八幡浜市長への要望書
伊方原発3号機プルサーマルに関する事前了解には反対してください


八幡浜市長 高橋英吾 様

2005年12月6日
伊方3号プルサーマルを案じる全国の市民

 伊方原発3号機をプルサーマルにする方向で、現在原子力安全委員会で第2次審査がなされています。いずれ海外でMOX燃料を製造するための事前了解願いが、四国電力から愛媛県と伊方町に出されるのは必至の状況にあります。そのため、私たちは12月5日に愛媛県知事に要望書(別紙)を提出し、本日伊方町長にも要望書(別紙)を提出します。
 四国電力は2010年度までに伊方原発3号機でのプルサーマル運転を計画しています。住民の多くが伊方原発から10キロ圏内に住む原発隣接自治体の貴市にとって、プルサーマルは極めて大きな問題であり、計画そのものにも後述する様々な問題を抱えています。市民の安全な生活を守るため、貴市にも受け入れを了解するか否かの決定に参加する権利があるはずです。
 ところが現在は、県と伊方町だけが四国電力と安全協定を結んでおり、手続き的には県と伊方町の了解さえあればプルサーマルを実施できることになっています。プルサーマル導入をすすめる国や事業者にとってみれば、貴市は議論のテーブルにすらついていない隣接自治体であり、伊方町長に面会に行くのに素通りしてもよいような存在だと見なされています。
 しかし私たちは、伊方原発との関係において貴市はきわめて重要な立場にあると考えます。それゆえに、貴市にも立地地域としての声を発信していただきたく本日要望書を提出します。八幡浜市民の安全な生活を守るという行政の責務を果すためにも、プルサーマルの議論に主体的に参加され、市民の抱える不安や反対の意思を表明してください。事前了解には反対してください。 

1.プルサーマルは、全国で拒否されてきました
 プルサーマルは、1999年から福井県の関西電力高浜原発4号機と福島県の東京電力福島第一原発3号機で、2000年には高浜原発3号機と新潟県の東京電力柏崎刈羽原発3号機で開始する予定でした。ところが燃料データ不正発覚や、住民投票での反対、ひび割れ隠し事件の発覚などのため、新潟県と福島県は事前了解を白紙撤回しました。福井県では2004年8月9日の長崎原爆忌当日に、関西電力が美浜3号機で11人もの死傷事故を起し凍結状態が続いています。
 東電、関電の2大電力会社がプルサーマルを実施する目処がまったく立っていないのです。現在もプルサーマルという言葉さえ口にできないのが現状です。
 他方、原発の老朽化は進み、事故も次第に深刻化しています。原発を容認する人も、原発に反対する人も、原発が動いている限りは、より安全になるような対策をして欲しいと願っています。 原発立地地域のどこでもプルサーマルが計画通りに進んでいないのは、「原発の安全余裕を削る」ということに対する当然な不安からです。
 また最近では九州で、プルサーマル反対の声が高まっています。佐賀県玄海町に建つ九州電力玄海原発3号機でのプルサーマル計画については、隣接自治体の鎮西町と肥前町も反対決議を上げていました(現在は唐津市と合併しています)。唐津市においても国や事業者からの説明は受けるものの、プルサーマル事前了解へ直接関与できないことへの不満と不安、苛立ちが募っています。玄海漁民の海上デモなど、プルサーマル反対の動きが大きく、佐賀県知事も了解を強行できる状態ではありません。そのため、伊方原発がプルサーマルの先頭を切る可能性もあります。

2.立地自治体だけの問題ではありません
 原発は大事故を起す可能性があるので、なるべく人口の少ない地域へ建設してきたということを否定する人はいないでしょう。たとえば、四国電力の本社のある高松市までは伊方原発から約160キロも離れています。
 伊方原発から10キロ圏に、旧保内町の大部分、旧八幡浜市中心部の半分が含まれています。11キロなら人口の大部分が含まれることになります。伊方町と三崎町と瀬戸町が合併し原発立地自治体となりましたが、旧三崎町の三崎より八幡市の端の方が伊方原発に近いのです。距離で言えば、八幡浜市と伊方町は共に原発立地市町村と考えなければおかしいと思います。風が西から東へ吹くことが多い地域でもあり、大量の放射能が漏れ出す原発大事故が起これば、被害者数は八幡浜市の方が多いのではないでしょうか。

3.老朽化や地震などへの対策が先決です
 伊方原発は老朽化が進んでいます。また、現在日本は地震の活動期に入ったと言われていますが、2003年2月、政府の地震調査委員会が伊方原発前の伊予灘の佐田岬北西沖までの中央構造線が活動した場合にはマグニチュード8か、それ以上の地震になると発表。1996年には最も活発なA級活断層を伊方原発の約6キロ沖合いに発見した高知大学理学部の岡村真教授も、いつ起きてもおかしくないと警告しています。
 ついに8月16日には、東北電力女川原発の3基すべてが、宮城県沖で起きたマグニチュード7.2の地震で同時に緊急停止しました。耐震指針で起こるはずはないと想定されていた地震動を超える揺れが現実に観測されました。3基とも現在も停止したままで、調査検討が続いています。耐震指針の見直しが急務で、プルサーマルどころではないと思います。

4.MOX燃料に含まれるプルトニウムは猛毒物質です
 電力自由化が進む中、定期検査の短縮、運転期間の延長、燃料の高燃焼度化など、今後ますます伊方原発の安全確保が難しくなっていくと思われ、大変心配です。伊方原発3号機でのプルサーマルはプルトニウムの最高装荷量が約1.67トンです(核分裂性は1.12トン)。大事故が発生し放射能が外部に漏れ出した場合は、ウラン燃料だけの場合より厳しい状態が発生します。それはプルトニウム1グラムが一般人の摂取制限値の約1億4千万人分に相当する猛毒物質だからです。肺に吸い込んだ場合、プルトニウムの発するアルファ線はすべて周辺の肺細胞に吸収され遺伝子を破壊しガンを引き起こします。
 八幡浜市は、子どもたちのために放射性ヨウ素を吸い込んでも甲状腺への蓄積量を減らすために、「ヨウ素剤」を小学校などに用意していることは評価できます。ところがプルトニウムは吸い込んだらどうしようもありません。対策が取れないのです。

5.八幡浜市民の安全を守るため事前了解には反対してください
 四国電力が昨年伊方町で説明会を開催しましたが、参加できたのは伊方町と保内町の住民だけで、旧八幡浜市に許されたのは傍聴だけでした。
 ご参考までに玄海原発の隣接の唐津市では、新たに安全協定を結ぶ具体的な動きもでてきています。原発立地地域でありながら、プルサーマル導入に対する事前了解の議論では置き去りにされているからです。万が一、地震や事故が起こっても立ち入り調査や原子炉停止を命じる権利すら持っていないからです。これでは行政の責務である市民の安全な生活を守ることはできません。
 八幡浜市としても原発隣接自治体として、八幡浜市民の生命を守る取り組みをさらに強化し、伊方原発3号機プルサーマルに関する事前了解には反対して下さい。

伊方3号プルサーマルを案じる全国の市民

呼びかけ団体(15団体)
伊方原発反対八西連絡協議会/八幡浜・原発から子供を守る女の会/原発さよならえひめネットワーク/原発さよなら四国ネットワーク/脱原発ネットワーク・九州/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/グリーン・アクション/みどりと反プルサーマル新潟県連絡会/脱原発福島ネットワーク/ストップ・ザ・もんじゅ東京/福島老朽原発を考える会/グリーンピース・ジャパン/東京電力と共に脱原発をめざす会/原子力資料情報室/原水爆禁止日本国民会議

連絡先:
  原発さよなら四国ネットワーク
    〒790-8691 愛媛県松山市・松山中央郵便局私書箱151号
  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
    〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3F
    TEL:06-6367-6580/FAX:06-6367-6581
  福島老朽原発を考える会/ストップ・ザ・もんじゅ東京
    〒162-0825 東京都新宿区神楽坂2-19銀鈴会館405号 共同事務所AIR気付
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