ロットP783が教える関電の不正

 

 1月11日、関西電力は、「BNFL製MOX燃料の製造時検査データに関する再調査について」という報告書を公表した。それによると次のような関電像が浮かび上がる;(1)公的検査機関よりもデータ捏造のBNFLを信頼する関電、(2)P783疑惑を世間から隠し通そうとする関電、(3)情報を隠匿し自分の判断基準とその根拠を示さない関電、である。正しくそれは不正な関電の姿である。

<(1)公的検査機関よりもデータ捏造のBNFLを信頼する関電>
 遅くとも昨年10月20日には、関電は、高浜4号炉用MOX燃料のロットP783に対して英国原子力施設検査局(NII)の疑義が向けられていた事実を知っていた。それを知りながら、国民はおろか福井県や通産省に対してもその事実を隠していた。関電は、「BNFLでの評価の結果、P783に不正はない旨の連絡を受けた」ため報告を怠ったと記している。すなわち、NIIよりもBNFLの評価を重視するというのある。しかし、BNFLは関電にMOXを納入する事業者であり、直接の利害関係者であるばかりか、そのわずか1ヶ月前に、高浜3号炉用のMOX燃料検査データを捏造していたことが発覚した紛れもない前科者である。一方のNIIはイギリス政府の公的な監督官庁である。どうして前者の言い分を真に受け、後者のそれを無視するということになるのであろうか。驚くなかれ関電は、公的機関よりもデータ捏造のBNFLを信頼するのである。

<(2)P783疑惑を世間から隠し通そうとする関電>
 関電は9月24日には、高浜4号については不正はないとする「中間報告」をまとめ、高浜4号用MOX燃料は、10月1日に高浜に到着した。そして11月1日には「最終報告書」をまとめたのであるが、そこにはP783について一言も触れられていない。そしてそ知らぬ顔で、翌2日には福井県議会で、19日には高浜町議会でそれを報告したのである、「高浜4号には不正はありません」と。また、212名の原告が訴えたMOX燃料使用差止申請において、大阪地裁に関電が提出した書面のどこを見てもP783についての記述は存在しない。地方議会も裁判所も関電にとっては真実を語る相手ではないのである。この世をわが世と思うのか、疑惑の存在を知りつつも、関電は、P783に向けられたその疑惑を隠し通そうとしたのである。

<(3)情報を隠匿し自分の判断基準とその根拠を示さない関電>
 英国ガーディアン紙がNIIの疑義を伝えたのと同じ12月9日、通産省は関電にNIIがP783について抱いている統計的疑義を確認するように指示した。翌10日、BNFLが関電に、NIIはP783が「通常でない」ロットであるとするが、BNFLは「通常でないロットではない」と確信している旨の連絡がはいる。そして11日に関電は通産省に、P783に不正はないと判断する旨の報告を行った。そして装荷中止を決定した今になっても関電はP783の不正を認めていない。すなわち関電は不正はないという判断の結論だけは示すが、その判断の基準、その根拠は示さない。その姿は「BNFLが不正なしと言うから不正なし」と言っているに等しい。自身の結論を押し付ける一方でP783については未だに問題の検査データを公表していない(注1)。叱られてへそを曲げた幼児のごとく、自分は悪くないとは言うが、その根拠は示さないのである。

(注1) 「P783の疑義」は次のようなもの:
(1)検査データは、ひとつのペレットについて上、中、下、の3つの外径データからなるが、それらが3つとも同じ値になるのは、通常、ペレット200個当たり8個程度。しかしP783では47個もある。統計学的に多すぎる。
(2)異なるペレット間で、上、中、下、の3つの外径データが全て等しいのは、通常、ペレット200個当たり14〜25個程度。しかしP783では93個もある。これも統計学的に多すぎる。
(1)と(2)から考えられるのは、検査員が測定をせずに他のペレットのデータをコピーして検査データを捏造したということ。


(注2) この間の経緯はここをご覧ください




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