高浜4号機MOX燃料データ不正問題に関する

通産大臣への抗議文


                          1999年12月24日
           グリーン・アクション
           美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

 関西電力は12月16日に、BNFL社が製作した高浜4号機用MOX燃料8体分をすべて放棄することを決定したが、その理由として、
(1)「NII(英国原子力施設検査局)が、・・・、P824の他P783についても統計的にみて疑義があるとBNFLに指摘していること」を確認したこと。
(2)「BNFLが調査中のところ、新たにP814について、他のロットのデータを入れ替えて流用している」との連絡を受けたこと、
を挙げている。

 この問題に関して我々は、以下の点で貴職に対し強く抗議する。
1.NII書簡を隠し通したこと
 関西電力の挙げた上記理由(1)の事実については、すでに11月8日付けのNIIからの書簡によって基本的に示唆されていた。そこには、「統計分析に基づく検査局の見解では」として「データの一部が捏造されており、さらに別の一部のデータも疑わしい」と書かれている。
 ところが貴職は1ヶ月以上も前にこの事実を知っていながら、その詳細、そこに書かれている真の意味を調査しようとしなかった。12月10日の参議院経済産業委員会における清水澄子議員の質問に対しても、この資料の存在を徹底して否定し、結局12月15日まで隠し通した。こうして疑惑のMOX燃料の装荷を強行しようとした。
 これは人々を意図的に危険にさらそうとする行為である。貴職はまず、このことの責任を明らかにするべきである。

2.関西電力の虚偽の報告を鵜呑みにして直ちに妥当としたこと
 通産省は、関西電力が11月1日付けで提出した最終報告について、何も独自の検証を行わないまま、翌日には早くも福井県議会に出向いて「最終報告は妥当である」との説明を行った。いまは、最終報告は虚偽の報告であったことがはっきりしており、従って、通産省の判断も誤っていたことが明白になった。関西電力を指導すべき立場にありながらこのような誤った判断を行い、それを福井県議会を初め各方面に伝えたことについて、貴職は責任を明確にするべきである。

3.市民団体の要望を無視し、統計調査の実行を拒否したこと
 我々2つの市民団体は、MOX燃料データを詳細に統計的に分析し、それに基づいて通産省の担当官に対し、このような統計的分析を行って不正がないかどうかを検証すべきであると要望したが、その担当官は頭からそれを拒否した。NIIでは統計的分析によって不正が暴かれていることからすれば、この担当官の責任は明らかであり、同時に貴職の監督責任が問われるべきである。
 我々は、10月21日に貴職に対して要望書を提出し、その付属説明資料の中で、MOX燃料データの統計的分析に基づいて不正疑惑を具体的に指摘した。同じ説明資料を10月20日に関西電力にも提出したところ、関西電力は11月1日最終報告を公表した際に、我々2団体宛の「回答」を報道機関に公表し、それを通産省にも非公式ながら届けている。この問題で我々は11月10日に通産省の原子力発電安全管理課の坂内課長補佐・技術班長に出会って説明を聞いた。この席は、辻一彦衆議院議員が設けたものであり、その説明の場には竹村泰子参議院議員も同席した。我々の要望書及び担当官の説明の事実については、貴職も前記経済産業委員会で認めている。
 このとき坂内課長補佐は次のような、かなりお互いに矛盾する説明を行った(くわしくは録音テープとテープ起こし資料がある)。
@データ流用の疑いのあるP824については、関西電力の調査結果によって不正がないと判断できるし、それを独自に検証するつもりはない。
ABNFLの検査官には、データ流用以外の不正を行う動機がない。
B抜取検査に関するペレット外径上、中、下のデータはもっていない。
C政府としては仕様内に入っていればよい。全数検査が信頼できるので大丈夫。
D高浜3号では抜取検査での不正によって燃料を作り替えるが、それは業者間の 問題だ。
E通産省が燃料について関与するのは輸入燃料体検査だ。
F不正を働く動機がないので、検定理論を適用して調べる必要はない。
 要するに関西電力の調査結果を鵜呑みにするだけで、独自の調査をするつもりはないし、その必要もないという説明である。
 ところがNII調査では、前記のP783について、抜取検査の上、中、下の外径データの構造を統計的に調べて、高浜3号とは異なる種類の不正を発見している。これと比較すれば、通産省担当官の姿勢がいかに誤ったものであったかは具体的に明らかである。しかもこの11月10日には、この担当官は11月8日付けNII書簡をすでに知っていたと考えられる。もし知っていなかったとすれば、それ自体が職務怠慢である。このような担当官は厳しくその責任が問われるべきである。

4.全数検査で安全性は保証されると述べたこと
 貴職は、新たな不正が判明した後のコメントにおいて、「ペレットの全数自動測定データは存在するので、安全性は確保できていると考えられる」と述べている。いまだにこのような誤った判断を強調することに対して、以下の理由から強く抗議し、この発言の撤回を要求する。
@この種の判断はNII書簡にも書かれているが、品質保証検査は商業契約の問 題で、それについてNIIは基本的に関知しないと表明していることに留意す るべきである。
A通産省資源エネルギー庁が9月27日付けで原子力安全委員会に提出した説明 資料の中に、全数検査は工程管理検査であって、抜取検査が品質保証検査であ ると明確に書かれている。 
B関西電力の11月1日付け最終報告の中に、次のようにはっきりと書かれてい る。「MOX燃料ペレットの外径研削は、臨界管理等の観点より、国内PWRの ウラン燃料ペレットの湿式研削と異なり、乾式で行われることから外径調整が 難しいため、全数自動測定を行い、外径仕様外のペレットを除外し、この工程 で歩留まりを向上させるために実施している。抜取検査は、検査データを採取 するために行われているものであり、全数自動測定と抜取検査の目的は異なる ものである」。この内容は前記資源エネルギー庁の資料内容をより具体的に説 明しており、全数検査は工程で歩留まりを上げるために行っているもので、抜 取検査こそが品質保証を目的としているとはっきり述べている。通産省はこの 内容を含む最終報告を「妥当である」と判断し、それを福井県議会などで説明 したはずではなかったのか。貴職は、「妥当である」と判断したはずの抜取検 査の意義を自ら否定している。このような便宜主義で安全性をもて遊ぶのは断 じてやめるべきである。
C全数検査では、上、中、下の外径のうちひとつでも仕様外があればそのペレッ トは除外されることになっている。抜取検査では、全数検査を通ったペレット だけから200ペレットを抜き取ることになっている。そうすると、抜取検査 で測定された外径値はすべて仕様内だけになると思われるかも知れないが、実 際にはそうはなっていない。高浜4号用のペレットについて、測定値が仕様外 になっている場合がしばしばあるし、それどころか、仕様外が6個以上現れた ために一旦は不合格になったロットが7ロットも実際に存在している。この事 実は、抜取検査が独自の意義をもつことを如実に示しているのである。
DP824ロットについて全数検査を合格したデータを調べたらすべて仕様内で あったので、それで全数検査の能力が保証されており、ひいては一般に全数検 査でペレットの品質保証がなされるのだという主張がある。しかしもともと、 全数検査では仕様外をすべて除外することになっているのだから、合格品に仕 様外がないのは当然のことで、この事実は、全数検査が想定どおりに働いたこ とを示しているにすぎない。他方、前記Cのように抜取検査でなお仕様外が現 れるということは、自動全数検査の限界を示している。抜取検査では検査員が 測定すべきペレット外径の位置決めをするのであるが、全数検査では測定位置 が常に一定になっている。全数検査の限界は恐らくこの方法の限界から来てい るものと考えられる。
E200個の抜取検査で、1ロット当たり6個以上の仕様外が現れた場合、その ロットは不合格になるという前記Cの事実は、JIS規格に基づくものである。 関西電力の平成10年5月11日付け高浜原発設置変更許可申請書の中に、燃 料の安全性を保証する規格・基準の中にJIS規格が明記されている。全数検査 はJIS規格とは何の関係もなく、抜取検査こそがJIS規格で規定されてい る唯一の品質保証なのである。全数検査でよしとする論は、このような安全性 の依って立つ重要な基盤を自ら掘り崩すものである。

 貴職と通産省は、東海村JCO事故で尊い人命が失われてもなお、その教訓を真摯に学ぼうとしていない。まず、自らが犯した前記すべての誤りを認め、その誤りの原因を分析し明らかにするべきである。関西電力の調査結果を鵜呑みにした罪を認め、関西電力に対しても誤りを認め糺すよう指導するべきである。すべてについて、貴職自身の責任を明らかにするべきである。


連絡先
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