原子力安全・保安院への要望書
高燃焼度ウラン燃料で放射能漏えい事故が頻発しています
高燃焼度ウラン燃料を使用する伊方3号プルサーマルを中止してください
漏えい原因が究明されるまで、
全ての原発で高燃焼度ウラン燃料を使用しないでください


原子力安全・保安院長  寺坂信昭 様
2010年3月1日

 原発のウラン燃料、特に高燃焼度燃料からの放射能漏えいが続発しています。私達は、放射能漏えい事故の頻発と、とりわけプルサーマル予定の伊方3号機で漏えい事故が起きていることに強い不安を抱いています。同時に、漏えい事故の原因も究明されていないのに、スケジュールを最優先にして、放射能漏えいの危険性がある高燃焼度ウラン燃料を使用したままプルサーマルが開始されようとしていることに強い憤りを感じています。

 2008年8月に大飯4号機、2009年8月に大飯2号機(集合体2体)、同年11月に伊方3号機で1次冷却水中の放射能濃度が高まり、新型燃料である高燃焼度燃料集合体(ステップ2)からの漏えいが確認されています。貴院は伊方3号機の漏えいに関連して出した文書「高燃焼度17行17列型燃料集合体の使用に当たっての確認について(指示)」(平成22・02・03 原院第3 号)で、「これまで3件(4体)の放射性物質の漏えい事象が発生」とこれらの漏えい事故を確認しています。さらに、今年2月1日には大飯1号機でも1次冷却水中の放射能濃度が高まり、5日には原子炉を停止しています。これも高燃焼度燃料集合体である可能性が高いと考えられます。高燃焼度燃料からの漏えいが相次いでいるという事実を重視するべきです。
 漏えいを起こした燃料棒は、大飯4号機、伊方3号機では1本ずつでしたが、大飯2号機では2つの集合体で合わせて4本もの漏えいでした。関西電力と四国電力は、大飯2号機の1体の集合体や伊方3号機の集合体でファイバースコープによる目視検査を行い、最下段の支持格子で支持板やばね板と燃料棒との間に隙間があることを確認したと発表しています。そして、それだけを理由に、そこで微小振動が起こり、ピンホールができたと推定しています。しかし、大飯4号機、および大飯2号機で漏えいしたもう1体の燃料集合体では、隙間等が確認できず原因の推定さえもできていません。また隙間を確認した燃料棒でも、その位置でピンホールが生じていることは確認されていません。このように、原因推定は今のところまったくの憶測にしか過ぎません。たとえ隙間が原因であったとしてもなぜ隙間ができたのかも分かっていません。

 貴院は2月5日に「四国電力株式会社伊方発電所第3号機における燃料集合体からの一次冷却材中への放射性物質の漏えいについて」という文書を出しました。そこでは、高燃焼度燃料の特性等の問題には一切触れず、四国電力が出した「最下部支持格子内の隙間発生による微少振動での摩耗」との推定原因を妥当なものとし、同一設計で同一時期に製造された燃料については使用しないが、製造時期の異なる高燃焼度燃料については使用するとした対策を「適切なもの」として容認しています。しかし、上記に述べたように原因は特定できておらず、まず原因究明を最優先するべきです。

 貴院は、先にあげた文書で「原子炉運転中の燃料集合体からの漏えいについては、一次冷却材中のよう素及び希ガスの濃度の監視により検知が可能であり、(中略)、適切な頻度で監視を行うことにより所要の対応ができるものです」と放射能漏えいをはじめから容認する立場をとっています。しかし「第2の壁」である燃料被覆管で漏えいが起きることを容認する姿勢は、まず「異常の発生を防止する」という「多重防護」の思想を投げ捨てるものです。また、穴の開きかけた燃料棒は、事故のときに安全解析と別の挙動をする危険性があります。伊方3号機では、漏えいを起こした燃料と同一設計で製造時期の異なる燃料を使うとされています。プルサーマルを予定している伊方3号機で、放射能漏えいの危険性の高い高燃焼度燃料とMOX燃料を同時に使うことは、想定外の事態を引き起こす可能性を高め、とりわけ危険です。
 私たちは以下のことを要望します。これらについて貴院の見解を示してください。

要  望  事  項

1. 製造時期が異なるという理由だけで、漏えい集合体と同一設計の高燃焼度燃料を伊方3号機で使うのは無謀です。
放射能漏えいの危険性が高い高燃焼度ウラン燃料を用いる伊方3号機でプルサーマルを中止させてください。


2. 高燃焼度燃料で放射能漏えい事故が頻発していることを重く受け止め、漏えいの原因究明を優先させ、その結果を公表してください。

3. 少なくとも原因が究明されるまでは、全ての原発で、高燃焼度燃料の使用を中止させてください。

2010年3月1日

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(10/02/23UP)