8月3日 プルサーマル国との交渉報告
東電は法律をねじ曲げて、プルサーマルを開始しようとしている
使用済燃料の「貯蔵」は「処分の方法」ではない(国)
「貯蔵」は「処分の方法」(東電)
このままプルサーマルが開始されれば、福島県は核のゴミ捨て場になる
国は3日の交渉で、
「5日までに法解釈について東電に確認する」と約束したのに、
            「6日の午前中に東電と会う」と今日返答。全く卑劣な保安院!
−6日午前には福島県知事がMOX装荷を容認ようとしています−

 
 8月3日、全国から794団体もの団体の意思を結集して、午後1時から3時過ぎまで、参議院議員会館の地下会議室で国との交渉を行った。市民側は、佐賀、愛媛、静岡、福島、宮城の現地からと、福岡、大阪、京都、首都圏から約40名が参加した。国会議員は、福島みずほ、吉田忠智、大河原雅子、服部良一の4名の議員が参加された。また、来日中の米国のケビン・キャンプスさんも参加された。この交渉は、福島みずほ議員の尽力によって実現した。
 国側は、資源エネ庁、保安院、内閣府政策担当室などからの5名だった(参加者の所属と氏名は末尾)

 はじめに、佐賀の石丸さんが質問・要請書を提出した。昨年の420団体の2倍近くになる794団体の提出団体となった。これは、佐賀、福岡から発せられた熱い思いが全国に伝播し、なんとしてもプルサーマルを止めたいという意思が結集したものだった。

 交渉を通じて浮き彫りになったのは、「プルサーマルは国策なので凍結しない」と紋切り型の官僚答弁しか繰り返すことのできない国の姿勢だ。この国の核燃料サイクル政策、原子力政策がいかに腐りきったものであるかを印象づけた。交渉で明らかになった国の無責任な姿勢を各地で宣伝し、県や立地町等に伝えていこう。
 差し迫る福島T−3号機のMOX装荷をくい止めるために、連携を強めていこう。

 以下に、交渉のポイントを報告する。

◆法律の解釈をねじ曲げる東電
 使用済燃料の「貯蔵」は「処分の方法」ではない(国)
 「貯蔵」は「処分の方法」(東電)
 「5日までに東電に確認する」(国)−まだ国は何もやっていない!
 国は、使用済燃料の「貯蔵・管理」は「処分の方法」には当たらない、法的に違うと明確に回答した。しかし東電は、市民との交渉で、「貯蔵・管理」は「処分の方法」に当たるとし、超長期の使用済MOX燃料のプールでの貯蔵を正当化しています。交渉では、「東電は法律をねじ曲げている」「国は東電を指導すべきだ」「そんな電力会社にプルサーマルを実施する資格はない」と参加者は追及した。保安院検査課は、「指導はできないが、コミュニケーションはする」等と平然と話しながらも、5日の木曜日までにその結果を福島議員事務所に報告することになった。「法をねじ曲げるような東電にプルサーマルをやらせないように求める」と改めて要望すると、「理解しました」と応えた。
 しかし、なんと5日午後2時現在でも、保安院は東電に連絡さえしていない。
 福島県や立地町に対し、東電の解釈が国と異なっていること、東電が法をねじ曲げていることを確認をするよう要求しよう。

◆再処理の相手先は実体のない「国内の再処理事業者」
 使用済燃料の処分の方法については、「処分の方法」と「相手方」を記載することが国の法律で求められている。しかし、1998年の東電・関電のプルサーマル申請書からは、「相手方」が書かれていない。この問題について、保安院審査課は、処分の方法は「再処理」、相手方は「国内の再処理事業者」と回答した。「『国内の再処理事業者』とは一体なんという会社名なのか」「具体的に固有名詞をあげてほしい」と問うと、「国内の再処理事業者」と一般抽象名詞を繰り返すだけだった。「国内の再処理事業者」とは、なんの実体もない幽霊団体に過ぎない。国会議員を含め、参加者はそんなことが法的に許されるのかと追及した。結局、これには全く応えることができないかった。ここでは、保安院と電力会社が一体になって、法律をまったく都合の良いように解釈している異様な姿が浮かび上がった。

◆第二再処理工場の検討は何も進んでいない
 使用済MOXの処理の方策は、2005年の原子力政策大綱で、六ヶ所再処理工場や「もんじゅ」の進ちょく状況を踏まえて2010年頃から検討を開始することになっている。これについて国は、2010年頃からの検討は「まだ開始されていない」と認めた。第二再処理工場の検討はどうなっているのか。内閣府の職員は上記の政策大綱の文言を一般的に繰り返すだけだった。他方では「5社協議会で検討を進めている」と、検討が進んでいるかのようなことを言い出したので、具体的にどう進んでいるのかを聞いた。すると答えられない。地元からの参加者は、「去年から、何も進んでいないではないか。無責任すぎる。地元は生命がかかっているんだ」と厳しく批判した。「もんじゅ」の運転状況は関係がないような発言をしてみたり、まったく軸が定まっていない。「「もんじゅ」は関係ないのか」と確認すると、あわてて「いえ、『もんじゅ』の運転実績も関係する」と答えるだけだ。六ヶ所再処理工場も「もんじゅ」も行き詰まっている現実の中で、第二再処理工場の検討も開始できず、プルサーマルだけなぜ開始できるのか、官僚達の無責任な姿勢に怒りが起きた。

◆「使用済燃料プールの高経年化評価はやっていない」
 使用済MOX燃料は、どこにも運び出すところがなく、原発のプールで超長期に保管される。米国では、原発の老朽化に伴って、プールの放射能汚染水が漏えいし、地域の環境を汚染し社会的に大問題になっている。日本の使用済燃料プールでは長期の安全性確認は行われているのか。これについては、当初保安院検査課は、「高経年化技術評価をやっています」と答えた。しかし、「プールのコンクリート評価は、代表部位になっておらず、具体的には評価していないではないか」と問われると、「具体的評価の仕方までは知らなかった・・・」等と小声で答え、プールのコンクリート評価はやっていないことをしぶしぶ認めた。

◆米国のプール水漏えいの実態と日本のプール管理については
 「保安院内部の既存の非公開の検討会で情報を集めているだけ」
 「特別に委員会や調査チームは作っていない」
 米国で深刻なプール水漏れが起きている問題について、国としてどのような対応をとっているのかと問うた。すると「最近になって調べ始めている。『安全情報検討会』で検討している」との回答。聞き慣れない検討会の名前が出てきたので、具体的に説明してほしと問うた。すると、保安院と原子力安全基盤機構(JNES)が日常的に行っている検討会で、傍聴もできない、非公開の、既存の検討会だった。高浜町長は別途、国に対して、米国での漏えい問題などについて国の対応を質問していた。高浜町から私達が聞いたのは「国は、委員会か調査チームで検討している」ということだった。しかし、内実は、既存の検討会で非公開で情報を収集しているだけだったのだ。
 私達は、公開の場で、米国でのプール水漏えいについて検討を行うよう強く求めた。

◆「プルサーマル開始と使用済MOXの処分問題は関係ない」
 交渉の最後に「いったい、プルサーマルの実施条件は何なんですか」と質問があがった。資源エネ庁は「平和利用、原子力開発に支障がない、技術的能力がある、災害防止上の観点の4つがクリアされれば許可される」などと答えた。参加者からは「使用済MOX問題の処分の方策も決まっていないのに、それでもプルサーマルが開始できるのか」「ゴミ問題は放置していいということか」と怒りの声があがった。

 交渉後の交流会で、6日にも知事がゴーサインを出し、20日頃からMOX装荷が予定されている福島T−3プルサーマルを止めるため、連携していこうと確認しあった。

国側の出席者
内閣府政策担当室 金子忠利/ 保安院検査課班長 野口康成/ 資源エネルギー庁課長補佐 有馬伸明/ 保安院審査課班長 氏原拓/ 保安院検査課長補佐 金子純一

(10/08/05UP)