原子力安全・保安院に確認して明らかになったこと:
国の輸入燃料体検査には、法的根拠を持った具体的判断基準はありません

保安院を佐賀県に呼んで、県民の前で説明させてください
それまでは、玄海3号機の原子炉起動を認めないでください
要    請    書


佐賀県知事 古川 康 様
2009年10月29日

 玄海3号機で予定されているプルサーマルに関して、貴職はこれまで、「国の輸入燃料体検査で安全性は確認されている」と繰り返し述べてきました。
 しかし、その国の輸入燃料体検査には、法的根拠を持った具体的判断基準がないことが昨日(10月28日)明らかになりました(下記詳細)。また同時に、電力会社が行っている自主検査の重要性が具体的に明らかになってきました。

[経緯]
 関西電力は8月19日、自主検査の項目の一つで目標範囲に収まらないMOXペレット4体分を不合格として、使用しないことを発表しました。原子力安全・保安院は、10月7日の市民との交渉の場で、@九州電力からは、データ等の提示なしに「自主検査に合格している」とだけ聞いていること、A関電が不合格にしたペレットと同様のものが九電のMOX燃料に入っている可能性は否定できない、と明言しました。他方、9月の佐賀県議会では、九電の自主検査について議論され、くらし環境本部長は九電の自主検査に関する資料を議会に示すと約束しましたが、いまだこの約束は果たされていません。
 10月15日にMOX燃料の装荷が始まった時点でも、佐賀県の原子力安全対策課は、「国の輸入燃料体検査で安全性は確保されている」、「自主検査は品質保証のためのもので、安全性とは関係ない」との見解を繰り返しました。
 しかし、昨日(10月28日)近藤正道国会議員の事務所で行われた保安院へのヒアリングでは、国の輸入燃料体検査には大きな問題があることが明らかになりました。保安院から出席したのは、10月7日と同じで、原子力発電検査課総括安全審査官の石垣宏氏と施設検査係長の百瀬孝文氏でした。その場で明らかになった内容は以下のとおりです。

[国の輸入燃料体検査の問題点]
1.国の輸入燃料体検査には、法的根拠を持った具体的判断基準がない
 10月7日の保安院交渉では、保安院の検査課職員は、関電で問題になった自主検査項目が不純物に関するものであることを前提として説明しました。その時の保安院の見解は、国の検査では「不純物」の種類について上限値を定め審査しているので安全は確保されているというものでした。

@国の検査項目である「不純物」の種類は電力会社まかせ
 電力会社は、輸入燃料体検査申請を出していますが、各電力会社によって、そこで申請している不純物の種類・数が異なっています。九州電力は28種類、関西電力は40種類、中部電力は4種類となっています。
 国の検査であるにもかかわらず、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。これについて保安院・検査課は、「電力会社が申請してきたもので、保安院としては是正していない」として、申請する不純物の種類は電力会社に委ねていると答えました。
 不純物検査については、「発電用核燃料物質の技術基準を定める省令」で規定されています。ウラン燃料の場合、4元素(炭素、ふっ素、水素、窒素)について各々の上限値が定められています。しかしMOX燃料については、具体的な元素名や上限値は定められていません。そのため、電力会社は海外の規格であるASTM(米国材料試験協会)の基準(C833−01「MOXペレットのための標準仕様」)を参考に申請しています。
 国の検査であるにもかかわらず、申請する不純物の種類を電力会社にまかせているということは、国として基準がないことを意味するものです。

AMOX燃料に関する国の判断基準には法的根拠がない
 国が輸入燃料体検査申請に許可を出す場合、当然のこととして法律に基づいた判断が行われます。国の判断の根拠は上記省令です。MOX燃料の不純物に関するものは、この省令の第5条1項です。そこでは「各元素の含有量の全重量に対する百分率の値の偏差は、著しく大きくないこと」と規定されているだけです。具体的な元素名や上限値は規定されていません。
 それでは、電力会社が出してきた各不純物の上限値が適切であるかどうかを、何に基づいて判断するのかという問題が生じてきます。4元素については、ウラン燃料の規定(省令第4条の数値)を使用しているとのことでした。4元素以外については電力会社と同じで、学協会規格に関係するものとしてASTMのC833−01があり、これを審査・判断の参考にしているとのことでした。しかし、このASTMは正式な規制基準ではなく、法的な位置づけもないと保安院は明言しました。
 事実、経済産業省が公表している「電気事業法に基づく経済産業大臣の処分に係る審査基準等」の中では、輸入燃料体検査に係る審査基準について、上記省令が基準であり、「更に具体的な審査の基準を作成することは困難であるため、審査基準は作成しない」と書かれています。保安院はこのことを認め、改めて、ASTMが審査・判断基準として法的に位置づけられていないことを確認しました。

 これら10月28日、近藤正道参議院事務所で保安院が自ら認めた内容は、@国の輸入燃料体検査には、具体的な法的判断基準がないこと、AASTMを参考にしているが、その法的裏付けは何もないということです。すなわち、「国の検査に合格」していても、それは法的根拠を欠いた許可であり、無効である可能性が極めて高いといわざるをえません。

2.「全不純物総量」を規制している自主検査は、国の検査の不備を補完するもの
 不純物に関する国の検査項目は、各元素毎の上限値を規制する方法です。他方、関西電力が行っている自主検査の検査項目である「全不純物総量」では、不純物の総量規制を行っています。この総量規制については、ASTMの4.1.2項で規定されています。具体的には、ASTMの表1で挙げられている12〜14種類の元素の「合計は1500ppmを超えてはならない」とされています。
 国の判断基準としてASTMを参考にするのであれば、個々の不純物の上限規制と併せて、全不純物の総量規制が国の検査項目に入れられるべきです。実際に、東京電力が1999年に国に出した福島第1原発3号機の輸入燃料体検査申請書には、全不純物総量が記載されていました。なぜ現在は「全不純物総量」という国の検査項目がないのかについて、28日のヒアリングの場で保安院は即答できませんでした。
 つまり、電力会社の自主検査は、国の検査の不備を事実上補完するものです。その意味で、自主検査は安全性を確認する上で重要な検査ということができます。
 保安院はまた、「国の検査は安全性を確認するもの」、他方「自主検査は品質保証や効率的燃焼のためのもの」というような区別はないと語りました。
 なお、伝えられる九電の自主検査項目は、輸入燃料体検査項目との区別が明確ではありません。県はこの点を明確にするよう九電に求めるべきです。

 28日の保安院ヒアリングでこのような内容が明らかになったため、以下を強く要請します。

要   請   事   項

 「国の輸入燃料体検査には法的根拠を持った具体的判断基準がない」ことについて、保安院を佐賀県に呼び、県民の前で説明させてください。
 それまでは、玄海3号機の原子炉起動を認めないでください。



2009年10月29日

止めようプルサーマル・佐賀
プルサーマルと佐賀県の100 年を考える会
グリーン・アクション
福島老朽原発を考える会
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

[連絡先団体]
プルサーマルと佐賀県の100 年を考える会

(09/10/29UP)