから、詳細について明らかにするよう求めました。

・MOX燃料の使用については1998年に、当時のMOX指針に基づく審査で許可が出ていますが、重大事故対応についてはカバーされていません。今回、新規制基準で重大事故対応が加わったことから、MOX指針を作り直さなければなりませんが、MOXの技術的評価ガイドはないことを認めました。パラメータ等を厳しめに設定して審査しているなどと述べていますが、それを判断する基準を持っていないということです。これでは、プルサーマルの安全性評価はできません。


◆使用済MOX燃料の扱いについて

使用済MOXという言葉は、審査書案には出てこないことを規制庁も認めました。そして、使用済MOXも含めて再処理することになっているとの回答でしたが、再処理する施設がないことは認めました。MOXを使用するとしながら、使用済MOXの処理はなにもなく、長期に渡って地元に居座り続けるだけです。全く無責任な審査書案です。


◆水素爆発について

関電は高浜原発の評価において、炉心コンクリート相互作用による水素量を、解析に依拠しジルコニウム反応量6%を用いた評価しか行っておらず、反応量25%を用いている九電の川内原発と比べても過小評価です。また、その際に用いた解析が、作用が始まったとたんに水素の発生が全部止まるという、極端に非安全側の条件となっている問題について質しました。

・規制庁側は、関電が用いた解析コードが、極端に非安全側であることを認めたうえで、条件を変えた感度解析を行い問題ないことを確認したとしました。元原子力安全委員会事務局参与の滝谷さんより、より安全側の条件でクロスチェック解析を行うべきだと指摘がありました。

・規制庁は、高浜原発について、九電が川内原発で行った条件で評価すると、水素燃焼の基準である水素濃度13%を超えてしまうことを認めました。関電は、基準をクリアするために恣意的な条件設定を行い、それを規制庁が認めている実態が明らかになりました。


◆火山審査について

川内原発の火山リスクについて、巨大噴火の前駆現象を捉えたとしても、核燃料の搬出が噴火に間に合わない可能性が専門家によりしてきされています。その場合、「事業者が実施すべきモニタリングは、原子炉の運転停止、核燃料の搬出等を行うための監視であり」とある火山ガイドの要求を満たさないと考えられます。

ところが、川内原発の保安規定の文案では、モニタリングの方法や核燃料搬出の具体的方針は記されておらず、詳細は社内基準でということになっています。社内基準については、「カルデラ火山モニタリング対応基準」「カルデラ火山モニタリングに伴う燃料等の搬出等対応基準」といった名称しか明らかにされていません。

・ガイドに、モニタリングの目的として「核燃料搬出等を行うための監視」が記されていることについて、担当者はきちんと認識していませんでした。これを確認したうえで、審査で、搬出の期間、搬出の方法や搬出先について、九電の方針を確認するつもりか質しましたが、今のところ確認はしていないとし、今後についてもあいまいな回答しかありませんでした。

・「そのような方針でいる」ことの確認だけでは審査になりません。それを保安規定の審査でやるというのが以前の回答でした。市民側からは、実質的な審査を行うよう、そのために、九電の社内基準を確認し、それを明らかにするよう求めました。


◆関西広域連合の申し入れについて

関西広域連合が12月25日に「原子力防災に関する申し入れ」を決定し、規制庁及び経産省に提出した件で、話し合いの法的枠組みを要求していることについて、現在も必要なときには話はしているとし、広域連合の要求を事実上無視するような回答でした。

(15/01/15UP)