玄海3号機プルサーマル審査に関する原子力安全委員会への意見(5)


 玄海MOX炉は基本的に高浜MOX炉と同等との判断で、審査コストを節約し、予定のスケジュールに合わせるとのお立場のようなので、念のため少し立ち入った意見を述べます。
 第1に、ペレットからのFPガス放出率ですが、これはウラン燃料との差異を典型的に示すものです。高浜MOXの第95部会資料では、FPガス放出割合をウランのそれぞれ1.3及び2.5定数倍とするFINEモデル及びFPACモデルが実測値と比較され、これらモデルは妥当だと結論されています(Q3−9への回答)。また、項目6への回答では、フランスの照射データでは、燃焼度が4万(MWd/t)を超えたところでFPガス放出率の大きな増加が見られるがこれは3サイクル目の出力が高かったせいだとされ、4サイクル目で出力を下げて5万2千まで照射しても放出率の増加はなかった例が指摘されています。しかし、P.BlanpainらのTopFuel 2001によれば、MOXのFPガス放出率は燃焼度が4万付近でウランの定数倍ではなく約5倍にも達する異常な挙動を示しています。燃焼度がさらに高まるといったんは下がるものの5万付近で再び4倍程度に上昇しており、前記回答とは異なります。また、出力との比例関係は燃焼度4万以下で成り立つ関係だと新たに指摘されています。回答の基礎である第95-1-8号には、P.Blanpainらの論文は引用されていません。
 第2にプルトニウムスポットですが、Q3−7への回答は余りにもお粗末です。濃度30%のスポット1個が存在する場合の温度上昇を計算しただけで、FPガス放出率への影響は89年の論文を基に「小さいと考えられる」と予想しているだけです。原子力発電技術機構の2001年(H13)3月公表資料では、MIMAS法によるPWR用MOXに濃度25〜30%のスポットが河原の石のようにゴロゴロと存在するのに、そのような状況が検討されていません。
 ずぶの素人でもこれだけの疑問をもつ以上、専門家の会議による詳しい審査が必要です。