4月23日、グリーン・アクションと共同で福井県に要望書を提出
「使用済MOX燃料を無期限に発電所で保管することは県として認められない」

   

 4月23日、グリーン・アクションと当会は、「関西電力のプルサーマル計画から生じる使用済MOX燃料などに関する福井県への要望書」を福井県に提出した。
 使用済MOX燃料の処理の問題について、私たちは3月11日に関電と交渉を行った。これについて関電は、「2010年頃から検討が開始される第2再処理工場で再処理される予定であり、それまでの間、原発プールで貯蔵管理する」としか答えず、国の計画が遅れた場合の具体的な計画を説明するよう要求しても具体的な回答はなかった。結局、使用済みMOX燃料が運び出される目途は現時点では皆無であり、永久的に原発プールに置かれることを前提として、プルサーマルが実施されようとしていることが明らかになった。
 そこで今回は、地元福井県に対し、このような状況では、福井県が核のゴミ捨て場になってしまうため、プルサーマル計画を中止するよう関電に要請して欲しいという要望書を提出した。

 京都・大阪から6名がこの提出行動に参加し、地元福井からも3名が同席された。対応したのは、原子力安全対策課の櫻本課長。事前に提出していた質問書(4月11日付)への口頭回答があり、1時間ほどの交渉となった。

 櫻本課長は、使用済MOX燃料の処理について、10年以上前の1998年当時の事前了解などに関する資料を示しながら、「2010年頃に方針決定される第二再処理工場に搬出されるまで、原発プールで保管する」と関電から聞いていると説明した。約10年間、関電からはそれ以上の説明はないということである。また、使用済みMOX燃料や通常の使用済燃料の原発プールでの保管期間については、具体的に何年間という取り決めはないが、「福井県としては発電所での貯蔵を無期限に認めるものではない」と明確に述べた。さらに、使用済MOX燃料の行方については、原発が立地・計画されている14道県で構成される「原子力発電関係団体協議会」で、「使用済MOX燃料が発電所に長期間貯蔵され続けないよう、処理体系を早期に決定すること」を国に要望していることが紹介された。この内容はほぼ毎年要望しており、直近では、昨年11月14日付の要望書でも書かれているとのことだった。このことは、やはり使用済MOX燃料が立地自治体にとって共通の懸念材料であることを示していることを櫻本課長も認めた。

 次に、1999年に前知事が国に出してした「使用済MOX燃料の処理方針を具体的に明らかにすること」という要請書については、当時の与謝野通産大臣から「適切に保管し処理する」というだけの回答を得ているとのことだった。また、この前知事が前提にしていたのは1994年に策定された長期計画であり、そこでは第二再処理工場については「2010年頃に方針決定される」となっている。しかし、2005年の原子力政策大綱では使用済MOXの処理については「2010年頃から検討を開始する」となっており、国の計画は大幅に後退している。これについて櫻本課長は、「2006年の『原子力立国計画』では、基本的なシナリオは決まっている・・、予備的検討が2007年4月から開始されている・・」と国の方針を語った。しかし、「原子力立国計画」では、2007年に六ヶ所再処理工場が本格稼働し、「もんじゅ」も運転再開されていることを前提として計画が立てられているが、現実はそうなっていないと指摘すると、「現状は遅れており、問題が生じている」と述べ、現状では、使用済MOX燃料の処理の方策は「具体化されていない」と認めた。国のシナリオが完全に破綻している現実そのものを前にして、ジレンマを隠すことはできなかった。

 そんな状況で、なぜプルサーマルだけ急いで実施する必要があるのか。地元からの参加者は、「第二再処理工場ができるできないにかかわらず、使用済MOX燃料がずっと保管されるのではないかと不安がある、プルサーマルが始まってしまう前に、使用済MOXの搬出期限が決まらなければプルサーマルは認められないというべきだ」と迫った。また小浜の会の参加者は、県民の命や不安とひきかえに60億円のプルサーマル交付金にすがる県の姿勢を厳しく批判した。京都から初めて参加した若い人は、「六ヶ所再処理工場から大量の放射能が放出されている。これ以上第二再処理工場など建ててはいけないし、絶対に建てさせない。若い世代にリスクだけを残すことはやめるべきだ」と発言した。負担を未来に押し付けないでほしいという彼の主張に、課長は少し目を見開いて聞いていた。他の初参加者も、「やっぱり使用済MOXの行き場は決まっていない、それなのにプルサーマルを実施するとは」と率直に不安を述べた。

 また、関電向けのMOX燃料を製造しているメロックス工場で国際的な原子力事故尺度であるINESでレベル2の事故が起こっていることについて、関電のMOX製造に関係ないサンプル室での事故だと関電から聞いていると回答した。資料の公開を要望した私たちに対し、それは関電が判断することであり、「県としてはこれまで以上にオープンな姿勢が必要だと考えている」と回答した。

 苦しげな表情を浮かべながらも櫻本課長の答えは、国のシナリオがあるからと繰り返していた。終了後に参加者は、櫻本課長のネームプレートにある「私たちは県民の安全安心を第一に取り組みます」という文言と、破綻している国のシナリオにすがりついている姿のギャップが印象的だったと語った。


(09/04/24UP)