東電福島T−3号用MOX燃料をめぐる
12月26日福島地方裁判所での証人尋問



 昨年8月9日に提訴された東電福島T−3号炉用MOX燃料の使用差し止めをめぐる裁判において、仮処分ではめずらしい証人尋問が、原告側の強い要求によって12月26日に福島地裁で行われた。証言に立ったのは、核物理学者のフランク・バーナビー氏と高浜4号MOX裁判の原告だった小山英之(美浜の会代表)である。
 バーナビー氏は主に、ベルゴ社のMOX燃料製造能力がBNFL社に比べてむしろ劣っていること、及びPWRだけでなくBWRでも、PCMI(ペレット被覆管機械的相互作用)によって、反応度事故の際に燃料破損が起こることを証言した。
 小山は、すでに提出した4つの陳述書に基づいて、データ不正の可能性について証言した。ちょうど前日の25日に東電側から「準備書面(二)」が出されており、そこに「最初から不正はないのだからデータ不正はあり得ない」、「それ故にデータ開示を求める必要もない」という彼らの立場が文章で明確に定式化されている。おまけに、小山がすでに第4陳述書で示していた、データ分布が正規分布から著しく歪んでいるという指摘を事実上認めて、「砥石の調整が正規分布からのズレをもたらす」と予防線まで張っている。小山証言の主眼点は、これらを取り上げ公表データに基づいて批判することであった。
 これらについて詳しくは、原告団から報告ニュースが出されることになっている。そこで以下では、その報告ニュースに投稿した小山の感想文だけを掲載しよう。


 12月26日法廷に証人として立って

 「小山証人はおりますか」と午前10時開廷冒頭に裁判長。傍聴席で手を挙げると、東電側に向かって、「証人の扱いはどうしましょう」と聞く。「原則どおりにしてください」と東電側の西弁護士。「それでは小山証人は法定外に出てください」ときた。
 初めは遅れてくる人に傍聴券を渡す役目を引き受ける。その後はイスだけがある2m×2mの控え室で、屋根に積もった雪が吹雪でブアーっと舞い上がるのを見ながら過ごした。午後3時からの予定が1時間遅れ、ようやく午後4時から私への尋問が始まった。
時間を気にして少し簡略化しながらも、約40分ですべての主尋問に予定通り答えることができた。すぐに東電側富田美栄子弁護士の反対尋問が始まる。首に派手なスカーフを巻いている。東京から傍聴の女性陣によると、何とか言うブランドものだそうで、それもチョウチョウ結びにしていたとのこと。それは美栄の上に富のつく名前とともに、彼女たちのすさまじい憎悪の対象となったものである。
 「証人は先ほどデータ入力を運動としてやったと言いましたね」から始まる。「運動」を印象づけたいらしい。「この問題で政府から報告書が出ているのをご存じですか」。「どの報告書のことでしょうか」と聞くと、例の仕様無視でも安全という報告書を見せる。「知ってます」と答えると、「ハイ次」と何もしゃべらせない作戦のよう。「証人はAQLが不良品の上限であることはご存じですか」。「不良率の上限のことですね」。「失礼しました、不良品でなく不良率の上限です」。「建前として上限であることは知っています」。「エッ、建前ですか」とさも驚いた様子。「AQLが不良率の上限というのはあくまでも建前の話ですよ。現に関電の場合AQLは1%ですが実際の不良率はそれを超えてます」というと、一瞬困った表情を見せすぐ次の質問に移った(失礼。私が尋問される立場でした)。
 富田女史の机に検査員と3名の立会人の写真が置かれている。次はアレかと心待ち。「証人はグローブボックスを見たことがありますか」。「いえ、見たことはありません」。とたんに3名の弁護士が声を揃えて「アハハハ」と笑う。これが作戦なのか、それにしても何という品のなさ。「手袋の影にあるわずか1cmのペレットなど見えるはずがないじゃないですか、それに3名の立会人は誰もメータを見てません。あんなメータじっと見てたら目がクシャクシャしますよ」というと、後ろの傍聴席で笑い声が上がり、それまで。
 最後に親玉の西弁護士。「証人はBNFLのデータをベルゴに持ってきたと言いましたが」。「そんなことを言った覚えはないですが、何のことでしょう」というと、一瞬沈黙し、目と目がぶつかったように感じた。彼の方が目を反らし、違う趣旨を述べたが、どうやら引っかけるつもりだったのかも。何という品のなさ。全体に反対尋問とは名ばかりだった。
 私の証言の最大の力点は、前日に東電が出した「準備書面(二)」の基礎的観点を取り上げ批判することだった。@データ不正がないなどという立証責任は東電側にはない。A不正がないのに、ベルゴ社にデータ公開など要求できない。要するに最初から不正なしとの立場であり、関電が高浜4号でとった立場と同じである。BNFL事件ではデータ自体だけが不正を語ったのに、それをわざと無視している。通産省の元の指示にも違反している。
 この文章表現された不埒な東電の立場を、法廷の内外で大きく取り上げる必要がある。県当局にもアピールしよう。そして、私が証言で具体的に示したデータ異常をどう説明するのかについて、あくまでもデータ公開と具体的な回答を東電側に要求していこう。 



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