不当判決糾弾!
公開されたデータこそが真の判決をくだす!
−3.23福島MOX使用差止仮処分決定に関するコメント−



                                    2001年3月24日
                     美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

 福島原発T−3号炉へのMOX燃料装荷の差止仮処分申請に対し、福島地裁は3月23日、「本件MOX燃料ペレットの外径寸法に係る抜取検査に不正操作があったとは認めることができない」と債権者(原告)の申請を退け、従って「本件MOX燃料が安全性に欠けるとする主張は理由がない」と判断した。これはきわめて不当な決定である。

 裁判所は同時に、情報公開に関しては債務者(東電)の態度を批判している。「ペレット外径寸法の検査データが重大な製造ノウハウにかかわるものとはおよそ考えがたい」と判定し、「債権者らが、上記のような原子力の安全に係る情報の公開が極めて重要であるとの見地から、本件仮処分手続きにおいて、本件抜取検査データの公開を訴えたにもかかわらず、発注者の立場で、ベルゴニュークリア社に対し、重ねて特段の要請を行い、同社の頑なな対応に翻意を促し、本件抜取検査データを公開させるべく努めた形跡が窺えないことは原子力発電所という潜在的に危険な施設を設置稼働する立場にある者として、必ずしも十分な対応とはいい難い」と批判した。

 ところで、債権者の基本的な主張は、MOX燃料ペレット外径に関して1ミクロンキザミのデータが公開されない限りデータ不正の有無が判断できないため、どうしてもそれを公開すべきであり、公開できない以上不正があったと見なすべきであるというものであった。このうちの最も重要なデータ公開について、この最も本質的な点について、裁判所は債務者の主張を退け、債権者の主張を基本的に認めたのである。
 東電がMOXペレットの1ミクロンデータを公開するときこそ、裁判所の今回の決定が真に妥当かどうかが明らかになる。事実、BNFL社製燃料に関してNII(英国原子力施設検査局)は、ペレット外径に関する上中下の1ミクロンキザミの抜取データだけを用いて不正を暴き出している。1ミクロンキザミの抜取データを用いた判定こそが、真の判決となるのである。この意味で、今回の判決内容は、自らの決定を覆す契機を含んでいる。

 裁判所は、立証上の問題に関して、ことごとく債務者側の言い分だけを無条件に認めるという不当な態度を示した。例えば、立会検査における立会人の役割について、債務者側の言い分を完全にそのまま認めている。小山が12月26日法廷で債務者の立会検査に関する主張を否定する証言をし、それに何も反論がなされなかったという事実を無視している。
 また、裁判所が債務者に対して提出した「求釈明書」に債務者はまるで答えていないが、それに対してなぜ裁判所は批判的な態度をとらなかったのだろうか。

 裁判所は立証責任をことごとく直接債権者側に負わせた。しかし限られた資料しか公開されない現状において、債権者が立証できる範囲はきわめて限られており、状況証拠的なものにとどまらざるをえない。例えば、裁判所は不合格ゼロ問題に関して、ベルゴ社の不良率を具体的に示せという不可能な要求を債権者に突きつけている。このように、立証責任をすべて原告側に負わせる立場が貫徹されるなら、電力会社が資料非公開の態度をとればとるほど彼らに有利になる。今回の決定は、このような風潮を助長するものである。



 立証上の最大の焦点は、小山の行った2次予測の評価である。これについては、「各ロット毎の抜取検査データを正規分布と比較することにより異常が判明するという前提自体が誤りである」と判断している。その理由は、砥石の調節過程のせいで必ずしも正規分布が成り立つ必要がないという債務者の主張を無条件に認めたことにある。このことはまた、上記の裁判所の外径データ非公開批判が、裁判所の決定に響かない根拠となっている。
 しかしこの点について債権者は、砥石の調節が加われば正規分布からずれる可能性は認めつつも、分布の示す2種類の異常パターンが両方とも砥石調節のせいとするのは矛盾すると具体的に指摘し、債務者は異常性を資料に基づいて具体的に説明すべきであると主張した。しかし、この指摘・主張は完全に無視されている。さらに、必ずしも正規分布との比較を前提としなくても、分布に2つの山があるのはそれ自体として異常であるとの留保を付けているがこれも無視されている。
 そもそも債務者は、砥石の調節なるものが具体的にどのように行われているかの説明を、裁判の中ではいっさい行っていない。砥石の調節はペレット外径の自動測定結果に基づいて行われているはずだが、その具体的な形態は裁判の中で説明されていない。それなのにどうして裁判所は、砥石の調節によって正規分布からずれると断定できるのだろうか。ただ債務者を勝たせるために、その主張を鵜呑みにしているにすぎないのではないだろうか。

 この裁判では、東電があまりにもデータをださなかったがために、当初から立証が非常に困難であった。それでも債権者は立証に努力し、多くの問題点を明らかにした。そして何よりも福島県内で900名以上、全体で1900名以上の債権者が参加するという一大運動へと拡大発展した。これは福島県知事の「プルサーマルの理解が進んでいない」という発言に如実に反映されている。そして、福島プルサーマルを少なくとも1年は延期することが、すでに勝ち取られているのである。
 裁判所が完全に東電側に立った決定をくだしたとはいえ、同時に裁判所の判断によって、問題の焦点がデータ公開にあることがますます焦点化した。この裁判所の判断を基礎にしてデータ公開を求める声をさらに大きく拡大していこう。
 公開されたデータこそが真の判決をくだすであろう。



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