質問・要望書
MOX燃料に関する国の具体的審査基準は存在しません
関西電力のMOX燃料の安全性は輸入燃料体検査では確認できません


原子力・安全保安院 地域原子力安全統括管理官 森下 泰 様
2009年12月7日

 貴職は原子力・安全保安院の福井県における統括管理官として、県内の原子力に関して安全を第一に日々活動されていることと思います。
 私達は、高浜3・4号機用MOX燃料の安全性を保証する為の、国の具体的(定量的)審査基準がないことについて深い憂慮の念を抱いています。

 さる11月26日に、私達はMOX燃料に関して国の具体的審査基準が無いもとではMOX燃料の安全性が確認できないという問題について、原子力安全対策課の櫻本課長に質問・要望書を提出しました。課長は、「MOX燃料の安全性については国が一元的に管理している」と述べ、また、「ウラン燃料と比べて安全性に遜色があってはならない」とも述べました。
 高浜3・4号機の輸入燃料体検査について、県の原子力安全専門委員会で議論されることになっており、貴職は保安院を代表してこれまでも委員会にも出席されています。そのため、以下の質問・要望をします。

 MOX燃料については、国の具体的審査基準がありません。10月28日に近藤正道参議院議員事務所で行われた原子力安全・保安院によるレクの場では、保安院・検査課の石垣宏毅・総括安全審査官がこのことを認めました。また、11月6日に関西電力本店で行った交渉でも、関電は原子力事業本部の正式回答としてこのことを認めました。

 ご存知のように、MOX燃料に関する国の法的基準は「発電用核燃料物質に関する技術基準を定める省令」です。第4条がウラン燃料に関する規定で、第5条がMOX燃料に関する規定となっています。例えば、ペレットの「不純物」に関しては、ウラン燃料では炭素、ふっ素、水素及び窒素の4元素が具体的に挙げられ、それぞれ濃度上限値が規定されています。しかし、MOX燃料についてはこのような具体的な規定はありません。
 関電は11月6日の交渉で、「MOX燃料については具体的な元素、基準値は技術基準では示されていない」とし、「ASTM(米国材料試験協会)のMOX用規格、ウラン燃料で定めている不純物を考慮し当社が選定した」と回答しました。
 これは、国の具体的基準がないために、電力会社任せになっていることを示しています。このことは、国の検査であるにもかかわらず、取り上げる元素の種類が電力会社によってまちまちで、関電は40種類、九電・四電は28種類、中部電力は4種類となっている実態が何よりも如実に示しています。関電はまた、「保安院に当社の(不純物)上限値設定根拠を説明し、国が審査を行い妥当と判断したものと考えている」と回答していますが、このこともまた、国の統一的な具体的基準は存在せず、関電の説明が事実上の基準となっていることを示唆しています。
 ペレット内の「不純物」は、被覆管の腐食を促進し、融点を下げるなど燃料の安全性に大きな影響を与えます。それほどに「不純物」が重要な項目であるにもかかわらず、具体的基準が存在しないのです。

 さらに、11月20日に佐賀県で行われた保安院説明会で、出席した保安院・検査官事務所の検査官は、「国の具体的基準はないが、専門家に検討してもらっている」と述べました。しかし、基準もないのに専門家の検討に委ねるだけでは、判断が選任された専門家の意向に左右されるのではないでしょうか。

 また、保安院・審査課は、関電の「輸入燃料体検査申請における詳細設計の妥当性」を検討した資料を公開しています※。そこでは、関電が不純物の上限設定に当たって、一部の不純物についてウランペレットの規格より緩和した上限値を設定していることについて、「メロックスから緩和に対して強い要望があった」と記しています(添付2、2-1頁)。このことは、メロックス社の製造能力の低さに合わせるよう規格が調整されていることを示しています。国の基準もなく、そのため米国の規格に依拠しているとしながら、さらに基準を緩和して、実質はメロックス社のいいなりになっているのではないでしょうか。

 以上のように、MOX燃料について、国の具体的審査基準がないという法的不備は、プルサーマルを開始する条件が備わっていないことを端的に示しています。このような状況を踏まえ、下記に質問と要望を行います。

質    問    事    項
 
1. 保安院は、国の具体的審査基準がないことを、福井県に伝えていますか。
2. 国の具体的審査基準がないなかで、どのようにして関電のMOX燃料の安全性が確認できると考えていますか。
3. 「技術基準を定める省令」第5条1項では、不純物について「各元素の含有量の全重量に対する百分率の値の偏差は、著しく大きくないこと」となっています。この場合、百分率の値自体はどのように決められていますか。また、その値からの「偏差が著しく大きくないこと」はどのようにして確認されているのですか。
4. 関電の輸入燃料体検査について、専門家の検討は、誰が出席し、いつ、どこで、何回ほど行われ、どのようなことが議論になったのか示してください。
5. メロックス社の要求によって、不純物の上限値を緩和することは、製造メーカの製造能力の低さに合わせるように基準が緩められることになるため、本来あってはならないことです。このことについて、貴職の見解を示してください。
6. 福井県原子力安全対策課の櫻本課長は11月26日、「ウラン燃料と比べて安全性に遜色があってはならない」と述べました。国はMOX燃料がウラン燃料と比べて安全性に遜色していないことを、どのように具体的に保証しているのですか。

要    望    事    項

1. ウラン燃料と異なり、MOX燃料に関する国の具体的審査基準がありません。この状況のもとでは、MOX燃料の安全性を確認することができません。そのため、関西電力のMOX燃料輸入燃料体検査では、安全性が確認できないことを認め、その旨表明してください。

2. 関電の輸入燃料体検査について、国の具体的審査基準がないことを含め、県民に説明してください。


2009年12月7日

原発設置反対小浜市民の会 代表:岩本敏行
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之

※「高浜発電所第3、4号機ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料について」(原子力安全・保安院 原子力発電安全審査課)2008年10月30日 総合資源エネルギー調査会、安全保安部会、燃料ワーキンググループ 資料

(09/12/07UP)