関電のMOX燃料加工本契約の締結を糾弾する
活断層の真上にある美浜原発は閉鎖せよ

活断層の連動性を否定するバックチェック報告書では
原発の耐震安全性は保証できない。プルサーマルどころではない
デタラメなバックチェック報告書をふところにしのばせ、
プルサーマル本契約の承認をとりつけた姑息な関電


 関西電力は3月31日、年度末ぎりぎりになってMOX燃料加工のための本契約を原子燃料工業と締結した。これによって、フランスのアレバ社メロックス工場でMOX燃料16体を製造し、2010年度までにプルサーマルを開始しようとしている。
 関電は3月17日に原子燃料工業(熊取工場)及びメロックス工場の品質保証体制についての監査結果を福井県などに報告した。しかし、その内容は「ISO9001:2000の規格に合格している」等々、まったく抽象的なものばかりである。関電は「BNFL事件の教訓を踏まえて」といいながら、メロックス工場で製造されるMOX燃料ペレット寸法の情報を公開するのかについては一切不問にしている。福井県は、わざわざ3月29日土曜日の午後に、安全専門審査会を開き関電の報告を妥当と評価した。福井県と高浜町は31日午前中に、監査結果は適切であるとして関電が本契約に進むことを了承した。
 関電のプルサーマル計画は、1999年のBNFLデータねつ造事件、2004年の5名もの死者を出した美浜3号機事故により、中止に追い込まれていた。美浜3号機事故によって関電の安全軽視の姿勢に多くの批判が起こったが、いまもまだ事故は多発している。さらに、今回のプルサーマル本契約は、中越沖地震によって原発の耐震安全性に社会的に強い疑問がもたれる中で強行的に締結された。
 関電は福井県から本契約の了承を取り付けた数時間後に、原発の耐震安全性に関するバックチェックの「中間報告」を発表した。最大の焦点の一つは、活断層の評価であった。関電等は、美浜原発と「もんじゅ」の直下に活断層があることを今回初めて認めた。柏崎刈羽原発の教訓に照らせば、活断層の真上にある原発は閉鎖すべきだ。これまで頑なに認めていなかった活断層がにょきにょきと出てきたことについて、過去の評価の誤りについて総括が必要である。
 中越沖地震、能登半島沖地震の実態からして活断層が連動して動くことは現実に起きており、連動を考慮するかどうかは評価の焦点であった。関電は「中間報告」では「参考」として、「断層の連動に関する検討」を行っている。そこではB断層と野坂断層が連動して動いた場合を想定しているが、断層モデルを使った地震動評価しか行っていない。その結果、連動する断層より当然短いC断層の評価を元にした基準地震動SS−1Hを下回るという全くばかげた結論を下し、断層が連動して動いても問題なしとしてしまっている。「断層モデル」による評価は、モデルのたてかたによって地震動の過小評価を招くとこれまでも専門家から批判されていた。関電はなぜ活断層が連動して動くことを想定する場合に、「応答スペクトルに基づく地震動評価」を行わなかったのか明らかにすべきである。当然まず第一に、従来の方法で評価すべきである。また、大飯・高浜原発の沖合いに接近して存在するF−B断層とF−A断層の連動も対象外としてしまっている。さらに、美浜原発に最大の影響を与えると考えられる柳ヶ瀬断層(政府の地震調査研究推進本部の評価100q以上)の影響については一切考慮していない。
 今回、基準地震動を450ガルから600ガルに引き上げたが、機器の耐震補強工事も必要ないという。しかし関電の評価手法でも、機器の「安全余裕」は小さくなっている。美浜1号機では、制御棒の挿入性では基準値1.8に対し評価値が1.73、蒸気発生器・支持構造物の構造強度では基準値444に対し382と接近し「安全余裕」は残りわずかとなっている。原子炉容器・支持構造物の構造強度については、高浜1号機では385(基準値)に対し317(評価値)と接近し、大飯1号でも385(基準値)に対し370(評価値)と余裕がなくなっている。断層が連動して動いた場合には、これらは基準値を上回り耐震安全性を確保することはできないに違いない。そのために、断層の連動性を頑なに否定している。
 このように、活断層の連動を否定するデタラメなバックチェック報告書をふところにしのばせ、この耐震問題と全く切り離して、プルサーマル本契約について福井県の了承を取り付けた。相も変わらず姑息なやり方だ。福井県は、数時間後にはバックチェックの報告書が提出されることを知りながら、このようなやり方を容認した。
 関電の「平成20年度関西電力グループ経営計画」によれば、原子燃料の費用は、ウラン燃料だけを使用していた2007年度推定実績561億円に対し、2008年度で838億円、2009年度で900億円と跳ね上がっている。この2年間の増加分約600億円がMOX燃料製造費と考えられる。電気料金から莫大なカネをつぎ込み、危険なプルサーマルへの道に踏み出そうとしている。
 私たちは、地震と原発の問題に関心をもつ人々、六ヶ所再処理工場に反対する広範な人々と連携しながら、福井の人々と共に、関電の危険なプルサーマル実施を阻止するために今後とも全力をあげて取り組んでいく。

(08/04/01UP)