福井県知事及び福井県原子力安全専門委員会への要望書
高浜3・4号機使用済燃料ピットの臨界安全性に重大な疑問が浮上
米国の規格(ANSI/ANS)に従えば臨界の危険性あり
関電の認めた数値でさえ 評価値0.965>基準値0.964
この問題の検討を優先し、高浜3号機へのMOX燃料装荷を認めないでください

 
福井県知事 西川一誠 様
福井県原子力安全専門委員 各位様
2010年11月20日
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

 関西電力は、12月初めにも高浜3号機にMOX燃料を装荷し、初のプルサーマルを開始しようとしています。もし装荷されれば、3〜4年後に使用済MOX燃料となって炉内から取り出され、使用済燃料ピットに貯蔵されることになります。
 その使用済燃料ピットの臨界安全性に重大な疑問のあることが、11月18日に大阪市内で行った関西電力(関電)と市民との議論を通じて明らかになりました。また、六ヶ所再処理工場や「もんじゅ」の最近の現状に照らせば、使用済MOX燃料の行き先はますます不透明になり、永久に高浜原発サイト内におかれる懸念が高まってきました。
 プルサーマルの実施を急ぐ必要は何もありません。これらの問題に解決の目処が立つ前にプルサーマルが実施されることがないよう、適切な判断をくだされることを切に要望いたします。

1.高浜3・4号機使用済燃料ピットAエリアは臨界になる危険性があります
 
関電が11月18日の市民との議論の場で認めた結果に従えば、高浜3・4号機使用済燃料ピットAエリアは臨界に達する危険性があります。
 関電は実効増倍率の評価値0.977が評価基準値0.98より小さいから安全だとし、これらは米国の規格であるANSI/ANS-57.2を参考にして評価したとしています。この場合、ピットに関する評価値0.977には不確定性0.020が含まれているとし、他方臨界実験から導かれる評価基準値は1−0.02(安全余裕)=0.98としてこれには不確定性は含めていません。
 しかし、このような評価方式はANSI/ANSのいう、評価値と基準値それぞれに不確定性を考慮するべきという考えに従ったものではありません。関電もそのことを認め、不確実性0.020のうちのラック等の不確定性に関する部分0.0077は評価値に含め、臨界実験に関する不確定性部分0.0156は基準値で考慮する必要があると認めました。この場合、評価値=0.965、基準値=0.964となって評価値が基準値を上回るので、臨界安全性が保証されません。
 実は、ANSI/ANSの考え方に忠実に従えば、評価値と基準値のそれぞれで考慮するべき不確定性はさらに大きい値となるため、評価値はより大きくなり基準値はより低下して、臨界が起きないという保証がないことはいっそう確実になります(詳しくは別紙説明資料を参照してください)。両者の不確定性として安全側に関電の計算値を適用すれば、評価値は0.977、基準値は0.960となります。
 もし仮に関電が現在の方式のままでいいというのであれば、ANSI/ANSに代わる規格として、どこのどのような方式を選んだのかを公的に明らかにするべきです。それが示せない以上、ANSI/ANSの考え方に忠実に従って評価をやり直すべきです。
 使用済MOX燃料はこの使用済燃料ピットに超長期に渡って貯蔵されることになります。使用済燃料ピットで臨界事故の起きる危険性があるという安全上の問題について、MOX燃料が高浜3号機に装荷される前に、福井県として独自に慎重に検討されるべきではないでしょうか。

2.使用済MOX燃料の行き先がないことが格段に現実的になってきました
 原子炉等規制法第23条に従えば、使用済MOX燃料の処理の方策は、原子炉設置の前に明らかにするべきことです。その処理の方法と処理を引き受ける相手方を記載して国に提出するよう法律は定めています。しかし、処理の方法は再処理とされているものの、相手方は固有名詞を示すことができず、「国内の再処理事業者」としか書きようがないのが現実であり、明らかな法律違反がまかり通っています。
 さらに、原子力政策大綱によれば、使用済MOX燃料の処理の方策は、六ヶ所再処理工場や「もんじゅ」等の現状を踏まえて検討開始することになっています。ところが六ヶ所再処理工場は、ガラス固化試験で白金族の沈降・堆積という本質的な問題のためにほぼ完全に行き詰まり、2年後に試験が終了する見込みもありません。「もんじゅ」はご存じのとおりの状態に陥り、中継装置が取り出せる見込みも立っていないどころか、その作業は大きな危険を伴うものです。ついに、近藤原子力委員長は、第二再処理工場について「これから10年で検討する」と発言しました。原子力政策大綱のいう2010年頃から検討開始という線からはっきりと大幅に後退しました。
 それにも関わらず、プルサーマルだけは先行させるということは明らかな理不尽です。誰も納得できるものではありません。プルサーマルの実施は避けるべきではないでしょうか。

 以上のような考えに立って、以下の点を要望します。

要  望  事  項

1. 高浜3・4号機使用済燃料ピットAエリアの臨界安全性について、福井県として独自の検討を行い、米国ANSI/ANSの評価方式に基づいて評価をやり直すよう関西電力に求めてください。

2. 使用済MOX燃料の処理の方策について、現在の状況を踏まえて国に説明を求め、その結果について県民や周辺住民に説明してください。

3. 上記2点について、原子力安全専門委員会を開催し、慎重に検討してください。

4. 少なくともそれまでは、MOX燃料の装荷を認めないでください。


     2010年11月20日
      グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
          京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

      美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
          大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3 階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581
 

(10/11/22UP)