東京電力のMOX燃料製造確認試験
メロックスでは「80sのUO2」
ベルゴでは「80sのMOX粉末」
なぜメロックスでプルトニウムを使わなかったのか
ウランを使った製造確認試験でMOX燃料の品質が保証されるのか




 東京電力はコジェマ社のメロックス工場でMOX燃料を製造するにあたり、経産省に対し「輸入燃料体検査申請書」(2000年11月14日付)を出した[資料1]。その申請書の添付資料Y「品質保証に関する説明書」によれば、東電は、1999年から2000年にかけて、メロックス工場で「製造確認試験」等を行い、「メロックス社はその技術的能力に問題はなく、当社の要求仕様を満足するMOX燃料を製造できることを確認した」と結論付けている。この申請書を国が認め、2001年から福島T−3号用MOX燃料製造が開始された。しかし、その「製造確認試験」には大きな問題がある。

メロックスでは「実際の部材」といいながらウラン燃料で製造確認試験
 製造確認試験は、「日本向けBWR仕様のMOX燃料を初めて製造するメロックス社に対して・・・製造実績の調査及び実際の部材または模擬燃料部材を使用して」行ったという。
 しかし、「燃料材製造工程」(ペレット製造工程)では、「実際にUO2燃料材約80sを使用して研削工程の能力を調査し、当社寸法仕様への適合性を確認した」となっている。「実際の部材」とは、ウラン燃料のことだったのである。

ベルゴ社ではMOX燃料で製造確認試験
 ところが、東電が最初にMOX燃料を製造したベルギーのベルゴニュークリア社では、MOX粉末を使った製造確認試験を行っていた。「ペレット製造工程については、約80sのMOX粉末を使用して、BWR仕様のMOXペレットを製造し、・・・・確認を行った」[資料2

なぜメロックスではプルトニウムを使わなかったのか
 ベルゴ社では、MOX粉末=プルトニウムを使って製造確認試験を行っていながら、なぜメロックス社ではウランだけを使った製造確認試験となったのか?プルトニウムを使えなかった理由でもあったのだろうか?東電は、その理由を明らかにすべきである。
 ちなみに、東電用のMOX燃料は、メロックスの新施設で製造されている。この施設へのプルトニウム持ち込み許可は、2000年4月18日に、フランス政府によって出されている。

メロックスでは、プルトニウム・スポットの確認は「PWR仕様の実績調査」のみ
 さらに、プルトニウム・スポットに関するメロックスの「技術的能力の評価」については、「PWR仕様のMOX燃料材の製造実績調査により・・・プルトニウム均一度の当社仕様への適合性確認を行」った、という。すなわち、PWR用(フランスEDF用燃料と思われる)のこれまでの「製造実績調査」=ペーパー確認で適合性を確認しただけである。
 他方、最初のベルゴ社では、「MOX粉末を使用して、BWR仕様のMOXペレットを製造し、・・・プルトニウム均一度等の確認を行った」となっている。こちらは一応、実際のMOXペレットを製造し、そのプルトニウム・スポットの確認を行っている。

 東電が行ったメロックスでの「品質保証確認」はあまりにもずさんである。ウランを使った試験やPWR用MOXの「実績調査」で、MOX燃料の品質が保証されるというのは、安全性軽視も甚だしい。それを許し、メロックスでの製造開始を認めた経産省の責任も重大だ。



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