関電の原発で事故やトラブルが異常なまでに頻発している現実を重視し
関西電力のプルサーマル事前了解を撤回するよう求める
要  望  書


福井県知事 西川一誠 様

 12月15日、調整運転中の大飯2号機で、2次系配管(湿分分離加熱器空気抜き管)に穴があき蒸気が漏れる事故が発生しました。大飯2号では11月にも2次系配管(主給水配管曲がり部)で大幅な減肉が確認されたばかりでした。12月12日には、2次系配管の管理は万全だとして定期検査を終了し、原子炉を起動したはずではなかったのでしょうか。

 貴職は11月30日の県議会で、関西電力がプルサーマル再開準備の意向を示していることに関連して、関電の原発で頻発しているトラブルを懸念し、「トラブルの減少とその対策」を含む4項目を徹底する必要を表明されました。美浜3号機事故で県民5名が亡くなるという悲惨な事故を繰り返してはならないという貴職の職責から表明されたものと察します。
 しかし、貴職のこの表明以降も、事故やトラブルは減少するどころか続発し、12月だけで6件にも達しています。関電の原発での事故やトラブルは、昨年度と比べても、今年度は既に倍以上になっています。

・12月4日 高浜2号 第24回定検中 B−蒸気発生器入口管台溶接部でひび割れ確認
・  5日 美浜1号 原子炉手動停止 タービン建屋、湿分分離トレンタンク水面計取出しフランジ付近から蒸気漏れ
・  6日 美浜1号 手動停止中 希ガスの異常放出と警報発信
・  7日 高浜2号 第24回定検中 C−蒸気発生器入口管台溶接部で2箇所のひび割れ確認
・  13日 大飯2号 原子炉起動後の炉物理試験中 「1次冷却材温度低下」警報発信
・  15日 大飯2号 原子炉手動停止 調整運転中に2次系配管穴があき蒸気漏れ

 この現実は、関電の安全軽視の体質が、美浜3号機事故後もなんら変わっていないことを示しています。
 関電にプルサーマル再開を口にする資格などありません。そのことは、以下に示すように、12月12日に私たちが行った関西電力との交渉でもはっきりと現れました。
・11月に確認された大飯2号の配管減肉については、一言も反省の言葉がありませんでした。7年間も国の技術基準を割り込んだ違法な運転を続けていたことを自ら認めておきながらもこのような姿勢です。
・この配管の減肉でも減肉率が加速していることが判明しています。減肉率は初回測定時の約8倍(0.1o/年→0.8o/年)にもなっています。にもかかわらず関電は、2次系配管の管理に「減肉率の加速」を考慮に入れていません。
・美浜2号や高浜2号では、蒸気発生器入口管台の深刻なひび割れが次々に見つかっています。同様にインコネル600製の蒸気発生管台をもつ原発については、すぐに止めて点検するのではなく、次回定検まで「漏えい監視」を行うとしています。その場合、「初めに小さな漏れが起こるので大事故には至らない」と言います。しかし「漏えい監視」とは、漏えいを容認するものです。それも美浜3号機事故で破綻した事故時のLBB思想を、通常の配管管理の方法に適用するこの手法は、非常に危険なものです。

 貴職は8年前のプルサーマル事前了を撤回していません。事前了解は、美浜3号機事故直後でさえも形式的には有効でした。しかし関電は美浜3号機事故を引き起こしたことによってプルサーマル再開の中断を余儀なくされました。それは貴職を含め県民や広範な市民の怒りと不安があったからです。
 そしていま関電は、美浜3号機が運転を再開し、プルサーマルの事前了解が形式的に有効だというだけで、プルサーマルを再開しようとしています。しかし実質的には、美浜3号機事故後も、関電の安全軽視の体質は変わっていません。大飯1号の減肉が確認されてすぐに美浜3号も点検しておれば、あの大事故を防げたはずです。2004年夏のこの重要な警告は、いま大飯2号の減肉など異常なまでに頻発する関電の事故やトラブルとなって、改めて大事故を警告しているのではないでしょうか。

 貴職が、プルサーマル再開どころではないという姿勢を明確にする以外に県民や周辺住民のいのちと安全を守ることはできません。プルサーマル事前了解は形骸化しています。
 関電の原発で事故やトラブルがあまりにも頻発しているという現実を重視して、プルサーマル事前了解を撤回されることを強く要望します。


2007年12月19日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
  京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
  大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(07/12/19UP)