関西電力のコジェマ社製MOX燃料の不合格
及びそれに関連する問題に関する
経済産業省への質問書


経済産業大臣 平沼赳夫 様
2002年2月

 昨年(2001年)12月26日に関西電力は記者会見を行い、コジェマ・メロックス社で製造中のMOX燃料(16体分)の加工を中止すると発表しました。その理由は、このMOX燃料に関する関西電力の品質保証活動が貴省の要求を満たしていると確認できないゆえ、検査申請が行われても合格にすることはできないと貴省が判断したためです。
 まずこの経過と理由について、下記の質問を行います。また、ここで問題になっているMOX燃料の品質に関わる問題と密接な関係のあるコジェマ社の検査法について質問します。さらに、貴省の依頼によって原子力発電技術機構がMOX燃料の試験研究を行った結果が報告されていますので、その結果の示す問題点について質問します。

1.関西電力のコジェマ社製MOX燃料が不合格と判断された理由について
当該MOX燃料についての貴省の判断は平成13年(2001年)11月29日付けの関西電力への回答に示されています。すなわち、「電気事業法施行規則第78条の『品質保証に関する説明書』により当省が確認すべきことを定めている点、すなわち貴社自らがMELLOXへの事前監査及び評価を行うこと、製造期間を通じてMELLOXへ社員を派遣し、製造状況及び品質保証活動について確認を行うことが満たされていると確認できないため、申請が行われても合格とすることはできないと判断する」とされています。

(1)ここでいう「品質保証に関する説明書」の提出要求は、平成12年(2000年)7月14日付け通商産業省通達「MOX燃料体に係る輸入燃料体検査について」の第5条の「但し書き」が適用された結果と考えてよろしいですか。

(2)関西電力に対する貴省の前記要求「貴社自らがMELLOXへの事前監査及び評価を行うこと」は、製造開始前の時点からなすべき活動を要求しています。他方、当該MOX燃料は通達が出された時点ではすでに製造中であり、第5条の「但し書き」はそのようなMOX燃料のために付けられたものと考えられます。両者の整合性はどうなっているのですか。

(3)貴省の前記要求にある「製造期間を通じてMELLOXへ社員を派遣」とは、どの程度の頻度を要求しているのですか。

(4)今回の貴省の判断をそのまま受け止めれば、当該MOX燃料は通達が出された時点で直ちに不合格になっていたものと考えられますが、基本的にはそのような理解でよろしいですか。

2.プルトニウム・スポットの検査方法について
 平成12年(2000年)7月の通産省通達は、1999年のBNFL事件を受けて、MOX燃料の品質に万全を期すために出されたものと私たちは理解しています。今回の当該MOX燃料に関しては、事実上の事前審査が行われたことになっており、そこでは当然にして品質そのものも何らかの形で事実上審査の対象になったものと考えられます。そこで、まずMOX燃料の品質にとって本質的に重要な位置にあるプルトニウム・スポットの検査法について質問します。

(1)コジェマ社ではプルトニウム・スポットの検査方法として化学エッチングを採用しています。貴省はこの事実を関西電力から聞いたと思いますが、貴省がこの事実を知ったのはいつの時点ですか。

(2)プルトニウム・スポットの検査法としての化学エッチングの精度についてはどのように認識していますか。例えば、化学エッチング法でプルトニウム・スポットの径が100μm以内にあると結論されている場合、その結論は信頼できると考えられますか。

3.MOX燃料に関する原子力発電技術機構の試験研究結果について
 貴省は財団法人原子力発電技術機構に対してMOX燃料の品質等に関する検査を行うよう委託しています。その結果当機構から、平成11年(2000年)度及び平成12年(2001年)度に実施された「燃料集合体信頼性実証試験に関する報告書」がそれぞれ平成12年3月と平成13年3月に出されています。試験対象となったのは、
12年度:ベルゴ・ニュークリア製MIMAS方式によるBWR用MOX燃料
及び、BNFL製PWR用MOX燃料
 13年度:ベルゴ・ニュークリア製MIMAS方式によるBWR用MOX燃料
      及び、MIMAS方式による製造会社不明のPWR用MOX燃料
となっています。

(1)上記報告書には、「本事業は経済産業省資源エネルギー庁原子力安全・保安院からの委託で実施したものです」と書かれていることからしても、貴省としてはこの報告内容についてどのように判断しているのですか。その結果を重視していると考えてよいですか。

(2)この報告書には、2社のMOX製造会社の名前が明記されています。MIMAS法を採用している唯一名前の明記されていない製造会社はコジェマ社と考えてよいですか。
 また、その検査対象であるPWR用MOX燃料ペレットは、コジェマ社で関電用につくられる製造過程で2000年3月と4月に不備が発見されて廃棄になった2体分のMOX燃料ペレットと考えてよろしいですか。

(3)平成12年のPWR用MOXペレットを用いた試験研究では、ペレット断面から1mm四方領域をいくつか選んでそこのプルトニウム濃度について調べています。選んだ個所は図4.4.1-5(65頁)に記され、その代表的な領域の写真が写真4.4.1-10(119頁)及び写真4.4.1-11a〜c(120〜122頁)で示されています。また、その代表的写真領域のプルトニウム濃度分布を示したグラフが図4.4.1−9a(75頁)に示されています。これらについて以下の質問を行います。

(a)図4.4.1-9aのグラフを見ると、第1次混合粉末のプルトニウム濃度約25%がそのまま残っていることが示されています。事実、53頁には「プルトニウム濃度25%付近のピークは1次混合粉末のプルトニウム濃度に近い値であり、プルトニウムスポットに起因するピークと考えられる」と説明されています。すなわちこのグラフは、MIMAS方式の第2次混合過程がうまく行っていないことを示しているのではないでしょうか。
(b)その1mm四方領域の平均プルトニウム濃度を計算すると、高富化度の場合約18.0%にもなっています。これは通常の富化度約8%の2倍以上ですが、これほどまでに濃度に偏りがあるのは異常ではないですか。貴省としてはどれくらいまでの偏りまでなら妥当と考えているのですか。
(c)このような高濃度の領域がどの程度まで広がっているかという確認はなされていますか。
(d)化学エッチングでこのような濃度測定はどのような精度でできるのですか。

(4)原子力安全委員会のいわゆるプルサーマル指針(「発電用軽水型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について」平成7年5月 原子炉安全基準専門部会)には、プルトニウム・スポットについての記述はあるものの、高濃度領域に関する記述はありません。プルトニウム・スポットが存在する場合の試験研究もまだ継続中ですが、かなり広い高濃度領域が存在する場合の危険性については試験研究、安全確認はなされていますか。あるとすればどこに書かれていますか。

(5)このようなプルトニウム濃度の著しい偏りは、MIMAS方式における第2次混合過程がうまく行かないことを示しており、この会社の製造能力が低いことを示しています。そのようなMOX燃料を使った場合の安全性は保証されないゆえ、この会社で製造中の東京電力のMOX燃料は、輸入燃料体検査を待つまでもなく事実上の事前審査で不合格との判断を示すべきではないでしょうか。このようなMOX燃料は直ちに廃棄にされるべきではないでしょうか。



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