高浜4号用データ不正MOX燃料の返還輸送に関する質問書と回答


1. 放射性輸送物設計承認申請書(平成13年8月23日付)に関して
(1)この申請書の放射性輸送物に「収納する放射性物質」とは、現在高浜4号のプールに置かれているデータ不正MOX燃料のことですか。この申請書のどこで、その特定はなされているのですか。
  ↓
本輸送物は高浜4号機MOX燃料返送のために設計したものであり、仕様の設計にあたっては当該燃料の放射性物質の燃料の仕様を念頭において定めている。
(仕様だけですね)仕様だけである。

(2)添付表「収納する放射性物質の仕様」に記述されているプルトニウムやアメリシウムの放射能強度は、いつどこで測定されたものですか。
  ↓
高浜MOX燃料輸送時の数値を包括する数値を記載している。
(いつ、どこで)数値そのものは製造時にデータがございますので、MOX燃料製造時のデータだと。場所は製造ですから工場。

(3)この放射能強度から計算すると、核分裂性プルトニウム富化度は約5.1%となって、その仕様表に書かれている数値「5.2以下」と整合します。ところが他方、高浜3・4号の設置変更許可申請書(1998年5月)に書かれている数値から計算したこの値は約6.1%となります(注)。1998年4月に貴社と公開討論会をもったときの回答でも約6.1%となっています。申請当時の6.1%がなぜ今回5.1%に変わったのですか。
  ↓
設置変更許可申請書では、複数の燃料仕様を想定した一般的な燃料仕様を記載したものであり、当容器設計承認申請書の数値とは必ずしも一致しない。
 (申請書出す時点でデータもっていたか)・・・データを出す時点で、このデータは持っていた。
 
(注)同設置変更許可申請書8(3)-95頁によれば、プルトニウムの核分裂性プルトニウム割合が約68%、燃料集合体平均(全)プルトニウム富化度が約9wt%となっています。これから核分裂性プルトニウム富化度は9×0.68=6.12%となります。  
 ちなみに、前記放射能強度から計算すると、核分裂性プルトニウムの割合は、アメリシウムを除いた場合と含めた場合でそれぞれ73.0%、74.0%となっています。
さらに、米国核不拡散局長Trisha Dedik からNRCの国際計画局Ronald D. Hauberに宛てた手紙によれば、貴社からの輸送物ではU.S.-originのウランが3,439,377g、プルトニウムが255,086g、合計3,694,463gとなっています(この合計は前記仕様表にあるウラン・プルトニウム重量470×8=3760kg以下と整合しています)。この数値から全プルトニウム富化度を計算すると、255,086/3,694,463=6.9%となります。これに前記アメリシウムを含む核分裂性プルトニウム割合をかけると5.1%となり、前記放射能強度からの計算値に一致します。


2. 返還に関連して

(1)返還予定のMOX燃料集合体8体の法的所有者は誰ですか。返還の場合の荷主は誰ですか。
  ↓
高浜発電所に保管しているMOX燃料に含まれているプルトニウムは当社のものであるけれども、燃料集合体としては当社のものではないと理解しております。それから、複数の所有者と我々は理解しています。荷主の意味が理解できませんけれども、危険物船舶運送及び貯蔵規則で、規定されているなかでは荷送人という記載がございまして、荷送人は当社関西電力になります。

(2)返還にあたって、国内で必要となる許認可等の手続きリストを書き出してください。
  ↓
今後国内で必要となる手続きにつきましては、経済産業省への輸出許可申請、これは外国為替及び外国貿易法に基づきまして、海外へ輸出しようとする場合は経済産業大臣に対して行う、申請です。それと国土交通省への、放射性輸送物の安全確認についての申請。

(3)返還輸送時に問題が生じた場合の最終的責任は誰にあるのですか。
  ↓
最終的な運送時に、問題が生じた場合の責任と言うことですが、当社としては最終的な責任というのではなく、先程から申しております。危険物船舶運送及び貯蔵規則規定される荷送人としての、放射性物質等の盗取等による災害の防止のために、措置をとる責任があり、また原子力災害の発生・拡大を防ぐために万全の措置をとる責任があると認識しております。法律に基づきまして、いろいろな責務が我々に生じると言うことでございます。

(4)返還時、税関=国に支払う税金は誰が支払うのですか。
  ↓
今回の輸出にかかる税金は存在しません。

(5)返還したプルトニウムは新MOX燃料として再び日本に返還されると断定している、米エネルギー省の書簡の記述は、貴社が日本政府に伝えたものですか。(外務省は3月6日、参議院の福島瑞穂事務所宛にBNFL社MOX燃料の日本からイギリスへの返還について以下の電話回答をしています:「日本側は米側に対し、日本から英国へのMOX燃料の移転について事前同意を求めたのみ。それについて、米側から問題なしとの回答を得ている。英国から日本側への再移転については日本側からの提案には含まれていない。それは関西電力の個別的な契約の問題である」。)
  ↓
先般得られました米国の同意は、あくまでMOX燃料の我が国から英国への移転にかかる承認であったと承知しております。なお当社と致しましては、当該燃料中に含まれますプルトニウムは、いずれ欧州においてMOX燃料に再加工して日本に持ち帰るつもりです。で上記の、当社のこのような希望につきましては、参考情報として米国政府にも伝わっているものと承知しておりますけれども、今回の申請はあくまで我が国から英国への移転にかかる申請への承認であったと承知しておりまして、外務省が回答された内容と当社の認識に相違はないというふうに考えております。

(6)前記米エネルギー省の記述は、「地元をはじめとする皆様のご理解を得つつ検討する」という貴社の他の表明と明らかに矛盾するのではありませんか。
  ↓
米国同意の詳細については、当社は承知していないということで、米国の?からNRC局長の書簡の内容については承知しておりません。今後のプルサーマルの実施については、返送を確実に実施した上で、地元の皆様のご理解を得ながら検討させていただくと考えております。

(7) 貴社がBNFL社とMOX燃料の返還時期を決めるにあたって、セラフィールド到着は10月以前にありえないという認識でよろしいでしょうか。
  ↓
具体的な返送の次期は未定でございまして、今後日程を両者間で調整する予定でありますけれども、当社と致しましては可能な限り早期に返送したいと考えております。で、当社はご指摘の裁判の詳細については承知しておりません。内容についてコメントする立場にもございませんが、当社からBNFLに照会したところ、MOX燃料の返送時期に関してご指摘のような制約条件があるわけではないときいております。

(注)2001年12月3日、国際海洋法裁判所のTHE MOX PLANT CASEの判決文に以下の文章があります。国際海洋法裁判所の判決文はイギリス政府の以下の保証を確認しています。従って、アイルランド政府は2002年10月より以前にセラフィールド施設に放射性物質の海上輸送はないと認識しています。

78. Considering that, at the public sitting held on 20 November 2001, the United Kingdom has stated that "there will be no additional marine transports of radioactive material either to or from Sellafield as a result of the commissioning of the MOX plant";
78.2001年11月20日に開かれた法廷で、英国は「MOX工場[SMP]の運転開始の結果として、セラフィールドへも、セラフィールドからも放射性物質の追加的な海上輸送はない」と陳述したことを確認する。

79. Considering that at the same sitting the United Kingdom stated further that "there will be no export of MOX fuel from the plant until summer 2002" and that "there is to be no import to the THORP plant of spent nuclear fuel pursuant to contracts for conversion to the MOX plant within that period either" and clarified that the word "summer" should be read as "October";
79.同じ席で、英国はさらに「2002年夏までは、その施設からMOX燃料の搬出はないこと」および「その期間内に、MOX燃料を製造する契約に従って、使用済燃料をソープ再処理工場に搬入することもない」と陳述した、および「夏」という言葉は「10月」と読まれるべきであることが明らかにされた、ことを確認する。

80. Considering that the Tribunal places on record the assurances given by the United Kingdom as specified in paragraphs 78 and 79;
80.裁判所は、78項と79項の記述を、英国によって与えられた保証として公判記録に残すことを確認する。

(8). 2002年2月5日付けのJapan Times紙の以下の記事(注)に照らして質問します。
(a)今回の輸送では、1999年の輸送より厳しい防衛措置が取られるとのことですが、この認識でよろしいでしょうか。
(b)具体的にどのように厳しくなるかを教えてください。
  ↓
ジャパンタイムスの記事ですが、当社はジャパンタイムスからの取材に対して、ご指摘の記事にあるような回答は行っていない。で、返送時の防護措置については、過去2回MOX燃料輸送と同様の方法が採られる予定であると聞いているが、具体的な方法については未定である。ジャパンタイムスにつきましては訂正記事を出していると聞いています。

 (注)"We hope to have the fuel returned to England sometime in 2002. We're discussing security measures at the moment, but they will be much stricter than the security measures taken in 1999 when the ship came over," Kepco spokesman Akira Yamamoto said.
(注)「私達は2002年のある時期にその燃料が英国に返還されてしまうことを望む。私達は現在防衛措置を議論している。しかし、船が[日本に]来た1999年に取られた防衛措置よりもっと厳しくなるだろう」と関電広報のアキラ・ヤマモト氏は述べた。


3.貴社のMOX燃料輸送容器TN-12/2-209とTN-12/2-211は平成12年9月14日に容器承認を受けていますが、この2つが自主検査を受けた最新の年月日はいつですか。
  ↓
TN−12/2−209のほうは、平成13年8月30日。TN−12/2−211のほうは、平成14年の1月22日。


4.今後の対応について
(1)今後のMOX燃料調達計画については、データ不正MOX燃料返還の後に、地元や市民の意見を聞いてから考えるということでよろしいですか。
  ↓
返送を確実に実施した上で、地元をはじめとするみなさまのご理解を得ながら、したいと考えております。

(2)この高浜4号用MOX燃料では、燃料設計に係わる数値が偽造されていたため、実際にどのような燃料ペレットが製造されたのか把握できない状態にあり安全上の問題を含んでいました。そのような燃料を強引に使用しようとしたことに対して、地元や市民に対する陳謝はいまだになされていません。これでは次のプルサーマル計画を立てても到底地元や市民の了解を受けることはできないはずですが、この点はどう考えていますか。
  ↓
BNFLデータ不正問題における当社の対応が十分でなく、これまで培ってきた当社の原子力発電に対する信頼を大きく損なったことに対し、社会的な信頼を回復するよう今後とも努力していきたいと考えている。
(謝罪がされていないが)リーフやパンフレット類においても、深く反省すると共にお詫び申し上げるとはいろんな場面で我々と致しましては説明させていただいていると認識しております。

(3)貴社は1999年当時、高浜3号のデータ不正が明らかになった後でも、高浜4号にはデータ不正はあり得ないと頭から決め付ける態度をとり、市民ばかりか政府に対してもデータ隠しを行いました。もし今後プルサーマルの理解を広く得るつもりであるのなら、MOX燃料に関する一切のデータを公開することが基本になければならいはずですが、この点はどう考えていますか。
  ↓
高浜3号の調査段階で知り得た単純なデータ不正の手口及び当時得られた検査員の証言に基づいて、調査の方向を絞り込んだために、高浜4号の調査で通産省や情報連絡で判断を誤りましたけれども、不正がありえないとあたまから決めつけていたわけではないと考えております。データの公開については、BNFLとの契約上の守秘義務により、お答えできないと言うことでございます。

         2002年3月7日

グリーン・アクション     (代表:アイリーン・美緒子・スミス)
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 (代表:小山英之)



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