原告団の声明(12月17日)



 関西電力は、裁判所の決定を直前にした12月16日、高浜4号機燃料集合体8体の装荷を断念すると発表した。燃料の偽造が明らかになったためである。この燃料の使用禁止命令を申し立ててきた我々原告団は、これで完全に目的を達成し、勝利を勝ち取った。

 この過程で我々は9月から、燃料ペレット外径に関する膨大なデータの分析、裁判での証拠提出、イギリスでの調査活動などに多くの努力を傾注してきた。我々の決意と努力は多くの共感と協力を呼び起こし、ついては国会での清水澄子議員の追及によって、NIIからの11月8日付け書簡を公表せざるを得ないように通産省は追い込まれた。この書簡によって、高浜4号での燃料データの偽造が確定的になったのである。

 今回のデータ偽造の確認によって、高浜4号用燃料には不正がないとした11月1日付け最終報告書の調査結果は虚偽の報告となった。この最終報告書を直ちに妥当とし、11月2日の福井県議会でも説明した資源エネルギー庁と原子力安全委員会の責任が厳しく問われるべきである。

 通産省資源エネルギー庁は、このNII書簡を11月8日頃に入手していたにもかかわらず、それをずっと隠し通してきた。高浜4号機用燃料には複数の不正があることを知っていたにもかかわらず、いや知っていたからこそ、「全数検査で安全性は保証される」という線を打ち出し、それによって強引に燃料の装荷を押し進めようとした。しかしこの線は、関電の最終報告書の趣旨に明らかに矛盾しており、それを「妥当である」とした自らの判断を否定するものであった。
 このような事実の隠蔽と虚偽の説明によって世間一般をだましてきた担当者の責任、及び通産大臣の監督責任が厳しく問われるべきである。このような虚偽を見逃して、「安全」と表明した原子力安全委員会にも同様の責任が問われるべきである。

 関西電力は裁判の過程で、やはり基本的にこの通産省の線に沿った主張を展開した。高浜4号データに不正のないことの証明を最初からあきらめ、「全数検査論」に切り替えたが、これは自らの最終報告書のみならず、安全性に関する基本的立場を放棄するものであった。これでは裁判に勝てる訳がない。そのために、裁判所の決定が出る直前に、「原告側訴えの利益」の喪失をねらって、自ら装荷を断念する決定をしたものと思われる。

 福井県当局はやはり、全数検査で安全性は確保できるとの立場を表明していた。しかしこれは、関電の最終報告書が妥当であるという説明を受けてきた範囲から明らかに逸脱している。まず、政府に対し11月2日県議会での説明との食い違いについて釈明を求めるべきであった。それをせずに、また住民・市民の声を無視して、安易に政府の変節を受け入れたことについて、強い疑問をもたざるを得ない。
 
 今回関電は、明らかに不正に関係している高浜4号の燃料集合体4体だけでなく、8体全部の使用を中止することを決定した。理由は、「契約上の信頼が損なわれた」ためであると伝えられている。同じ理由は当然高浜3号機用燃料にも適用されるべきであり、いまある燃料の4体分だけでなく、全体が放棄されるべきである。

 危険なプルトニウムを含むMOX燃料は、これほどまでに呪われている。そもそもペレット製造の研削工程において、ウラン燃料と違って、湿式研削をできないことが大きな制約になっている。プルトニウムのために、湿式にすると臨界事故を引き起こす恐れがあるからだと最終報告に書かれている。
 この際、このやっかいで危険なMOX燃料を使うこと自体を断念するべきである。

 この問題の経過において、「MOX燃料の安全性」は多くの虚偽の上に成り立っていることが明らかになった。安全管理への信頼自体が、東海村事故に続いて再び大きく損なわれた。これでは、プルサーマルの安全性自体も信頼できるにはほど遠いものとなったのである。

関西電力は、ただちに高浜原発プルサーマル計画を中止すべきである。さらにBNFLに送ってきた使用済み燃料の再処理をすべてただちに中止すべきである。
 政府はこの際、プルサーマル計画自体を根本的に見直し、計画を中止すべきである。
 
            1999年12月17日
                高浜4号MOX燃料使用差止仮処分裁判原告団

       原告団事務局
        グリーン・アクション TEL075-701-7223 FAX075-702-1952
        美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
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