関 西 電 力 へ の 申 入 書
BNFL社との新たなMOX燃料製造契約は絶対に結ばないでください



 関西電力株式会社社長 石川 博志 様
                                                2000年9月25日
                                                グリーン・アクション
                                                美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

 イギリスでの新聞報道によれば、BNFL社の代表が9月22日にイギリスを発って日本を訪れています。訪問の目的は、新MOX製造工場SMPに関する契約を、日本から取り付けるためです。その交渉の最も有力な相手が貴社であること、そして貴社がその要請に応じる可能性の高いことは、これまでのいきさつや状況から十分に推察されるところです。
しかし、データねつ造を行ったあのBNFL社と契約の話し合いをすること自体、とんでもないことです。貴社はこの事件について、福井県民に説明することすら、いまだに何も行っていないではありませんか。あの事件の処理でさえ、まだ終わっていないのです。
 まして、そのような契約を結ぶことは、イギリスやヨーロッパの人々を放射能汚染で苦しめる道を進むことであり、6月のOSPAR決議が示した反再処理・脱プルトニウムへと向かうヨーロッパの流れに逆行することになります。また、私たちは、日本で危険なプルサーマルを強行することに反対します。
 BNFL社と新たなMOX契約を絶対に結ばないよう、そして結ばないという意向をすぐに明確に表明するよう強く申し入れします。

 昨年のMOXスキャンダルが契機となって、BNFL社は史上かつてなかったほどの経済的困難に陥っています。3億3700万ポンドの大赤字のうち、約3/4はMOXスキャンダルに由来しています。そして、これまでのMDF工場での商業生産はやめることを、BNFL社はすでに9月14日に発表しました。
 莫大な費用を投じて建設した新MOX工場SMPには、現在、設備能力の数パーセント分の契約しかなく、新たな契約がとれなければ、イギリス政府の操業許可がおりる見込みはありません。もしSMP工場が操業できなければ、プルトニウムを使用する道が塞がれるため、プルトニウムを抽出するというソープ再処理工場の目的が失われ、再処理工場自体が操業停止になる可能性が高まります。そうでなくても、BE社(英国エネルギー社)のように、すでに再処理中止の意向を示している有力契約者(全契約の1/3)も出ているのです。
 この状況の中で、BNFL社としては、再処理・MOX燃料生産という従来の方向から転換し、新たに、核廃棄物処理の業務を開発する方向をとるべきであるとの世論が高まっています。しかしノーマン・アスキュー社長は、従来どおりの道を進む最後の可能性を求めて、何としても年内に日本(関西電力)と新規契約を結び、来年には新MOX工場SMPの操業を開始したいとの意向を明らかにしました。

 スポットライトはまさに貴社に注がれているのです。そして、次のようないきさつや状況を考慮するならば、貴社は新規契約を結ぶ道を選ぶのではないかという強い疑いを、私たちはもたざるを得ません。
 今年7月11日に貴社と政府は、高浜4号機用MOX燃料を英国に返還することで、BNFL社及び英国政府と合意しました。それまで英国政府は、燃料の安全性には問題ないとして、返還に同意することを渋ってきました。その英国政府が返還に同意した裏には、新たなMOX燃料契約を日本から獲得したいという意向があったことは確実です。貴社と政府は、NII(英国原子力施設検査局)からの勧告に対するBNFL社の回答がまだ出そろっていない段階で、早々と返還についての相手の意向を認め、合意しました。約64億円の補償金のうちの半分は、現金での受け取りでなく、新規MOX契約のオプションとして残されています。これもBNFL社からの強い要請があったためと、貴社の岸田常務は7月11日に説明しました。この事実は、客観的には、高浜4号用MOX燃料返還と新規MOX燃料製造契約との間に、ある種の取引があったことを如実に示しています。
 貴社は、昨年のMOX燃料データ不正事件の経過の中で、BNFL社を全面的に無条件に信頼する立場をとってきました。今回7月11日、契約指名停止を解除した際には、その理由として、「BNFLにおける再発防止対策の取り組みに進捗が見られたこと」を挙げています。この理由の意味するところ、行き着く先が、SMP工場との新規契約にしかならないことは明らかです。 
 しかしBNFL社には、これまでの再処理・MOX燃料製造という方針をとる限り、もはや未来はありません。MOX燃料スキャンダルによって完全に馬脚を現し、その後も信じられないほどのさまざまな腐敗した姿が、人々の目に明らかになっています。イギリスとヨーロッパの世論ばかりでなく、アメリカまで含めたBNFLとの契約者からさえも、支持・契約を次々と失ってきています。
 BNFL社はこれまで、再処理工場などからの放射能たれ流しによって、周辺の人々や北東大西洋沿岸の人々を苦しめてきました。これに対して、今年6月のOSPAR会議では、再処理に否定的な決議が圧倒的な賛成で採択されました。この垂れ流された放射能には、貴社に由来する分も相当なウエイトで混ざっているのです。
 貴社が新たなMOX契約をBNFL社と結ぶならば、それはヨーロッパの放射能汚染を継続する道を選んだことを意味し、ヨーロッパの人々の思いを真っ向から否定するものとなります。いまこそ、一歩先を見通した立場に立って、新MOX契約を断り、BNFL社の方向転換を促すべきときです。そうしなければ貴社は、イギリスの民衆と議会からの、さらにヨーロッパからの大きな非難の的となるでしょう。その選択はまた、日本で多くの人たちが反対しているプルサーマルの泥沼に、さらに深く足を踏み入れることを意味しています。
 BNFL社との新規MOX契約を絶対に結ばないよう、そして結ばないという意志を早急に明確に表明するよう、再度強く申し入れします。

                                     連絡先
                                     グリーン・アクション(代表:アイリーン・美緒子・スミス)
                                             TEL:075-701-7223; FAX:075-702-1952
                                     美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(代表:小山英之)
                                             TEL:06-6367-6580; FAX:06-6367-6581 



トップ